

ジンクめっき補修塗料の効きは、塗る前にほぼ決まります。ジンクリッチペイント系は「鉄面あるいは亜鉛めっき面に直接塗ることで防錆効果を発揮」するため、一般さび止め塗料・旧塗膜・赤さび・溶接で生じた酸化物を残したままだと密着性と防食性の両方が崩れます。
現場で見落としやすいのが、油脂と塩分です。仕様書でも、塩分(海塩粒子・融雪剤など)は高圧水洗等で除去すること、油は溶剤で拭き取ることが明記され、素地調整後は「2時間以内に塗装」まで求めています。
白さび(亜鉛の腐食生成物)は、脆弱で塗膜の付着性を著しく低下させます。亜鉛めっき上塗装の技術資料では、白さびがある場合はワイヤーブラシやサンドペーパー、電動工具などで除去し、めっき皮膜を削りすぎない注意まで示されています。
意外な落とし穴として、めっき後の保管・養生の仕方が白さびを増やします。通風が悪い覆いっぱなしや、濡れた状態の重ね置きは白さびを招き、補修工程が一気に重くなるため、屋外保管なら「雨天はシート、晴天は外して乾燥」のように水分を逃がす運用が現場的に効きます。
ジンクめっき補修塗料でよく使われるのが、ジンクリッチペイント(亜鉛末を多量に含む塗料)です。溶融亜鉛めっき協会の資料でも、ジンクリッチペイントは補修剤として利用される一方、塗装である以上「下地処理と塗装条件の管理を行わないと密着性に問題」を生じる、と釘を刺しています。
「常温亜鉛めっき」などの言い回しで、溶融亜鉛めっきと同等だと誤解されがちですが、協会資料は“めっき”と“塗装”は基本的に全く異なり、使い分けが重要と整理しています。
有機系は現場施工性が高く、補修・タッチアップに使いやすい反面、吐出量・距離・速度などの条件ブレで膜厚が乱れ、性能差が出やすい領域です。
迷ったときは、「どこまでを補修塗料単体で守るか」「上塗りで景観・耐候を作るか」を先に決め、補修塗料=犠牲防食、上塗り=バリア/耐候、の役割分担で仕様を組むと納得感のある説明になります。
膜厚管理は、ジンクめっき補修塗料の「効いた/効かない」を分ける最大の数値要因です。例えばジンクリッチペイント塗装仕様書では、製品ごとに推奨膜厚(例:80μm、50μmなど)と、刷毛は2回塗り推奨・エアゾールは複数回が必要、といった回数設計が具体的に示されています。
さらに同仕様書は、素地調整後2時間以内の塗装、施工環境として気温5℃以下や湿度85%以上、結露、降雨・降雪、強風・塵埃、鋼材温度60℃以上を避ける、という「やってはいけない条件」を明文化しています。
乾燥・塗り重ねは、指触乾燥だけで突っ込むと層間トラブルが出ます。仕様書には硬化乾燥の判断(指で強く押して凹みが付かない、擦ってもすり跡が付かない等)や、上塗りは常温で24時間以上空ける目安、低温時は施工回避といった現場判断の基準が書かれています。
意外な実務ポイントとして、エアゾールの詰まり対策は品質にも直結します。高亜鉛塗料は沈殿しやすく、振とう不足や空吹き不足があると吐出が乱れ、結果として「膜厚が足りない帯」ができるため、逆さ吹き(空吹き)を含めた取り扱いの徹底が必要です。
補修後に上塗り(仕上げ)を重ねる場合、適合する下塗り/上塗りの考え方を押さえると説明が強くなります。亜鉛めっき上の塗装に関する技術資料では、めっき面の塗装は「表面素地調整が重要」で、プライマーとの適合性が重要だと明記され、近年は亜鉛めっき面用のエポキシ樹脂系プライマー指定が多い、と整理されています。
同資料は、エポキシ樹脂塗料は耐薬品性・耐食性・密着性などに優れる一方、硬化で内部応力が出やすいこと、だからこそ亜鉛めっき面用として内部応力を緩和する工夫がされた下塗が用いられる、という背景まで説明しています。
補修塗装の現場では「赤さびが混入する前」に手を入れるほど、工程が軽くなり寿命に効きます。資料でも、厳しい環境で赤さび混入が起きた場合は仕様を格上げする考え方や、赤さび混入前なら亜鉛めっき用エポキシ下塗を用いた系の適用、といった実務寄りの示唆があります。
独自視点として、上塗りを「色合わせ」だけで終わらせず、点検性まで設計すると補修が速くなります。例えば、設備周りや落雪・融雪剤リスクがある箇所は、あえて少し色味を変えて補修帯を視認しやすくし、次回点検で“どこを触ったか”が一目で分かるようにすると、再補修の調査コストを下げられます(景観要求がある場所は発注者協議が前提)。
補修塗料の施工・前処理の基準(塩分除去、素地調整、膜厚、施工条件)がまとまっている。
ジンクリッチペイント塗装仕様書(前処理・膜厚・施工条件)
亜鉛めっき上塗装で密着不良を起こす要因(白さび、結露、スィープブラスト、プライマー適合)が体系的に説明されている。
溶融亜鉛めっき上の塗装(白さび・素地調整・プライマー)
溶融亜鉛めっきとジンクリッチペイント(補修塗料)の違いと、誤解しやすいポイントが整理されている。
溶融亜鉛めっきと有機系ジンクリッチペイントの違いについて