
変電設備は、発電所から送られてくる高圧の電気を受け取り、実際に使用できる電圧に変換するための設備全般を指します。発電所から送られる電気は50万ボルトもの高圧であり、これを100Vや200Vの低圧に変換する重要な役割を担っているのです。
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一方、キュービクルは「キュービクル式高圧受電設備」と呼ばれ、受変電設備の一種として位置づけられます。JIS C4620:2018に規定されており、高圧の受電設備として使用する機器一式を一つの金属製の箱に収めたものと定義されています。
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つまり、変電設備という大きな枠組みの中に、キュービクルという形態が存在するという関係性になります。すべての変電設備がキュービクル式というわけではなく、開放型(オープン式)や屋外露出形など、複数の形態が存在するのが特徴です。
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変電設備を構成する主要な機器には、区分開閉器、断路器、負荷開閉器、遮断器、変圧器、保護継電器、制御装置、計測機器、配線用遮断器などがあります。これらの機器は需要家構内の電気室などに設置されるか、キュービクルと呼ばれる金属製の箱の中に収納して設置されます。
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特に重要なのが変圧器で、高圧を低圧に降圧する中心的な役割を担っています。油入変圧器とモールド変圧器などいくつか種類があり、使用環境に応じて選択されます。
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遮断器は過電流時に確実に受電側から電気を切り離す機能を持ち、VCB(真空遮断器)が多く採用されています。断路器は活線状態からの開放は厳禁で、あくまで保安点検時の停電状態で点検する回路を切り離すためのものです。
高圧進相コンデンサと直列リアクトルは力率改善を目的として設置され、電力の効率的な使用を実現します。低圧配電盤は変圧器で低圧化した電気を分岐するために設置される重要な機器です。
変電設備は大きく「開放型受変電設備(オープン式)」と「閉鎖型受電設備(キュービクル式)」の2種類に分類されます。開放型はフレームに各種の変電装置が取り付けられており、装置や電線部分を直接確認できるため保守・メンテナンスがしやすい特徴があります。
参考)受変電設備とは?開放形と閉鎖形
一方で開放型は装置や電線がむき出しの状態になっているため、耐久性が弱く、天候といった外部要因によって故障が発生しやすいデメリットがあります。広いスペースが必要で、雨やほこりに弱いという特性から、主に大規模施設や屋外で採用されます。
閉鎖型(キュービクル式)は、金属製の大きな設備の中に変電装置と電線が収容されており、コンパクトで安全性が高いのが特徴です。狭い場所に機器がまとめられているためメンテナンスがしにくいという側面はありますが、防塵・防水性があり環境影響への耐性が高いです。
項目 | 開放型(オープン式) | 閉鎖型(キュービクル式) |
---|---|---|
設置スペース | 広いスペースが必要 | コンパクト |
安全性 | 低い(露出しているため) | 高い(密閉構造) |
環境影響への耐性 | 雨やほこりに弱い | 高い(防塵、防水性あり) |
点検・保守 | 容易 | 難しい(内部構造が複雑) |
設置コスト | 一般的に低い | 高い場合がある |
キュービクルは電気事業法において「自家用電気工作物」のひとつに分類されており、電気事業法や電気設備技術基準に基づいた設置が求められます。主に50kW以上の大きな電力容量が必要な施設(商業施設、工場、大型マンション等)で使用されます。
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JISの適用範囲として、公称電圧6.6kV、周波数50または60Hz、系統短絡容量12.5kA以下、受電容量4000kVA(契約電力で3200kW)以下とされています。この範囲内であればキュービクル式の採用が可能です。
屋外にキュービクルを設置する場合、一般的に建物から3m以上の距離を確保する必要があります。屋外設置の場合は十分なスペースのある場所を選定し、東京都など地域によっては独自の基準が設けられているため、事前確認が重要です。
参考)キュービクルの設置基準を知ろう!具体的な法的要件や安全基準
建物の屋上や駐車場の隅などに設置されることが多く、比較的狭い場所にも設置可能なため、建物内のスペース設計において柔軟性があります。ただし大型のキュービクルになると10個前後の箱が並ぶこともあるため、電気室を設けるなど設置場所の検討が必要です。
参考)キュービクルとは?導入のメリットや注意点を紹介 - Tech…
変電設備の法定耐用年数は固定資産としての減価償却期間に基づき、一般的に15年〜17年程度と定められています。しかし実際の実用耐用年数は機器の種類によって大きく異なるため、各機器の特性を理解することが重要です。
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変圧器の実用耐用年数は約20年とされていますが、コンデンサや避雷器は15年程度で変圧器よりも早く更新時期を迎えます。高圧交流負荷開閉器は屋内用で15年または負荷電流開閉回数200回、屋外用で10年または負荷電流開閉回数200回が更新推奨時期です。
参考)受変電設備の耐用年数はどのくらい? 更新の重要性と更新時期の…
保護継電器や計器用変成器の更新推奨時期は15年、高圧配電用変圧器は20年となっており、機器ごとに適切な更新計画を立てる必要があります。断路器は手動操作で20年または操作回数1000回、動力操作で20年または操作回数10000回が目安です。
参考)電気設備の更新推奨時期のお知らせについて
💡 実務のポイント
高圧受電設備の機器更新は、通常の環境のもとで通常の保守点検を行いながら使用した場合に、各機器の構成材の老朽化などにより新品と交換した方が経済性を含めて一般的に有利と考えられる時期を示しています。環境保護(ISO14000)などの社会的要求により前倒しされるケースも増えています。
キュービクルなど自家用電気工作物には保守点検が義務付けられており、電気事業法によって定められています。法定点検を怠った場合には罰則が設けられているため、確実な実施が求められます。
参考)キュービクルの保安点検をおこなう必要とは?法律による義務化と…
定期点検は月1回実施する月次点検と、年1回実施する年次点検に分かれます。一定条件を満たした場合は月次点検を2ヵ月に1度とすることも可能ですが、基本的には毎月の点検が必要です。
参考)キュービクルは保安点検が義務!点検内容や法律、費用などを解説…
月次点検では目視点検、漏えい電流測定、電圧・負荷電流測定、ブレーカー温度測定などを実施します。年次点検ではより詳細な絶縁抵抗測定、接地抵抗測定、保護継電器設備点検、停電状態での電気設備点検などを行います。
⚠️ 過去のトラブル事例
受変電設備の故障や事故は甚大な損害をもたらします。地下電気室内の天井から漏水した水滴が受電用断路器にかかり地絡し、保護範囲外であったため波及事故に至った事例や、保護継電器の動作不良による受電遮断器遮断などの事例が報告されています。
参考)https://www.kobelco-em.jp/product/pdfdata/pdf/juhenden.pdf
九州電気保安協会 - 電気設備の更新推奨時期
各機器の更新推奨時期について詳しい情報が記載されており、実務における更新計画の参考になります。
キュービクルの保安点検の詳細
月次点検と年次点検の具体的な内容や法律による義務について詳しく解説されています。