

間知石は素材によって自然石間知石と人工間知石(間知ブロック)に大別されます。自然石間知石は花崗岩、安山岩、砂岩などの天然石材を加工したもので、耐久性に優れ独特の風合いがあるため、景観を重視する場所に適しています。花崗岩は吸水率0.1~0.5%程度と低く、安山岩は0.5~7.0%程度、砂岩は2.0~9.0%程度と石種により吸水性が異なります。
参考)https://liftco.co.jp/magazine/kentiisi/
人工間知石はコンクリートで人工的に製造されたもので、規格が統一されているため施工しやすく、コストも比較的抑えられる利点があります。コンクリート製品はJIS A 5371に規定されており、品質が安定しているため大規模工事でよく使用されます。近年では環境に配慮し、リサイクル素材を利用した間知石も開発され、環境負荷の少ない工事での需要が増えています。
参考)https://sencon.jp/product/youheki/pdf/%E9%96%93%E7%9F%A5%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF.pdf
自然石は地域の産地特性や石材の性質によって形状が異なり、この違いが地域ごとの石積み構造物の景観的特性を生み出しています。例えば男鹿石(安山岩)は吸水率0.7%と低く、白河石(安山岩)は7.0%、芦野石(安山岩)は5.0%と産地により性質が大きく異なります。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/stone-structure/s-1.pdf
間知石の規格はJIS A 5003で定められており、控え長と表面積により分類されます。主な規格として35間知(控え長35cm以上、表面積620cm²以上)、45間知(控え長45cm以上、表面積900cm²以上)、50間知(控え長50cm以上、表面積1,220cm²以上)、60間知(控え長60cm以上、表面積1,600cm²以上)があります。
参考)https://www.eng-book.com/pdfs/cab775c8bb5358f6252e33954ad3c5e1.pdf
標準間知石は面サイズが縦330mm内外×横280mm内外、控え350mm以上で、石積み時の仕上げ寸法は縦300mm内外×横250mm内外となり、1㎡あたり約13個使用します。並尺間知石は面サイズが縦330mm内外×横330mm内外、控え350mm以上で、石積み時の仕上げ寸法は縦300mm内外×横300mm内外となり、1㎥あたり約11個使用します。
参考)https://kanpu-oga.jp/pages/24/
小規模な石垣や庭園用途では比較的小さいサイズ(高さ15~30cm、幅20~40cm、奥行き30~40cm)の間知石が使用され、取り扱いやすさと美観のバランスが重視されます。大規模な擁壁や河川工事では大きいサイズが用いられ、土圧や水圧に対する強度と安定性が求められます。現場での作業効率や施工性もサイズ選択において重要で、適切なサイズを選ぶことで施工期間の短縮やコスト削減につながります。
間知石の表面仕上げには複数の方法があり、景観や用途に応じて選択されます。ノミ切仕上げは割肌面をノミを用いて荒く平坦に加工する方法で、大のみ切り、中のみ切り、小のみ切りに分けられます。表面が平らにノミ加工されたノミ切仕上げの間知石は、昔の蔵の土台石や城、神社仏閣の石積みなどに使われ、伝統的な風格を持ちます。
参考)https://mbp-japan.com/hyogo/morita/column/5104273/
割肌仕上げは石を自然に割ったままの表面を活かす方法で、自然な風合いが特徴です。全面割肌仕上げの間知石は基本型が約280×420×350mm、天端・根石が約280×395×350mm、角石が約300×400×280mmなどの規格があり、重量は基本型で約44kg/個です。
参考)https://matsumoto-group.co.jp/kaikansekizai-kentiisi.html
ビシャン仕上げは機械挽きした表面またはノミ切りした表面を、突起の付いた槌(ビシャン)でコツコツと叩いて加工する方法です。槌の突起数により4枚、5枚、8枚、100枚ビシャンなどがあり、一般には8枚ビシャンが使用されます。面取りの有無や彫りの深さによっても外観が変わり、遠くから見ても石の積み方がはっきり見える仕上げや、内側に彫りがありより明確に石の形が分かる仕上げなど、多様な選択肢があります。
参考)https://ishisenmonten.com/sekisyukannrenkiji/marble/kuremamafiru/%E5%A4%A7%E7%90%86%E7%9F%B3%E3%81%B8%E5%8A%A0%E5%B7%A5%EF%BC%81%E3%83%93%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E4%BB%95%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%A8%E3%83%8E%E3%83%9F%E5%88%87%E3%82%8A%E4%BB%95%E4%B8%8A%E3%81%92/
間知石の積み方には布積(ぬのづみ)、矢羽積(やばねづみ)、亀甲積(きっこうづみ)があります。布積は水平方向に長辺を並べる方法で、高さが同じ石を水平に並べ、上に積み上げる石は境界線がかぶらないよう少しずらして積み上げます。境界線があみだくじのような形状になり、見た目はきれいですが構造上の強度は比較的弱く、墓の外壁部分などによく使用されます。
参考)https://boseki-info.jp/words/kenchi.html
矢羽積は矢羽型の間知石を斜めに積む方法で、視覚的に動きのある仕上がりとなります。亀甲積は六角形の間知石を剣先が水平になるように積む方法で、独特の幾何学的パターンを形成します。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%93%E7%9F%A5%E7%9F%B3
間知石の背後の控え部分には割石などを詰めて土圧の分散を図り、排水処理として適宜パイプを配します。目地にモルタルを充填する場合は練積(ねりづみ)、充填しない場合は空積(からづみ)と呼ばれます。日本の高度成長期以前は熟練の石工が多数存在し空積が多用されましたが、空積でも控え部分の割石の加減次第で練積並の強固さを実現でき、半世紀以上経っても現存するものが多くあります。
間知石と間知ブロックの主な違いは素材と製造方法にあります。間知石は天然の花崗岩や安山岩などの自然石を四角錐形に加工したもので、石積み工法により手作業で積み上げられます。見た目が自然で風格があり、施工には熟練した技術が必要で、主に石垣、護岸、擁壁などに使用されます。
参考)https://mocco-doboku.com/2025/02/15/kenchiishi/
間知ブロックはコンクリートで成型された製品で、規格が統一されており施工が比較的容易です。基本的な間知ブロックは横450mm×縦300mm×厚さ350mmで、1㎡あたり7.4個使用されます。コスト面では間知ブロックの方が経済的で、工期も短縮できます。
参考)https://www.sekishu.com/blog/kennti/159441
選び方のポイントとして、景観を重視する歴史的建造物周辺や神社仏閣では自然石間知石が適しており、一般的な宅地造成や道路工事ではコスト効率の良い間知ブロックが選ばれます。設置場所の土圧や水圧、擁壁の高さも選定基準となり、大規模工事では強度計算に基づき適切な規格を選択する必要があります。
参考)https://tue.oumiitimonji.com/apps/note/grave/the-face-of-a-gravestone-types-and-selection-of-kenchi-ishi/
不動産取引では既存の間知石擁壁の健全度判定も重要で、練石積み造擁壁として分類され、目視点検や劣化状況の確認が必要です。
参考)https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001474700.pdf
<参考リンク>
国土交通省による石積み構造物の整備に関する資料では、石材の産地特性や吸水率など技術的な詳細が解説されています。
石積み構造物の整備に関する資料(国土交通省)
JIS規格による石材の詳細な寸法規定を確認できます。