
省エネ法に基づくエアコンの寸法規定とは、室内機の横幅寸法800mm以下かつ高さ295mm以下の機種を指す基準でした。この規定の根拠は、日本の標準的な木造住宅をモデルとしており、旧尺貫法による柱間のモジュール寸法910mmから柱の寸法106.75mmとエアコンと柱の最小間隔5mmを差し引いた約800mmが横幅の基準となっています。高さについては、建築基準法施行令第21条の居室の天井高さ、標準的な窓の高さ、エアコンと天井の最小間隔を考慮し、2100mm-1800mm-5mm=295mmと定められました。
参考)https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2022/379/doc/20220916_shiryou2-6.pdf
2010年度の基準設定当時は寸法フリータイプの機種が市場の8割を占めていましたが、寸法規定と寸法フリーの区分に目標基準値の差を設けたことで、目標基準値の低い寸法規定区分の製品開発が主体になりました。この状況を踏まえ、2022年5月のエアコン告示改正において、新基準では寸法による区分を廃止し、13区分から10区分へと再編されました。現在では「寸法規定(室内機の横幅寸法800mm以下かつ高さ295mm以下)」と「寸法フリー」による省エネ基準の区分がなくなり、今後は様々な寸法の製品が出てくる可能性があります。
参考)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/pdf/aircon_shoene_label_221001.pdf
エアコン室内機の設置高さは、各メーカー共通で床面から1.8〜2.3mが推奨されています。一般住宅の標準的な室内天井高さは建築基準法で2.1m以上と定められていますが、実際には2.4mが標準的で、昨今では2.5m以上を確保した住宅も増えています。1.8mよりも低い位置に設置すると、風が体に直接当たって不快になるほか、部屋全体に風が循環せず非効率的になります。
参考)https://www.sunrefre.jp/aircon/contents/location/
室内機周辺のクリアランスについては、天井・壁それぞれから5cm以上離して取り付けることが必須です。天井・壁から近い位置に設置すると、空気の取り込みがうまくいかず冷暖房効率が下がります。設置場所として窓の上や横が一般的ですが、窓の横に設置する場合は扉の開閉に支障が出ないか確認が必要です。高さに余裕がない場所には、高さ250mm前後のコンパクトサイズを用意しているメーカーもあります。
参考)図解でわかる理想的なエアコンの取り付け位置・高さ!効率的な運…
一般的な家庭用エアコンの室外機サイズは、横幅約780〜900mm、奥行き約290〜370mm、高さ約540〜720mmが標準です。より具体的には、奥行240〜300mm、横幅700〜800mm、高さ550〜600mmが一般的な寸法となっています。主要メーカー別では、ダイキンが795×300×595mm(6畳用)、三菱が800×285×538mm(6畳用)、パナソニックが780×289×539mm(6畳用)、日立が750×288×570mm(6畳用)という代表的なサイズがあります。
参考)室外機のサイズ基礎知識と設置寸法比較|畳数別やメーカー別に最…
室外機の設置スペースは、本体寸法に加えて周囲に余裕を持つことが重要です。具体的には、奥行の前方が200mm以上、奥行の後方が50mm以上、左右の幅が各100mm以上、高さが50mm以上(置台も含む)のスペースが必要です。つまり、設置スペースとしては奥行490〜550mm、横幅900〜1000mm、高さ600〜650mm(プラブロックなどの置き台を含めると700〜750mm)を確保する必要があります。狭い場所や集合住宅では、前面や側面に十分な間隔を確保しないと冷暖房効率が落ちたり、騒音や振動のトラブルにつながります。
参考)えっ!!エアコン設置できない!?室外機の設置場所がせまくて置…
エアコンの電力効率を最適にするには、室内機と室外機は近くに設置することが推奨されます。標準的な設置工事では4m〜5m程度が理想とされており、一般的な家庭用エアコンであれば15m〜20m程度まで設置可能です。配管が長くなると送られる冷気が温まってしまうため、設定温度まで下げるのに電力をかなり使用してしまいます。
参考)エアコンの設置場所が離れている時や狭い時はどうする?設置場所…
一般的なめやすとして、室外機を地上置きした場合、室内機が1階なら3〜4m、2階なら6〜8m、3階なら9〜11mの配管長が必要となります。高低差については10m程度にしておくのが一般的です。2点間の距離に比例してエアコンの性能にマイナス影響が出るのは確かですが、室外機設置場所としての条件が良くなる場合もあるため、どちらが良いかの判断は現場次第です。業務用エアコンの場合は100mを超えても室外機を設置できます。
参考)エアコンの室外機と室内機の距離について - 柳田設備
メンテナンススペースは、空調設備の点検や保守作業を行うために必要不可欠な要素です。メンテナンススペースを設けることで、機器の点検や修理作業がスムーズに行え、作業者は効率的に作業できます。スペースが確保されていれば、作業者は容易に作業でき安全性が向上し、障害物のない広い環境で作業できることが重要です。
参考)https://www.yanmar.com/jp/energy/knowledge/energy_issues/case_51.html
メンテナンススペースは通風路と合わせることが多く、これにより機器の冷却や排熱が効率的に行えます。空調設備の設置には建築基準法、消防法などの法的要件も考慮しながら、メンテナンススペースを設けることでこれらの要件を満たすことができます。マンションなどの共同住宅では、共有部と専有部を隔てる壁が「共住区画」に該当する場合、エアコン配管は法令で定められた耐火措置が必要となります。建築基準法や地域の条例によって室外機の設置場所が制限される場合もあるため、設置前の確認が重要です。
参考)エアコンのコンセント位置:法律と安全、設置の注意点 - 株式…
業務用壁掛けエアコンの室内機寸法は、家庭用と比較して大型化する傾向があります。例えば三菱電機のスリムERシリーズでは、4馬力シングル機種の場合、高さ365mm×横幅1170mm×奥行295mmとなっており、省エネ法の旧寸法規定(横幅800mm以下・高さ295mm以下)を大きく超える製品が主流です。3馬力の同時ツイン機種でも高さ299mm×横幅898mm×奥行237mmとなっています。
参考)業務用壁掛けエアコンサイズ表
業務用エアコンは冷暖房能力が高いため、室内機・室外機ともにサイズが大きくなります。20畳用や200Vタイプなど冷暖房能力が高いモデルでは、さらにサイズが大きくなるため、設置スペースの事前確認が不可欠です。業務用エアコンの点検は、その設備を所有している人に義務があり、賃貸ビルやテナントスペースの場合は、エアコンの所有者であるビルのオーナーに点検の責任があります。リースやレンタルで使用している場合でも、日常的に機器を使用し管理している人が点検の義務を負います。
参考)業務用エアコンの点検義務とは?誰が行うのか・点検の種類につい…
空調設備設計では、企画・基本計画・基本設計・実施設計の4段階で進められます。企画段階では建物の種類、構造、規模、使用目的、面積、周辺状況などの条件を整理し、計画方針を設定します。基本計画段階では、空調設備の大まかな仕様について決定し、室内環境の状況や空調方式について検討するなど設計条件を整理することが必要です。
参考)空調設備設計の方法|エネルギー効率を高めるポイントを解説
基本設計では、空調方式や熱源といった事項の検討から、実施計画図の作成、機器の配置計画など具体的な点を詰めていきます。実施設計では、詳細な熱負荷計算、風量の算出、最適な空調機器の選定、ダクト配管の設計、仕様書・予算書の作成などが行われます。高気密高断熱住宅では、住宅設計とエアコン計画を同一設計者に任せることが理想的で、設計者は住宅の気密性・断熱性、間取り、ライフスタイルなどを考慮して計画します。冷たい空気は下に溜まり、暖かい空気は上にいくという特性を考慮し、冷房時と暖房時に分けて最適な配置を考えることが重要です。
参考)301 Moved Permanently
エアコン設置における建築基準法の規制は、主に室の天井高さと設置場所に関連します。建築基準法施行令第21条では居室の天井高さを2100mm以上(2.1m以上)と定めており、これがエアコン室内機の寸法規定の根拠の一つとなっています。マンションなどの共同住宅では建築基準法により廊下の幅員は120cm以上と定められており、消防法により避難経路の確保も必要です。
参考)エアコン室外機の設置場所と設置方法・条件 ベランダが狭い場合…
新しい建築基準では、建物の壁や天井に使用される断熱材が厚くなり、エアコンの配管やダクトの通し方が従来と異なる場合があります。特に断熱材の増加により、配管スペースの確保が課題となる場合があります。エアコンの室外機を設置する際には、建築基準法や地域の条例によって設置場所が制限される場合があり、これらの規制は建物の安全性や景観、近隣住民への配慮を目的として定められています。建築基準法では、建物の構造や用途、防火地域の指定などに応じて、室外機の設置場所や材質に制限が加えられることがあります。
参考)新しい建築基準とエアコン工事への影響 : エアコン工事協力業…
消費者庁による省エネ法に基づくエアコン告示の改正概要資料(寸法規定の詳細な根拠と2022年改正内容が記載)
経済産業省資源エネルギー庁によるエアコンのエネルギー消費性能の向上に関する告示(寸法規定タイプと寸法フリータイプの基準エネルギー消費効率の詳細)
経済産業省によるエアコン設置工事に係る電気工事士法の解釈適用資料(標準的なエアコン設置工事の作業内容と電気工事に該当する範囲の解説)