ファストン端子規格:建築電気工事の基本知識

ファストン端子規格:建築電気工事の基本知識

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ファストン端子規格とは

ファストン端子規格の基本構成
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サイズ分類

タブ幅により110、187、250、375シリーズに分類

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材料仕様

黄銅・りん青銅製でスズめっき処理が標準

電流容量

サイズに応じて最大24Aまで対応可能

ファストン端子規格の基本定義と分類システム

ファストン端子は、平形接続子として日本工業規格(JIS C 2809)および国際規格(IEC 60760)で統一的に規格化されている電気接続部品です。この規格は、メールタブ(オス端子)の公称幅と厚さによって明確に分類されており、建築電気工事において信頼性の高い接続を実現します。
規格における基本分類は以下の通りです。

  • 110シリーズ: 2.8mm×0.5mm / 2.8mm×0.8mm
  • 187シリーズ: 4.8mm×0.5mm / 4.8mm×0.8mm
  • 250シリーズ: 6.3mm×0.8mm
  • 375シリーズ: 9.5mm×1.2mm

これらの数値は、1インチ(25.4mm)に対する比率で決められており、例えば110シリーズは25.4×0.110=2.794mmとなります。この統一された規格により、異なるメーカー間でも互換性が保たれています。

ファストン端子規格のサイズ詳細と電流容量

各シリーズのサイズ詳細と電流容量は、建築電気工事における適切な端子選択の重要な指標となります。

 

110シリーズの特徴

  • タブ幅: 2.79mm
  • 適用電線: AWG22-18(0.3-1.5mm²)
  • 最大電流: 約7A
  • 主な用途: 制御回路、信号線

187シリーズの特徴

  • タブ幅: 4.8mm
  • 適用電線: AWG20-16(0.5-1.25mm²)
  • 最大電流: 約13A
  • 主な用途: スピーカー回路、中容量機器

250シリーズの特徴

  • タブ幅: 6.35mm
  • 適用電線: AWG16-14(1.25-2.0mm²)
  • 最大電流: 約19A
  • 主な用途: 電源回路、大電流機器

375シリーズの特徴

  • タブ幅: 9.5mm
  • 適用電線: AWG14-10(2.0-6.0mm²)
  • 最大電流: 約24A
  • 主な用途: 高電流機器、主幹回路

建築現場では特に250シリーズが多用され、コンセント回路や照明回路での接続に重宝されています。

 

ファストン端子規格における材料と表面処理の技術仕様

ファストン端子の材料選択と表面処理は、長期間の信頼性を確保する上で極めて重要な要素です。

 

基本材料の構成
主材料として黄銅(真鍮)とりん青銅が使用されており、それぞれ異なる特性を持ちます:

  • 黄銅: 優れた導電性と加工性、コスト効率に優れる
  • りん青銅: 高い弾性力と耐久性、長期使用に適している
  • ニッケル鋼: 高温環境(最大250°C)での使用に対応

表面処理の種類と効果
表面処理により耐食性と導電性が大幅に向上します。

  • スズめっき: 標準仕様、優れた耐食性と溶接性
  • 銀めっき: 最高の導電性、高周波用途に最適
  • ニッケルめっき: 耐熱性向上、産業用途向け
  • 金めっき: 最高級の耐食性、精密機器用

建築電気工事では、コスト効率と性能のバランスから、スズめっき黄銅製が最も一般的に採用されています。この組み合わせにより、UL規格やVDE規格などの国際安全基準をクリアした信頼性の高い接続が実現されます。

 

ファストン端子規格の絶縁タイプと安全性機能

建築電気工事における安全性確保のため、ファストン端子には様々な絶縁仕様が設けられています。

 

絶縁タイプの分類

  • 非絶縁タイプ: 露出部分が多く、配電盤内部などの保護された環境で使用
  • 部分絶縁タイプ: 接続部のみ絶縁、一般的な電気工事で多用
  • 完全絶縁タイプ: 全体が絶縁材で覆われ、最高レベルの安全性を提供

絶縁材料の特性
使用される絶縁材料には以下があります。

  • ビニール絶縁: 一般用途、UL94 V-2規格適合
  • ナイロン絶縁: 高強度、UL94 V-0規格適合
  • 高耐熱絶縁: 最大110°C対応、産業用途向け

安全性機能の実装
Ultra-Fast シリーズなどの高機能品では、以下の安全機能が実装されています:

  • 低挿入力(LIF)設計: 作業効率向上と誤挿入防止
  • ポジティブロック機構: 確実な固定による接触不良防止
  • 600V耐圧仕様: 高電圧回路での安全な使用を実現

これらの機能により、建築電気工事における作業安全性と完成後の信頼性が大幅に向上します。

 

ファストン端子規格と建築現場での独自適用事例

建築電気工事の現場では、標準規格を超えた独自の適用方法や工夫が数多く見られます。

 

配電盤内での色分け管理システム
多くの建築現場では、回路識別のためにファストン端子の絶縁カバー色を活用した独自の管理システムを構築しています。

  • 赤色: 電源供給回路(L1、L2、L3)
  • 黒色: 制御回路、モーター回路
  • 青色: 中性線(N)接続専用
  • 緑色: 接地線(E)接続専用

連鎖型接続による工期短縮技術
大規模建築現場では、連鎖型ファストン端子を活用した独自の配線技術が発達しています。この手法により、従来の個別配線と比較して約30%の工期短縮が可能になります。

 

環境対応型端子の選択基準
近年の建築現場では、RoHS指令対応や環境負荷軽減を考慮した端子選択が重要になっています。特に以下の観点から独自の選択基準を設けている現場が増加しています:

  • 鉛フリーはんだ対応: 環境規制への適合
  • リサイクル可能材料: 解体時の廃棄物削減
  • 長寿命設計: メンテナンス頻度の最小化

スマートビル対応の高周波対策
IoT機器の普及に伴い、高周波ノイズ対策を施したファストン端子の需要が増加しています。銀めっき処理や特殊合金を使用した端子により、通信品質の向上を図る事例が注目されています。

 

これらの独自適用により、建築電気工事の品質向上と効率化が同時に実現されており、今後の標準化にも影響を与える可能性があります。

 

建築電気工事におけるファストン端子の技術解説資料
https://www.te.com/content/dam/te-com/documents/about-te/marketing/jpn/faston-posivite-lok.pdf
JIS規格に準拠したタブ端子の詳細仕様について
https://www.kyoshin-k.co.jp/products/daien.html