
総堀りは、建築基礎工事における掘削方法の一つで、建物の基礎が入る範囲を全面的に掘り下げる工法です。この工法は主に1階床のコンクリート下にピットや地階がある場合や、べた基礎を採用する建築物に適しています。
総堀りの最大の特徴は、掘削面積が広く作業性に優れている点です。全面を均一に掘り下げるため、作業員が広いスペースで動きやすく、基礎工事の施工がスムーズに進められます。特に鉄筋や型枠の組立作業において効率的な作業環境を提供します。
施工手順としては、まず建物の外周よりも少し広めに掘削範囲を設定し、バックホーなどの重機を使って均一に掘り下げていきます。掘削深さは設計図に基づいて決定され、基礎の底面が安定した地盤に接するように計画されます。
しかし、総堀りには注意点もあります。最も大きな課題は残土の処理です。全面を掘削するため、他の工法と比較して搬出する土量が多くなります。そのため、ダンプトラックの手配や搬出計画を事前に綿密に立てる必要があります。
総堀りのメリット・デメリットを整理すると以下のようになります。
【メリット】
【デメリット】
総堀りは作業効率と品質管理の面では優れていますが、コスト面では他の工法と比較検討する必要があります。特に大規模な建築物や地下室を持つ建物では、総合的な判断が求められます。
布堀りとつぼ掘りは、総堀りと比較してより限定的な範囲を掘削する工法です。これらの工法は掘削量を最小限に抑えることで、作業効率の向上とコスト削減を図ることができます。
布堀りの特徴
布堀りは、連続している基礎を線状に掘り進める工法です。主にフーチング基礎や基礎梁など、線状に連続した基礎構造物を構築する際に適しています。基礎の幅に余掘り分を加えた幅で掘削を行います。
布堀りの主な特徴は以下の通りです。
つぼ掘りの特徴
つぼ掘りは、独立基礎などに用いられる掘削方法で、基礎の位置ごとに独立した穴を掘ります。布堀りと同様に基礎の幅に余掘りを加えた範囲で掘削しますが、連続していない点が大きな違いです。
つぼ掘りの主な特徴は以下の通りです。
選定基準
布堀りとつぼ掘りの選定は、建物の基礎構造や現場条件によって決定されます。主な選定基準は以下の通りです。
現場管理上の注意点として、つぼ掘りは墨出し作業が難しく、トランシットを何度も移動させる必要があるため、作業効率が低下する場合があります。そのため、独立基礎であってもつぼ掘りではなく布堀りを選択するケースもあります。
両工法とも、掘削後の余掘り部分では人が入って作業できるスペースを確保する必要があります。一般的には60cm程度の余掘り幅を見込んで計画します。
建設業界では、溝堀工事の効率化と精度向上を目指して、最新技術の導入が進んでいます。特に注目されているのが、3次元設計データとLiDARを活用した自律施工システムです。
自律施工システムの概要
川崎重工業が開発した「ショベル自律施工システム」は、建設現場の溝堀作業を自動化する革新的な技術です。このシステムは3次元設計データとLiDARによる地形センシングを組み合わせ、掘削作業を自律制御します。
システムの主な特徴。
実証試験では、幅2m、深さ0.6m、長さ10mの溝を自律施工できることが確認されています。掘削だけでなく、溝床面の水平均しや押し固め作業も自動で実行可能です。
トレンチカット工法の特徴と応用
トレンチカット工法は、地下構造物の施工に適した掘削方法です。この工法では、構造物の外周部分を溝状に掘り削り、基礎や地下構造物を構築していきます。
トレンチカット工法が採用されるケース。
トレンチカット工法の特徴として、山留工事を行わずに構造物自体を山留めの代わりにして内部の掘削工事を進める点が挙げられます。これにより、山留工事や埋め戻しの簡素化が可能となり、コスト削減にも貢献します。
トレンチカット工法で使用される主な機械。
これらの最新技術とトレンチカット工法の導入により、溝堀工事の効率化、精度向上、安全性の確保が進んでいます。特に人材不足が課題となっている建設業界において、これらの技術は今後さらに重要性を増していくでしょう。
建築業界で使用される「トレンチ」という用語は、設備配管のために床下や土中に設けた溝を指します。英語で「trench」と表記され、もともと「堀」や「溝」という意味を持っています。建築現場では、この言葉が特定の目的を持った構造物を表す専門用語として定着しています。
トレンチの種類と用途
トレンチは用途によって様々な呼び名があります。
トレンチは建物の機能性を高める重要な要素であり、適切に設計・施工されることで、建物の耐久性や利便性に大きく貢献します。
トレンチ工法とは
トレンチ工法は、地中に配管やケーブルなどを設置するために、削り取った地盤にトレンチを掘削していく方法です。この工法では、トレンチの底に土砂や詰め物、保護用のカバーを入れて安全に埋設できるように作ります。
トレンチ工法の特徴。
トレンチ工法は、トレンチカット工法と名前は似ていますが、目的や施工方法が異なります。トレンチ工法は主に配管やケーブルの埋設を目的としており、土留めを行わない点が特徴です。
建築現場でのトレンチの活用例
建築現場では、トレンチが様々な場面で活用されています。
建築現場でトレンチを設置する際は、適切な深さと幅、勾配を確保することが重要です。特に排水トレンチの場合は、水の流れを考慮した勾配設計が必須となります。
溝堀工事を効率的かつ安全に進めるためには、綿密な計画と適切な施工管理が不可欠です。ここでは、溝堀工事を成功させるための重要なポイントと注意点について解説します。
事前調査と計画の重要性
溝堀工事を始める前に、以下の事前調査と計画が必要です。
特に重要なのは、設計時に山留めなどが見込まれているかを確認し、施工時の計画で作業上適切な方法を再検討することです。
施工時の注意点
溝堀工事の施工時には、以下の点に注意が必要です。
効率化のポイント
溝堀工事の効率化を図るためのポイントは以下の通りです。
特に近年は、川崎重工業が開発したような自律施工システムの導入により、作業効率と精度の向上が期待されています。これらの技術は、人材不足が課題となっている建設業界において、今後ますます重要性を増していくでしょう。
施工事例からの学び
実際の施工事例から学ぶことも重要です。例えば、排水の悪い土地でのつぼ掘り工事では、雨が降ると水替え作業が大掛かりになるという教訓があります。このような過去の事例を参考に、現場条件に応じた適切な対策を講じることが成功の鍵となります。
溝堀工事は建築の基礎工事において非常に重要な工程です。適切な計画と施工管理により、安全かつ効率的に工事を進めることができます。特に、無駄な掘削を避け、必要最小限の掘削で済ませることがコスト削減と工期短縮につながります。