異形鉄筋の種類と特徴や施工方法の違い

異形鉄筋の種類と特徴や施工方法の違い

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異形鉄筋の種類と特徴

異形鉄筋の基本情報
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構造的役割

鉄筋コンクリート構造において引張力を担い、コンクリートと一体となって建物の強度を確保します

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特徴的な形状

表面にリブや節と呼ばれる凹凸があり、コンクリートとの付着性を高めています

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種類の多様性

SD295からSD785Rまで、強度や用途に応じて10種類の規格が存在します

異形鉄筋の基本的な特徴とリブの役割

異形鉄筋は、鉄筋コンクリート構造において欠かせない建材です。その最大の特徴は表面に設けられた「リブ」または「節」と呼ばれる凹凸の突起にあります。この特殊な形状により、コンクリートとの付着性能が格段に向上し、構造物の強度を大幅に高めることができます。

 

リブの存在により、異形鉄筋は以下のような利点を持っています:

  • コンクリートとの接触面積が増加し、すべりが生じにくくなる
  • 断面積をあまり増やさずに表面積を拡大できる
  • 付着に必要な長さや太さを短くできるため、効率的な設計が可能

英語では「Steel De-formed bar」と表現され、日本産業規格(JIS)では「SD○○」という材料記号で規定されています。この「SD」は「Steel De-formed bar」の略称であり、後に続く数字は鉄筋の降伏点または耐力を示しています。

 

異形鉄筋が登場する以前は丸鋼が主流でしたが、コンクリートとの付着性能の高さから、現在の建築現場ではほとんどが異形鉄筋に置き換わっています。

 

異形鉄筋の種類とSD記号の意味

異形鉄筋にはさまざまな種類があり、それぞれJIS規格によって定められています。現在、日本で使用されている異形鉄筋は以下の10種類です:

  • SD295A
  • SD345
  • SD390
  • SD490
  • SD590A
  • SD590B
  • SD685A
  • SD685B
  • SD685R
  • SD785R

これらの記号の「SD」は「Steel De-formed bar(異形鉄筋)」を意味し、続く数字は降伏点または耐力(N/mm²)を表しています。例えば、SD345は降伏点が345N/mm²の異形鉄筋を意味します。

 

一般的な建築現場で最も広く使用されているのは、SD295とSD345です。これらは汎用性が高く、一般住宅から中規模建築物まで幅広く採用されています。

 

より大規模な建築物や特殊な構造物には、SD390やSD490などの高強度鉄筋が使用されることがあります。特にSD490は一般建築ではあまり使用されず、大規模な建造物や橋梁などの限定的な場面で採用されることが多いです。

 

さらに高強度のSD590A/B、SD685A/B/R、SD785Rは、超高層ビルや特殊な構造物に限定して使用される特殊な鉄筋です。これらは通常の建築現場ではほとんど見かけることがありません。

 

異形鉄筋と丸鋼の違いと施工方法の比較

異形鉄筋と丸鋼は、外観だけでなく性能や施工方法にも大きな違いがあります。

 

【外観と構造の違い】

  • 異形鉄筋:表面にリブや節と呼ばれる凹凸がある
  • 丸鋼:表面が滑らかで凹凸がない

【コンクリートとの付着性】

  • 異形鉄筋:リブによりコンクリートとの付着性が高い
  • 丸鋼:表面が滑らかなため付着性が低く、すべりやすい

【施工方法の違い】
建築基準法施行令第73条では、鉄筋の末端処理について以下のように規定しています:
「鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、コンクリートから抜け出ないように定着しなければならない。ただし、次の各号に掲げる部分以外の部分に使用する異形鉄筋にあっては、その末端を折り曲げないことができる。」
つまり、丸鋼を使用する場合は必ず末端をフック状に折り曲げる必要がありますが、異形鉄筋では特定の部位(柱やはりの出隅部分、煙突部など)を除いて、末端を折り曲げなくても良いとされています。

 

この違いにより、異形鉄筋を使用した場合の施工は以下のメリットがあります:

  • フック加工が基本的に不要で施工の手間が減る
  • 鉄筋の配置が容易になり、作業効率が向上する
  • 柱や壁などの断面を小さくできる可能性がある

歴史的には、日本では昭和28年(1953年)に異形鉄筋の規格が制定され、昭和30年代から徐々に普及していきました。それ以前の建築物には丸鋼が使用されていることが多く、古い建物の耐震診断や改修時には注意が必要です。

 

異形鉄筋の強度による用途と選定基準

異形鉄筋は強度によって用途が異なります。適切な鉄筋を選定することで、建築物の安全性と経済性を両立させることができます。

 

【SD295】

  • 降伏点:295N/mm²
  • 主な用途:一般住宅、小規模建築物
  • 特徴:比較的安価で、加工性に優れている

【SD345】

  • 降伏点:345N/mm²
  • 主な用途:中規模建築物、一般的な鉄筋コンクリート構造
  • 特徴:最も広く流通している汎用性の高い鉄筋

【SD390】

  • 降伏点:390N/mm²
  • 主な用途:中〜大規模建築物
  • 特徴:強度と靭性に優れ、SD345より細い鉄筋で同等の強度を得られる

【SD490】

  • 降伏点:490N/mm²
  • 主な用途:大規模建築物、橋梁、特殊構造物
  • 特徴:高強度で、鉄筋量を減らせる可能性がある

【SD590A/B、SD685A/B/R、SD785R】

  • 降伏点:590〜785N/mm²
  • 主な用途:超高層ビル、特殊な構造物
  • 特徴:超高強度で、特殊な設計条件下で使用される

鉄筋の選定基準としては、以下の要素を考慮する必要があります:

  1. 建築物の規模と用途
  2. 設計荷重と必要強度
  3. 経済性(材料費と施工性のバランス)
  4. 地域の地震リスク
  5. 建築基準法や関連法規の要求事項

特に耐震設計においては、鉄筋の降伏点だけでなく、靭性(粘り強さ)も重要な要素となります。高強度の鉄筋は降伏点が高い反面、靭性が低下する傾向があるため、地震多発地域では注意が必要です。

 

異形鉄筋の防錆処理と外壁塗装との関連性

外壁塗装業に従事する方々にとって、建物の構造体である鉄筋の状態を理解することは非常に重要です。特に、異形鉄筋の防錆処理と外壁の劣化には密接な関連があります。

 

鉄筋コンクリート構造物において、鉄筋の腐食は深刻な問題を引き起こします。腐食した鉄筋は膨張し、コンクリートにひび割れを生じさせ、最終的には外壁の剥離や崩落につながる可能性があります。

 

異形鉄筋の防錆処理には主に以下の方法があります:

  1. 溶融亜鉛メッキ処理
    • 鉄筋表面に亜鉛層を形成し、長期間の防錆効果を発揮
    • 塩害地域や湿度の高い環境に適している
  2. エポキシ樹脂コーティング
    • 鉄筋表面を樹脂でコーティングし、水や酸素との接触を防ぐ
    • 化学工場など腐食性の高い環境に適している
  3. ステンレス鉄筋の使用
    • 腐食に強いステンレス製の異形鉄筋を使用
    • コスト高だが、特に厳しい環境条件下で効果的

外壁塗装業者として知っておくべき点は、外壁のひび割れや浮きが見られる場合、その原因が単なる塗膜の劣化だけでなく、内部の鉄筋腐食に起因している可能性があるということです。特に以下のような症状が見られる場合は注意が必要です:

  • 茶色や赤褐色の染みを伴うひび割れ(錆汁)
  • 格子状に規則的に現れるひび割れ(鉄筋の配置に沿ったもの)
  • コンクリートの浮きや剥離

外壁塗装工事の際には、これらの症状が見られる場合、単に表面を塗り替えるだけでなく、構造的な調査や補修が必要かどうかを専門家に相談することをお客様に提案することが重要です。

 

また、新築時の鉄筋の種類や防錆処理の状態を把握しておくことで、将来的な外壁メンテナンスの計画立案にも役立ちます。例えば、海岸近くの建物では塩害による鉄筋腐食のリスクが高いため、より頻繁な点検や特殊な塗料の使用を検討する必要があります。

 

外壁塗装業者として、建物の構造体に関する知識を持つことは、単なる美観の改善だけでなく、建物の長寿命化と安全性確保に貢献する重要な要素となります。

 

鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食と外壁劣化の関連性に関する研究
鉄筋コンクリート構造物における鉄筋腐食のメカニズムと外壁劣化の関連性について詳しく解説されています。

 

異形鉄筋の施工における注意点と品質管理

異形鉄筋を用いた鉄筋コンクリート工事では、適切な施工と品質管理が建物の耐久性と安全性を左右します。以下に、施工における重要な注意点と品質管理のポイントをまとめます。

 

【配筋間隔と被り厚さ】
異形鉄筋の配筋間隔と被り厚さは、建築基準法や日本建築学会の基準に従って適切に確保する必要があります。一般的な被り厚さの基準は以下の通りです:

  • 屋内の柱・梁:30mm以上
  • 屋外の柱・梁:40mm以上
  • 基礎・地中梁:60mm以上

被り厚さが不足すると、鉄筋の腐食リスクが高まるだけでなく、火災時の耐火性能も低下します。

 

【鉄筋の継手と定着】
異形鉄筋の継手方法には、重ね継手、機械式継手、溶接継手などがあります。それぞれの特徴は以下の通りです:

  • 重ね継手:最も一般的な方法で、鉄筋を一定長さ重ねて結束線で固定
  • 機械式継手:カプラーなどの専用金具を用いて鉄筋を接合
  • 溶接継手:鉄筋同士を溶接で接合(特殊な技術が必要)

継手の位置は応力の小さい箇所に設け、同一断面に集中させないことが重要です。

 

【鉄筋の加工と曲げ加工】
異形鉄筋の曲げ加工には以下の注意点があります:

  • 適切な曲げ半径を確保する(一般的に鉄筋径の2.5倍以上)
  • 低温時(5℃以下)の曲げ加工は避ける
  • 一度曲げた鉄筋を再度曲げ直すことは避ける

不適切な曲げ加工は鉄筋の強度低下や破断の原因となります。

 

【鉄筋の錆と汚れの管理】
施工現場での鉄筋の保管と取り扱いには以下の点に注意します:

  • 地面に直接置かず、台の上に保管する
  • 雨水がかからないよう適切にシートなどで覆う
  • 過度の錆や油、泥などの汚れはコンクリートとの付着を阻害するため除去する

ただし、軽微な錆(赤錆)はコンクリートとの付着を高める効果があるとされており、必ずしも問題ではありません。

 

【検査と品質確認】
鉄筋工事の品質確保のために、以下の検査を実施します:

  1. 材料検査:使用する鉄筋の種類、径、数量の確認
  2. 配筋検査:配筋間隔、被り厚さ、定着長さの確認
  3. 継手検査:継手位置、長さ、加工状態の確認
  4. 最終検査:コンクリート打設前の総合的な確認

特に重要な構造部材では、第三者機関による配筋検査を実施することも一般的です。

 

品質管理においては、鉄筋工事写真の撮影と記録保存も重要な要素となります。将来的なメンテナンスや改修時の参考資料となるだけでなく、トラブル発生時の証拠資料としても役立ちます。

 

鉄筋コンクリート構造物の配筋施工マニュアル
鉄筋コンクリート構造物における適切な配筋施工方法と品質管理のポイントについて詳細に解説されています。