グリコール グリセリン 違いと建築用途における選び方

グリコール グリセリン 違いと建築用途における選び方

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グリコールとグリセリンの違い

グリコールとグリセリンの基本的な相違点
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分子構造の違い

グリコールは2価アルコール、グリセリンは3価アルコールで構成される

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物理的特性

両者とも無色透明で粘性があるが、ヒドロキシ基の数により性質が異なる

安全性と毒性

グリセリンは無毒、エチレングリコールは毒性がある点で大きく異なる

グリコールとグリセリンは建築現場でよく耳にする化学物質ですが、その違いを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。両者は見た目が似ており、甘味を持つ透明な液体という共通点がありますが、化学的な構造と性質には明確な違いが存在します。
参考)グリコールとグリセリンの違いは?

グリコールとは、1つの分子の中に2つのヒドロキシ基(-OH)を持つ2価アルコールの総称です。別名ジオールとも呼ばれ、エチレングリコールやプロピレングリコールなどが代表的な種類です。一方、グリセリン(グリセロール)は化学式C3H8O3で表される特定の物質であり、3つのヒドロキシ基を持つ3価アルコールです。
参考)グリコールとは?効果や安全性、天然由来のグリコールについても…

最も重要な違いは「グリコールは複数の化合物の総称」であるのに対し、「グリセリンは単一の物質を指す」という点です。この基本的な違いを理解することが、建築用途における適切な材料選択の第一歩となります。
参考)プロピレングリコールとグリセリンの違いとは?分かりやすく解説…

グリコールの化学構造と種類

グリコールは分子内に2個のヒドロキシ基を持つ二価アルコールの総称で、構造式はR-(OH)2と表されます。代表的なグリコールには、エチレングリコール(化学式C2H6O2、分子量62.07)とプロピレングリコール(化学式C3H8O2、分子量約76.1)があります。
参考)エチレングリコール - Wikipedia

エチレングリコールは炭素2個にヒドロキシ基が2個結合した構造を持ち、不凍液として広く使用されています。プロピレングリコールは炭素3個にヒドロキシ基が2個の構造で、不斉炭素を含むためエナンチオマー(鏡像異性体)として存在します。
参考)エチレングリコールとグリセリンの違いを教えてください。目的の…

グリコール類は一般のアルコールと比較して、分子量の割に融点や粘度が高いという特徴があります。これはヒドロキシ基を介した水素結合が多く、分子間力が強いことに起因しています。また、ヒドロキシ基が多い分だけ水溶性が増す傾向があり、水と完全に混和します。
参考)グリコール - Wikipedia

グリセリンの化学構造と特性

グリセリンは化学式C3H8O3、分子量92g/molで表される物質で、IUPAC名ではプロパン-1,2,3-トリオールと命名されます。構造は炭素3個に対してそれぞれ1個ずつヒドロキシ基が結合した3価アルコールです。
参考)グリセリン(構造式・化学式・油脂との関係など)

無色透明で粘性が高く、甘味を持つシロップ状の液体であり、融点は約17.8℃です。グリセリンは強い吸湿性と保湿性を持ち、水やエタノールによく溶ける性質があります。
参考)保湿性・吸湿性

グリセリンには天然由来のものと合成されたものがあります。天然グリセリンは植物や動物由来のトリグリセリド(油脂)として存在し、合成グリセリンはプロピレンを加工して得られます。建築分野では、バイオディーゼル生産の副産物として大量に生成されるグリセリンの活用も注目されています。
参考)https://www.tetras.uitec.jeed.go.jp/files/data/201002/20100205/20100205.pdf

グリコールとグリセリンの毒性と安全性の違い

建築用途における最も重要な違いの一つが、毒性と安全性です。グリセリンは無毒な化合物であり、食品添加物としても使用される安全性の高い物質です。食品分野では溶剤や甘味料として、また保存料としても使用されています。
参考)グリセリンとは?多様な使い方について

一方、エチレングリコールには毒性があり、大量に摂取すると人体に有害です。皮膚や目に長時間接触すると怪我をする可能性もあります。そのため、廃液を河川や下水に直接流すことはできず、適切な排水処理が必要です。
参考)冷却塔の不凍液とは?冷却塔の凍結防止と不凍液の役割について解…

プロピレングリコールはエチレングリコールと比較して毒性が極めて低く、食品の防腐剤としても使用される安全なグリコールです。食品添加物ベースの安全性があるため、生活空間に近いセントラル暖房配管や床暖房配管に適しています。特に飲料工場や食品工場などでは、食品添加物公定書に記載されている物質で構成される不凍液の使用が推奨されます。
参考)プロピレングリコールについて

グリコールとグリセリンの建築分野における用途

建築分野において、グリコールは主に不凍液として利用されます。エチレングリコールは水に混ぜることで凝固点を下げる働きがあり、ロードヒーティングや冷却設備の循環液として使用されます。配管が長く大量に不凍液を必要とし、生活空間から離れた場所での使用に適しています。
参考)エチレングリコールについて

プロピレングリコールは若干高価ですが、粘度が高く毒性が極めて低いため、配管が短く生活空間に近いセントラル暖房配管や床暖房配管に適しています。床暖房の不凍液は、主成分がエチレングリコールとプロピレングリコールの2種類に分かれています。
参考)不凍液/床暖房なるほど! 用語集:床暖房で快適.com

グリセリンは建築分野では主にコンクリート混和材として活用されます。石膏とグリセリンの混合粉砕物を含む高強度セメント混和材として、初期強度の増進効果が得られます。グリセリン含有量が石膏とグリセリンの合計100質量部中0.1〜10質量部の範囲で使用されます。
参考)https://patents.google.com/patent/WO2014112487A1/ja

また、グリセリンはBDF(バイオディーゼル燃料)の副生成物として生成され、離型剤としてモルタル型枠に塗布する用途も研究されています。グリセリン濃度を調整することで、市販の水性離型剤と遜色ない離型性能が得られることが確認されています。​

グリコールとグリセリン選択時の独自視点

建築事業者がグリコールとグリセリンを選択する際、環境負荷と経済性のバランスを考慮することが重要です。バイオディーゼル生産時に約10%の副産物として生成されるグリセリンは、廃棄物から価値ある製品への転換が可能な素材です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8182736/

粗製グリセリンには塩、遊離脂肪酸、メタノールなどが含まれるため、食品や医薬品産業では使用できませんが、建築材料への応用は環境面でも経済面でも優れた選択肢となります。特にスターチベースのバインダーにグリセリンを可塑剤として添加することで、麻の殻を含むエコフレンドリーな建築複合材料の製造が可能です。
参考)https://www.mdpi.com/2673-6918/2/3/18/pdf?version=1663321984

不凍液の選択においては、年2回程度の定期点検と濃度管理が必要であり、変色や濁り、臭気、沈殿物のチェックが重要です。濃度が濃くなり過ぎると機器内の循環が悪くなり機能低下につながるため、濃度計を使用した適切な測定が求められます。また、メーカーによって種類が異なるため、他の不凍液を混ぜると故障の原因となることにも注意が必要です。​
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