
コンクリート基礎のクラックは大きく「乾燥収縮」「不同沈下」「経年劣化」の三つに分けられる[1]。
・乾燥収縮は施工後1〜2年で発生しやすいヘアークラック。幅0.3mm未満なら構造に影響しにくいが、防水性低下には注意。
・不同沈下は地盤の不均一や地震により基礎に曲げ応力が集中し、幅0.3mm以上で深さが鉄筋まで達する構造クラックへ発展[2]。
・経年劣化は凍害や塩害が主因。表層中性化が進むと鉄筋が腐食し爆裂を招く。
危険度を数値で示すなら幅0.3mm・深さ4mmが要補修の目安。幅が測定しにくい場合はクラックスケールを携帯すると現場判断が迅速になる。
📝ポイント
・微細クラックでも雨水が浸入すれば凍結膨張で拡大するため、防水層としてのコーティングは必須。
・幅0.5mm超は内部にエポキシ樹脂を圧入し、再発を防ぐピンニング補強を併用すると安心[3]。
・斜めクラックは不同沈下のシグナル。必ず沈下修正の可否を検討してから表面補修へ進む。
外壁診断士教本の基礎判定チャートに詳細→基礎のひび割れ原因と補修
塗装業者が使うコーキング材は5系統に大別される。現場別に長所と短所を整理しよう。
系統 | 耐久年数 | 塗装可否 | 主な用途 |
---|---|---|---|
変性シリコン | 10〜15年 | ◎ | 基礎・外壁一般 |
ウレタン | 7〜10年 | ◎ | 目地補修・追従性重視 |
シリコン | 15年〜 | × | 水回り・浴室 |
アクリル | 3〜5年 | ◎ | 仮設・低コスト現場 |
エポキシ樹脂 | 20年〜 | ◎ | 構造クラック充填[4] |
選定フロー
1️⃣ 膜厚施工か露出仕上げかを確認し、塗装予定がある場合は「塗装可〇」の材を選ぶ。
2️⃣ クラック幅が0.2mm未満なら低粘度変性シリコンで刷り込み。0.3mm以上はカートリッジ式エポキシで注入。
3️⃣ 紫外線が強い南面や海岸部は耐候性重視で変性シリコン+トップコート。
4️⃣ 高所足場の再設置コストも踏まえ、耐久年数と人件費を天秤にかける。
🎯実践Tip
・気温5℃以下は硬化遅延。冬季は速硬化型を手配または仮養生を併用。
・プライマーはメーカー純正を使用しないと保証対象外になるケース多し。
コーキング材選定の写真比較→コーキング基礎知識と種類
Uカットシール工法は0.3〜3mmクラックに適用される定番工法[3]。
▶️標準施工フロー
💡職人の裏ワザ
・開口幅を一定にするため、ディスクに治具を当ててスライドすると仕上がりが美しい。
・角部はカット中の過切削で鉄筋露出しがち。マスキングテープで目印を付けると防げる。
・雨予報の場合はコーキング硬化後にブルーシートで簡易養生し、アルカリ水滴による白華を抑制。
費用試算例(木造30坪住宅・外周38m、クラック計8m)
・Uカット施工:8m×3,000円=24,000円
・下塗り+上塗り:基礎全面25m²×1,400円=35,000円
・諸経費10%:5,900円
総額約65,000円(税抜)。
Uカット写真付き手順→Astecペイント ひび割れ補修方法
DIYは材料代が安い一方、施工不良による再発が多い。以下に典型的失敗と対策を示す。
・プライマー未使用で2年以内に剥離→下地含水率8%以下確認と専用プライマー必須
・シリコン系を使用し塗装できず色ムラ→変性シリコンを選択し、施工後3日以内に塗装
・クラック奥まで充填不足→ノズル先端を45度カットし「押し込み塗り」を徹底
🆚費用比較(幅0.4mm×長さ4mのクラック1本)
項目 | DIY | プロ施工 |
---|---|---|
材料 | コーキング材1,800円+工具3,000円 | — |
人件費 | 自力 | 15,000円 |
耐用年数 | 5〜7年 | 10年以上 |
再発リスク | 中 | 低 |
総額 | 約4,800円 | 約15,000円 |
結論:ヘアークラックはDIYでコスト削減可能だが、構造クラックは圧入機材や保証を考慮しプロ依頼が安全。保証書発行の有無も施主に提示すると信頼度が上がる。
DIYとプロの判断基準チェックリスト付き→基礎ひび割れDIY徹底解説
検索上位では触れられていないが、近年注目されるのが「自己修復型シーリング」と「光硬化エポキシ」。
🚀自己修復型シーリング
・マイクロカプセルに封入した低粘度樹脂がクラック再発時に破裂し自動封止。
・乾燥収縮による再クラックを90%抑制した実験報告あり(日本建築学会材料施工部会)。
・価格は従来品比1.4倍だが再補修サイクルを10年延長できるため、LCCで優位。
🌞光硬化エポキシ
・紫外線照射で90秒硬化。雨仕舞いのタイトな工程でも即塗装が可能。
・硬化深度5mmで従来熱硬化の3倍の接着力。
・注意点は日陰面での硬化不良。補助LEDランプを併用すれば解決。
これら新材料はまだ国内規格外だが、試験現場での実績を提示すると提案力が高まる。早期に情報を押さえて差別化を図りたい。
自己修復樹脂の学会資料要約→ひび割れ自己治癒FRCC研究