水ガラス系注入材 止水 地盤改良 特徴と施工性

水ガラス系注入材 止水 地盤改良 特徴と施工性

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水ガラス系注入材 止水 地盤改良

水ガラス系注入材の全体像
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用途の基本整理

地下構造物の漏水対策から砂質地盤の透水性低下・液状化対策まで、どのような場面で水ガラス系注入材が選ばれているかを俯瞰します。

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性能と施工性のバランス

ゲルタイムの調整しやすさや浸透性の高さと、長期耐久性・強度のバランスをどのように見極めるかを整理します。

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リスクと管理ポイント

動水勾配下での薬液流出リスクや、JIS規格・安全性指標を踏まえた管理のポイントを紹介します。

水ガラス系注入材 基本性状と止水メカニズム

水ガラス系注入材は、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を主材とし、硬化剤と反応してゲル化する無機系の薬液注入材です。 水のように低粘度な溶液型として砂質地盤の間隙に浸透し、注入後にゲル化することで間隙水をゲルで置換し、透水性を低下させるのが基本メカニズムです。
注入工法上は、砂質地盤やコンクリート亀裂の細かい間隙にも浸透しやすいことから、浸透注入による止水・地盤改良に広く用いられています。 また、ゲルタイム(流動性を失うまでの時間)を薬液組成で比較的自由に調整できるため、早期の漏水低減が求められる現場で即効性のある止水材として評価されています。
一方で、水ガラス系注入材の固結体はセメント系と比べると長期強度が小さく、長期的な構造耐力を期待する改良体というより「止水・透水低下」が主目的の改良として位置づけるのが実務的です。 そのため、液状化対策や恒久的な支持力向上が求められる場合には、他のセメント系・高分子系注入材との併用や使い分けが検討されています。

水ガラス系注入材 ゲルタイム管理と動水勾配の意外な影響

水ガラス系注入材の運用で最も重要な管理項目のひとつがゲルタイムであり、注入材が流動性を失い粘性が増すまでの時間として定義されています。 ゲルタイムは、主材濃度や硬化剤の種類・添加量、温度、pHなどに大きく依存し、現場温度が低いと硬化が遅れ、高温では想定より早くゲル化してしまうため、事前の配合試験と温度補正が欠かせません。
あまり知られていないポイントとして、動水勾配(地盤内の水の流れの勾配)が大きい条件では、注入開始からゲル化までの短時間に薬液が下流側へ流され、十分な広がりを得られないどころか流出してしまうことが室内実験で指摘されています。 研究では、動水勾配が高いケースでは透水係数の低下割合が顕著に小さくなり、場合によっては止水効果がほとんど得られないことも報告されており、湧水が強い現場ではゲルタイムを極端に短くするだけでは不十分な可能性があります。
さらに、時間経過とともに水ガラスと粘土粒子の混合系では粘度が低下し沈殿が進むケースもあり、単純に濃度を上げるだけでは止水性が向上せず、逆に効果を損なう結果となることも示されています。 このため、動水勾配と注入圧・注入方向、ゲルタイムの三者をセットで設計し、必要に応じて多段注入や事前排水と組み合わせるなど、地盤条件を踏まえた工法選定が重要です。

水ガラス系注入材 JIS規格と安全性・環境配慮

薬液注入に用いられる水ガラスは、一般にJIS K 1408に規定されるJIS 3号水ガラスが主に使用されており、密度やモル比、粘度などの品質項目が規定されています。 公共工事における薬液注入工法の暫定指針では、水ガラス系薬液と非薬液系注入材に対象が限定され、水ガラスの品質についてはメーカーの証明書に基づき確認することが求められています。
安全性の面では、水ガラスの急性経口毒性LD50が約1100mg/kgとされるなど、従来の有機系注入材と比較して相対的に安全性が高く、環境影響が小さいことから地盤改良用途で採用されています。 また、近年の水ガラス系注入材では、固結体が中性領域となるよう設計された製品もあり、従来懸念されていたアルカリ分の溶出を抑制し、周辺コンクリートや地下水環境への影響低減を図ったタイプも存在します。
一方で、環境負荷の観点からは、水ガラス系注入材であっても過剰注入や地盤外への流出は望ましくなく、注入量の管理や漏洩防止が求められています。 地下水利用がある地域や水道施設周辺では、とくに薬液注入範囲と地下水流向を把握した上で、必要最小限の改良範囲に抑える計画が重要です。

水ガラス系注入材 セメント系・高分子系との比較と使い分け

注入材は大きく、水ガラス系や高分子系から構成される薬液系と、セメント系や粘土系から構成される非薬液系に大別されます。 このうち、水ガラス系薬液は低粘度で浸透性に優れ、ゲルタイムを短く設定できることから、砂質地盤の浸透注入や、早期に漏水低減を図りたい止水工事に適しています。
セメント系注入材は、懸濁型として割裂注入により比較的大きな亀裂を形成し、高い固化強度と長期安定性を持つ改良体を構築できる点が特徴で、液状化対策や大規模な沈下抑制など長期的な地盤改良に向いています。 高分子系(アクリル酸塩など)は浸透性と止水性に優れたものも多い一方で、環境安全性やコストの面で慎重な検討が必要となり、水ガラス系が環境負荷とのバランスで選ばれる場面も増えています。
現場での実務的な使い分けとしては、砂質地盤の透水性低下や地下ピットの漏水止水など「浸透性」と「即効性」を重視する場面では水ガラス系注入材を、長期強度や構造的な補強が主目的の場合はセメント系を主体とし、必要に応じて水ガラス系を前処理的に使うといった組み合わせが有効です。 また、地盤条件によっては、水ガラス・粘土混合系など複合タイプを選ぶことで、透水性低下と粘着力増加を同時に狙うケースも検討されています。

水ガラス系注入材 BIM・センシング活用による施工管理の新視点

水ガラス系注入材の管理は、従来ゲルタイムや注入量、注入圧の記録が中心でしたが、近年はBIMや3Dモデルと連携させた「見える化」が進みつつあります。 地盤注入工の設計段階で、地質ボーリングデータや地下水位情報をBIMモデルに取り込み、注入範囲や止水ラインを空間的に可視化することで、過剰改良や不足改良を防ぐ試みが始まっています。
また、動水勾配や注入効果判定手法に関する研究では、地盤内の透水係数変化を試験井や間隙水圧計で追跡し、注入後の止水効果を定量的に評価する方法が提案されています。 これにIoT水位センサーやクラウド監視を組み合わせれば、注入後の地下水挙動を継続的にモニタリングし、水ガラス系注入材の効果減退や想定外の水みち形成を早期に検知するといった運用も、今後の維持管理フェーズでは現実的な選択肢になりつつあります。
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