

アプリ版で印刷しようとすると、1ページも出力できずに作業が止まります。
公益社団法人日本道路協会は、2024年4月から電子図書利用サービスを開始しました。建設業界の生産性向上とリモートワーク推進を目的として立ち上げられたこのサービスは、建設系の基準類書籍を本格的に電子化した、日本初の試みです。それだけ画期的なサービスということですね。
道路関連業務に欠かせない「道路橋示方書・同解説(Ⅰ〜Ⅴ編)」や「道路構造令の解説と運用」「舗装設計施工指針」など、合計14図書が対象です。これまで1冊数百ページ、重さも相当になる紙の書籍を、現場担当者や設計技術者が持ち歩くのは大きな負担でした。その課題を解決するために生まれたのが、この電子図書利用サービスです。
サービスの構造としては、電子商取引プラットフォーム「Shopify(ショピファイ)」で購入し、「bookend(ブックエンド)」というシステムで閲覧するという2段階の仕組みを採用しています。購入後は「日本道路協会」アプリ(iOS・Android・Windows・Mac対応)でダウンロードして使うか、ブラウザからオンラインで閲覧するかを選べます。
利用できるのは協会の会員・非会員を問いません。つまり、日本道路協会に入会していない事業者でも購入・利用が可能です。官庁・財団・ゼネコン・橋梁会社・舗装会社・コンサルタント会社など、幅広い組織で活用が広がっています。
日本道路協会電子図書利用サービス 公式サイト(購入・利用登録はこちら)
建築・土木の現場で働く方が一番気になるのは「印刷できるかどうか」でしょう。結論から言えば、印刷できる条件は「ブラウザ版(bookend view)で閲覧中のページのみ」です。
ブラウザ版が条件です。これが大前提となる重要なポイントです。
一方で「日本道路協会」アプリ版(iOS・Android・Windows・Macのネイティブアプリ)では、印刷機能が完全に無効化されています。アプリをインストールして使い慣れていた場合、印刷しようとしてもそもそもメニューに印刷項目が存在しません。「なんで印刷できないんだろう」と悩んだ経験がある方もいるかもしれませんが、これはシステム仕様です。
また、ブラウザ版で印刷できるのは「閲覧中のページのみ」という制限があります。一度に書籍全体をPDF化して印刷することはできません。たとえばA4換算で300ページある道路橋示方書を一括で印刷しようとしても、それは技術的に不可能な設計になっています。1ページずつブラウザで開いて印刷する必要があります。
さらにブラウザ版で印刷した際の出力物には、利用者のメールアドレスが透かし文字として埋め込まれる仕様があります。これはDRM(デジタル著作権管理)の一環で、不正コピーや無断共有があった場合に「誰が出力したか」を特定できる仕組みです。社内での回覧や共有の際には、この点を理解しておくことが大切です。
なお、ブラウザ版で書き込んだメモは印刷に反映されません。メモ機能はあくまで画面上の覚え書きとして機能するもので、印刷に出力したい情報は別途テキストとして準備する必要があります。
| 機能 | アプリ版 | ブラウザ版 |
|---|---|---|
| 印刷 | ❌ 不可 | ✅ 閲覧中ページのみ可 |
| オフライン閲覧 | ✅ 可(ダウンロード後) | ❌ 不可(オンライン必須) |
| メモ・付箋 | ✅ 可 | ✅ 可(印刷には非反映) |
| 複数図書同時閲覧 | ✅ 可(PCアプリ) | ✅ 可(複数タブ利用) |
| 透かし文字 | 非公開 | ✅ メールアドレス埋め込み |
日本道路協会電子図書利用サービス よくある質問(印刷・閲覧の詳細仕様はこちら)
コストの観点から見ると、電子図書は紙版よりも明確にお得です。基本的に紙版より1割安く、一部書籍では半額以下で提供されています。
たとえば「道路橋示方書・同解説Ⅰ共通編(平成29年11月版)」は電子版で税込1,980円です。これは現場で参照する頻度が高い基本書であるにもかかわらず、コーヒー数杯分の価格で入手できます。「道路構造令の解説と運用(令和3年3月)」は8,415円(税込)で、これも紙版と比較してコスト削減になります。「舗装設計施工指針」は電子版4,950円(税込)で提供されています。
価格が安いだけでなく、電子版は2端末まで同時に利用できます。つまり1冊分の購入費用でオフィスのPCと現場のタブレットの両方で使えるということです。紙の書籍を2冊購入する必要がないため、実質的なコスト削減効果はさらに大きくなります。これは使えそうです。
有料販売開始後わずか1カ月で549注文・106購入者を記録し、前年同月の紙版販売数を超えたという実績からも、現場での活用が急速に広がっていることがわかります。購入者の属性も多様で、官庁・財団・ゼネコン・橋梁会社・舗装会社・コンサルタント会社など、業界全体で導入が進んでいます。
なお、電子版は紙版に比べて内容も充実しています。具体的には、図表のカラー化・高解像度化が行われており、正誤表が自動で更新されます。出版後の技術情報も随時反映されるため、常に最新の内容を参照できる点が大きな強みです。
日本道路協会電子図書一覧(最新の価格・対象図書はこちらで確認)
建設現場や橋梁点検の現場では、インターネット回線が安定しない、あるいはまったく使えないケースが少なくありません。そうした環境でも電子図書を使いたい場合は、アプリ版のダウンロード機能を活用するのが唯一の方法です。
つまりオフライン利用はアプリ版だけが条件です。
「日本道路協会」アプリ(iOS・Android・Windows・Mac)を端末にインストールし、書籍を事前にダウンロードしておけば、インターネット接続がない環境でも参照できます。各書籍のファイルサイズを事前に把握しておくと、ダウンロード時間や端末の空き容量の管理がしやすくなります。代表的な書籍のサイズは以下の通りです。
ダウンロードできる端末数は「Web書庫(アプリ内)」で確認できます。端末の入れ替えや機種変更の際には「Web書庫のリセット」機能を使えば、すべての端末からいったん書庫に戻し、新しい端末へ再ダウンロードすることができます。この操作をしてもメモや付箋は削除されないので安心です。
現場でよく使うシーンとして、橋梁点検時に道路橋示方書を参照する場合や、舗装打ち換え工事の施工中に舗装設計施工指針を確認するケースが挙げられます。キーワード検索や目次ジャンプ機能を使えば、数百ページの書籍から該当箇所を数秒で見つけられます。現場での確認作業にかかる時間が大幅に短縮されるでしょう。
電子図書を便利に使い始める前に、購入・共有ルールに関してしっかり確認しておく必要があります。うっかり誤った使い方をすると、業務上の手間が増えたり、コンプライアンス上の問題につながる可能性があります。
まず、購入後の返品・返金・交換は一切できません。これが原則です。紙の書籍と同様に、「間違って旧版を買ってしまった」「不要な図書を購入してしまった」というケースでも対応してもらえません。購入前に書名・版・編集号を必ず確認しましょう。購入履歴から見積書・納品書・請求書の発行が可能ですので、稟議や精算にも対応できます。
次に、アカウントの共有ルールに注意が必要です。1つのアカウントを複数人で共有することは認められていますが、共有できる範囲は「アカウント登録時に登録した利用部署内」に限定されています。異なる部署や社外の協力会社への共有は、規約上の問題となります。
また、旧版図書については特別な注意が必要です。新刊(改訂版)が発刊されると旧版の電子図書は販売終了となります。販売終了前に購入した旧版は引き続き閲覧できますが、バージョンアップ等のサービスは終了します。設計条件が旧版を参照する契約では、旧版を購入して保持しておくことが重要です。
さらに、メモ・付箋の引き継ぎに関する落とし穴もあります。ブラウザ版とアプリ版の間でメモや付箋は共有されません。長期プロジェクトで活用する場合は、どちらかの環境に統一して書き込みを行うか、重要な情報は別途テキストファイルや紙にも記録しておくことをお勧めします。
アイドック社プレスリリース(bookend採用の背景・DRM仕様・印刷制御の詳細)