
1液型塗料は、その名の通り1つの缶に塗料と硬化剤があらかじめ混合されている塗料です。開缶後、希釈剤(水または溶剤)を加えて撹拌するだけで使用できるため、取り扱いが簡単という大きな特徴があります。
1液型塗料の主な特徴は以下の通りです。
1液型塗料は、かつては2液型に比べて性能が劣るとされていましたが、近年の技術革新により性能が大幅に向上しています。特に日本ペイントのパーフェクトトップなどは、下塗りにサビ止めを使用すれば金属部にも問題なく塗装できるようになりました。
塗膜形成の仕組みとしては、1液型塗料は樹脂同士がくっついたり絡まったりして塗膜を形成します。このため、溶剤が蒸発して乾燥することで塗膜が形成される仕組みとなっています。
2液型塗料は、主剤(A液)と硬化剤(B液)が別々の缶に入っており、使用する直前に両者を混合して使用する塗料です。この混合によって化学反応が起こり、強固な塗膜を形成するのが特徴です。
2液型塗料の主な特徴は以下の通りです。
2液型塗料の最大の特徴は、主剤と硬化剤が架橋という化学反応を起こし、3次元の網目のような塗膜を形成することです。この化学反応によって生まれる塗膜は非常に強固で、高い耐久性を持ちます。
混合比率は塗料によって異なりますが、正確な配合比率を守ることが重要です。配合比率が正確でないと、塗膜の性能が十分に発揮されない可能性があります。また、混合後は化学反応が始まるため、一定時間内(通常は数時間以内)に使い切る必要があります。
2液型塗料は特に金属部分や特殊な素材への塗装に適しており、ALCパネルやスレート板などにも使用できます。
外壁塗装を検討する際、1液型と2液型それぞれのメリットとデメリットを理解することが重要です。以下に両者を比較した表を示します。
項目 | 1液型 | 2液型 |
---|---|---|
価格 | 比較的安価 | 比較的高価 |
耐久性 | 2液型より2〜3年短い | 1液型より2〜3年長い |
作業性 | 混合不要で簡単 | 混合作業が必要 |
保存性 | 開封後の保存期間が短い | 混合前なら長期保存可能 |
使い切り | 余った塗料は翌日も使用可能 | 混合後は当日中に使い切る必要あり |
適用範囲 | 一部の素材に限定 | 多様な素材に対応可能 |
1液型のメリット。
1液型のデメリット。
2液型のメリット。
2液型のデメリット。
耐久性の観点では、同じグレードの塗料であれば2液型の方が1液型より2〜3年程度長持ちする傾向にあります。ただし、近年の技術革新により1液型の性能も向上しており、その差は以前ほど大きくなくなってきています。
外壁塗装に使用される塗料は、樹脂の種類によっても分類されます。主な塗料の種類とその特徴を理解することで、より適切な塗料選びができます。
主な塗料の種類と特徴
塗料の種類 | 耐用年数 | 価格 | 特徴 |
---|---|---|---|
アクリル塗料 | 3〜5年 | 安価 | 光沢があるが耐久性が低い |
ウレタン塗料 | 5〜7年 | やや安価 | 伸びが良く、独特の光沢がある |
シリコン塗料 | 7〜10年 | 中程度 | 価格と耐久性のバランスが良い |
フッ素塗料 | 15〜20年 | 高価 | 優れた耐候性と耐久性を持つ |
無機塗料 | 15〜20年 | 非常に高価 | 最高レベルの耐久性を持つ |
外壁材との相性
外壁材によって相性の良い塗料の性質が異なります。以下は外壁材別の相性の良い塗料の特徴です。
塗料選びのポイントとしては、建物の立地環境や予算、期待する耐用年数などを総合的に考慮することが重要です。例えば、海岸沿いなど塩害の影響を受ける環境では、耐候性の高いフッ素塗料や無機塗料が適しています。
また、最近では遮熱性や断熱性、防カビ・防藻性能など、様々な機能を持った塗料も開発されています。生活環境や住まいの状況に合わせて、これらの機能性も選択基準に入れると良いでしょう。
外壁塗装の1液型と2液型に関しては、古い情報がそのまま広まり、誤解を招いているケースが少なくありません。ここでは、よくある誤解と最新の技術動向について解説します。
よくある誤解
かつては2液型の方が性能面で優れていましたが、現在では塗料メーカーの研究開発により1液型の性能も大幅に向上しています。単純に「2液型の方が良い」とは言えなくなっています。
1液型は下地への密着性が2液型より劣るため、金属部には適さないと言われることがありますが、これは全ての1液型に当てはまるわけではありません。サビ止め塗料を下塗りとして使用すれば、多くの1液型塗料は金属部にも問題なく塗装できます。
耐候性(紫外線や雨風による劣化のしにくさ)については、同じグレードの塗料であれば1液型と2液型で大きな差はないというのが最新の見解です。塗膜の強度(耐熱性や耐溶剤性)には差がありますが、一般的な住宅の外壁塗装においてはそれほど問題になることはありません。
最新の技術動向
メーカー各社の研究開発により、1液型塗料の性能は格段に向上しています。特に日本ペイントやエスケー化研などの1液型塗料は、以前の2液型に匹敵する性能を持つようになっています。
最新の1液型塗料の多くは「ラジカル制御技術」を採用しています。ラジカルとは塗料の顔料が紫外線などと反応し、樹脂の結合を破壊する現象ですが、これを制御することで塗膜の耐久性を大幅に向上させています。
VOC(揮発性有機化合物)の排出量が少ない水性塗料や弱溶剤塗料の開発が進んでいます。これらは臭いが少なく、環境にも優しいという特徴があります。
一部の1液弱溶剤塗料では、従来2液型の特徴だった架橋構造を実現しているものもあります。これにより、1液型でありながら高い耐久性を持つ塗料が登場しています。
塗料選びにおいては、古い情報や一般論に惑わされず、最新の技術動向を踏まえた上で、建物の状態や環境、予算などを総合的に考慮することが重要です。また、信頼できる塗装業者に相談し、適切なアドバイスを受けることも大切です。
外壁塗装において1液型と2液型のどちらを選ぶべきか、また実際の施工における重要なポイントについて解説します。
選び方のポイント
施工時のポイント
実際の選択例