
溶接継手寸法表は、配管工事における継手選定の基準となる重要な資料です。基本的な構成として、継手の種類別に外径(OD)、内径(ID)、厚さ(T)、中心から端面までの距離などの寸法が詳細に規定されています。
寸法表の見方では、まず径の呼び(A)とインチ表記(B)の対応関係を理解することが重要です。例えば、20Aは3/4インチに相当し、外径27.2mm、内径21.6mm(FSGP)となります。
許容差についても重要な要素で、径の呼び15~65mmでは端部外径の許容差が+1.6/-0.8mmと規定されています。これらの許容差は品質管理と施工精度の確保に直結するため、必ず確認が必要です。
寸法表には角度許容差も含まれており、90°エルボでは±1°、45°エルボでは±2.5°の許容差が設定されています。継手の組み合わせ時の精度確保には、これらの角度許容差の理解が不可欠です。
日本の溶接継手規格は主にJIS(日本産業規格)によって定められており、用途に応じて複数の規格が存在します。
主要なJIS規格一覧 📋
国際規格としてはASME(米国機械学会)規格も重要で、ASME B16.9-2012が広く使用されています。JIS規格とASME規格では寸法許容差に違いがあり、例えば1/2~2-1/2インチサイズでASMEでは±0.7mmの許容差となっています。
規格選定時の注意点として、使用する鋼管の種類と継手規格の適合性確認が必要です。SGP管にはFSGP継手、STPY400管にはPY400継手といった対応関係があります。
圧力容器に使用する場合は、JIS B 8265「圧力容器-一般事項」による溶接継手効率の規定も考慮する必要があります。
溶接継手には突合せ溶接式(BW)と差込み溶接式(SW)の2つの基本形式があり、それぞれ異なる寸法表構成となっています。
突合せ溶接式継手の特徴 🔗
突合せ溶接式は継手端部と管端部を突き合わせて溶接する方式で、高圧配管に適用されます。主要な寸法項目として、エルボでは中心から端面までの距離(F)、ティーでは中心から中心までの距離(C、M)が重要です。
20Aの90°エルボロングでは、F寸法が38.1mmと規定されています。ティーの場合、20×20×20では C寸法28.6mm、M寸法28.6mmとなります。
差込み溶接式継手の特徴 🔧
差込み溶接式は継手内部に管を差し込んで溶接する方式で、主に小口径・低圧配管に使用されます。寸法項目では、差込み深さ(L)、外径(O)、継手長さ(A)が重要な要素です。
Sch-80の20A差込み溶接式90°エルボでは、O寸法が33.1mm、L寸法が39mmと規定されています。差込み溶接式では、径違いの場合は大径側の寸法を基準とする特殊な規定があります。
レジューサについては、同心タイプと偏心タイプで寸法構成が異なり、端面から端面までの距離(H)が重要な寸法となります。
溶接継手の材料記号は、接続する鋼管の種類に対応して決定され、適切な組み合わせが配管システムの安全性を左右します。
主要材料記号の分類 ⚙️
ステンレス系では、SUS304TP、SUS316TP、SUS347TP等の材料記号が使用され、それぞれ対応する継手材料が規定されています。特殊用途として、SUS836L、SUS890L等の高合金ステンレス鋼用継手も存在します。
材料選定時の重要な考慮事項として、使用温度範囲があります。FSGP継手は一般用途、PY400継手は高温用途(400℃程度まで)に適用されます。
適用範囲の確認では、接続する鋼管の規格と継手材料の適合性を必ず検証する必要があります。不適合な組み合わせは、溶接性の問題や強度不足を引き起こす可能性があります。
溶接継手の品質管理において、寸法許容差の管理は配管システム全体の性能に直結する重要な要素です。
寸法許容差の詳細基準 📐
径の呼び15~65mmの範囲では、端部外径(OD)の許容差が+1.6/-0.8mmと規定されています。より大口径になると許容差も拡大し、125~200mmでは+2.4/-1.6mm、250~450mmでは+4.0/-3.2mmとなります。
角度許容差では、エルボのオフアングルが30°以下、ティーのオフアングルが18°以下と厳格に管理されています。これらの角度精度は、配管ルートの設計通りの施工を確保するために不可欠です。
エンドプレパレーション(開先加工)の管理 🔧
継手端部の開先形状も重要な品質要素で、ルート面の高さが1.6±0.8mm(厚さ22.4mm以下)と規定されています。開先角度は32.5°±2.5°が標準的な形状です。
品質管理の実務では、入荷検査時の寸法測定、溶接前の開先状態確認、溶接後の外観検査が重要なチェックポイントとなります。特に高圧配管では、放射線透過試験(RT)による内部欠陥検査も必要です。
継手の溶接継手効率は、JIS B 8265により継手の種類と検査方法によって決定され、完全溶込み突合せ両面溶接継手では効率1.00となります。
不動産開発における配管工事では、これらの品質基準を満たした継手選定と施工管理が、建物の安全性と耐久性確保の基盤となります。