温度計(抵抗温度計)の仕組みと建築現場での正しい選び方

温度計(抵抗温度計)の仕組みと建築現場での正しい選び方

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温度計(抵抗温度計)の仕組みと建築現場での選び方・使い方

2線式の抵抗温度計は、配線が長くなるだけで最大2.6℃以上も誤差が出てコンクリート強度判定を狂わせます。


この記事でわかること
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抵抗温度計の基本原理

白金(Pt100)の電気抵抗変化を利用した高精度な温度測定の仕組みを、建築従事者向けにわかりやすく解説します。

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配線方式と誤差リスク

2線式・3線式・4線式の違いと、配線ミスによる温度誤差が建築現場でどんな損害につながるかを具体的数値とともに紹介します。

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建築現場での実践的な使い方

コンクリート養生・空調設備・寒中工事など、現場ごとの最適な抵抗温度計の選び方と取り付け・管理のポイントを解説します。


温度計(抵抗温度計)の基本原理と白金測温抵抗体Pt100とは


抵抗温度計(測温抵抗体)とは、金属の電気抵抗値が温度に応じて変化する性質を利用して、温度を測定するセンサのことです。英語では「RTD(Resistance Temperature Detector)」と呼ばれ、建築設備・空調・コンクリート養生管理など幅広い現場で使われています。


最もよく使われる素材が「白金(プラチナ)」で、0℃のときに抵抗値が100Ω(オーム)を示すものを「Pt100」と呼びます。つまり、名前の「Pt」は白金の元素記号、「100」は0℃での抵抗値を表しています。白金は温度に対して抵抗値が非常に安定して変化し、再現性が高いため、精密な温度管理が求められる建築・設備系の現場で標準的に採用されています。JIS-C1604で規格化されており、メーカー間での互換性があることも現場では大きなメリットです。


抵抗温度計の測定原理は、オームの法則(E=IR)がベースです。センサ内部の抵抗素子に一定の電流を流し、発生した電圧から抵抗値を算出し、そこから温度に換算します。つまり、気温の変化 → 抵抗値の変化 → 電圧の変化 → 温度表示、という流れで測定が成り立っています。


測温抵抗体の種類には、用途に応じて以下のように分類されます。


種類 測定範囲 特徴
白金測温抵抗体(Pt100) -200〜+660℃ 最も普及、高精度・高安定性
銅測温抵抗体 0〜+180℃ 安価だが小型化が難しい
ニッケル測温抵抗体 -50〜+300℃ 感度が高く比較的安価
白金・コバルト測温抵抗体 -272〜+27℃ 極低温用途向け


建築現場で最も使われるのは白金(Pt100)です。つまりPt100が基本です。


なお、抵抗温度計によく似た名前の「熱電対」とは別のものです。熱電対は2種類の金属線を接合した際に生じる「起電力(電圧)」で温度を測るのに対し、抵抗温度計は「抵抗値の変化」で測定します。熱電対は1000℃を超える高温域でも使えますが、精度は抵抗温度計に劣ります。建築設備の空調や養生温度管理(-50℃〜150℃程度の範囲)では、精度重視の抵抗温度計が圧倒的に向いています。


参考:Keyence 測温抵抗体の基礎(JIS規格・配線方式・選定ポイントを詳しく解説)
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp


温度計(抵抗温度計)の配線方式——2線式・3線式・4線式の誤差リスク

抵抗温度計を現場で使う際、意外と見落とされがちなのが「配線方式の選択」です。これは単なる接続の話ではなく、測定精度に直結するため、建築現場での品質管理上で見逃せないポイントになります。


配線方式には「2線式」「3線式」「4線式」の3種類があります。それぞれの仕組みと誤差リスクを以下にまとめます。


配線方式 特徴 誤差リスク 適した用途
2線式 最もシンプル・安価 ⚠️ 導線抵抗が測定値に加算される。リード線往復0.5Ωで約2.6℃の誤差が発生 配線が短い簡易計測のみ
3線式 最も一般的な方式 3本の導線が同じ材質・長さなら導線抵抗の影響をキャンセル可能 建築・設備現場の標準
4線式 最も高精度 導線抵抗の影響をほぼ完全に排除できる 精密計測・研究用途


特に注意が必要なのが2線式です。リード線(センサと計器をつなぐ電線)の抵抗が、センサの抵抗値に上乗せされてしまうため、そのまま誤った温度として表示されます。「Pt100で往復の導線抵抗が1Ωあると、約2.5℃の等価温度誤差になる」という事実が業界標準文献でも確認されています。


痛いですね。建築現場のコンクリート養生では±1〜2℃の誤差でも「5℃以上の保持」という基準に影響し、品質問題に発展しかねません。


2線式が使えるのは、センサと計測器の距離が非常に短い場合に限られます。現場で長いケーブルを引き回す状況では、3線式以上を使うのが原則です。


3線式は抵抗素子の片側に2本・もう片側に1本の導線を接続する方式で、3本の導線の長さ・材質・線径が等しければ導線抵抗の影響を自動的にキャンセルできる仕組みになっています。コンクリート養生用のチノー製「R985-3W」などは、3線式を標準採用した専用センサで、内部3重防水構造(素子部モールド・パッキンシール・シリコーンゴムモールド)を備えており、雨天や水養生でも安心して使用できます。


3線式なら問題ありません。ただし、3本の配線の長さと材質を均等にすることが条件です。


参考:計装マスターによる2線式・3線式・4線式の詳解(具体的な誤差計算も紹介)
https://www.keisou-master.com/an-overview-of-rtds-and-wiring-configurations/


温度計(抵抗温度計)を建築現場のコンクリート養生管理で使う方法

建築現場で抵抗温度計が最も活躍するシーンの一つが、コンクリートの養生温度管理です。コンクリートは打設後に水和反応(硬化反応)が進みますが、温度が低すぎると反応が極端に遅れ、強度不足につながります。逆に高温すぎても長期強度が低下するため、適切な温度範囲の管理が必要になります。


JASS5(建築工事標準仕様書)や土木標準示方書では、寒中コンクリート(日平均気温が4℃以下になる期間のコンクリート工事)においては、打設後の初期養生中にコンクリート表面温度を2℃以上、できれば5℃以上に保つことが義務づけられています。この「5℃以上」という基準を守るために、抵抗温度計によるリアルタイム温度モニタリングが欠かせません。


温度管理が不十分だとどうなるでしょうか? 研究によれば、標準養生28日の強度に対して、積算温度が370°D・D相当(平均温度3.2℃)の環境では約25%の強度低下が生じるとされています。コンクリート強度が設計値を下回れば、構造物の安全性が損なわれるだけでなく、是正工事や撤去・打ち直しといった大きなコスト損失が発生します。


建築現場でよく使われるコンクリート養生専用センサとしては、株式会社チノーの「R985-3W(Pt100、3線式、-50〜150℃対応)」があります。保護管径φ8mm×60mm、導線20mで現場に埋め込んで使えるように設計されており、3重防水構造で水に強く、専用のデータロガーと組み合わせてSDカードに温度履歴を記録することも可能です。複数箇所を同時に管理したい場合は、4チャンネル対応の養生温度計(例:サトテック「SD-CON」)も選択肢として活用できます。


つまり養生温度の正確な記録が品質保証の要です。記録を残しておくことで、万が一のクレーム時にも客観的な証拠として機能します。


センサを取り付ける際は、保護管の外径の15〜20倍程度の挿入長さを確保することがJIS規格でも推奨されています。例えば外径8mmのセンサであれば、120〜160mm以上挿入することで正確な温度が測定できます。挿入不足は誤差の原因になるため、この点も注意が必要です。


参考:株式会社チノー コンクリート養生用測温抵抗体R985-3Wの製品ページ
https://www.chino.co.jp/jp/serv/products/detail/?did=122


温度計(抵抗温度計)の精度クラスと許容差——建築設備での正しい選び方

抵抗温度計には「精度クラス」が存在し、用途に合ったクラスを選ばないと測定結果の信頼性が下がります。これは建築設備の空調制御や、品質管理記録を提出が求められる公共工事でも関係してくる話です。


JIS規格(JIS C1604)では、Pt100の許容差が以下のように定められています。


クラス 許容差(℃) 用途の目安
クラスA ±(0.15 + 0.002|t|) 精密測定・品質保証記録が必要な工事
クラスB ±(0.3 + 0.005|t|) 一般的な建築設備・養生管理


※t は測定温度の絶対値(℃)


たとえばクラスBのセンサで100℃の測定をすると、許容差は±(0.3+0.5)=±0.8℃になります。一方クラスAでは±(0.15+0.2)=±0.35℃と、約半分の誤差に抑えられます。


コンクリート養生の「5℃以上保持」という基準を守るためには、クラスA相当のセンサを使うことが安全側の管理につながります。クラスBでも一般的な管理には対応できますが、寒中工事や厳格な品質保証が求められる現場ではクラスAの選定が望ましいところです。


また、精度だけでなく「自己加熱(セルフヒーティング)」にも注意が必要です。これは意外と知られていない落とし穴です。測温抵抗体には測定のために微弱な電流を流しますが、このときセンサ自身がわずかに発熱し、測定値に誤差を与えます。JIS規格では規定電流として0.5mA・1mA・2mAを定めており、センサの仕様書に記載された規定電流値を守ることが絶対条件です。


規定電流を超えると発熱量が電流値の2乗に比例して増加します。つまり電流が2倍になると発熱は4倍に跳ね上がります。これは誤った電流値を流した場合、センサが誤った温度を表示するだけでなく、センサ自体の劣化にもつながります。施工前に計測器の仕様とセンサの仕様が合っているか、必ずカタログで確認する習慣をつけましょう。


規定電流の確認は必須です。


参考:JEMIMA(日本電気計測器工業会)温度センサの挿入不足による誤差のFAQ
https://www.jemima.or.jp/tech/file/JEMIMA温度計測のFAQ_温度センサの挿入不足による誤差.pdf


温度計(抵抗温度計)の独自視点——JPt100とPt100の混在が現場でひそかに起こす誤差問題

建築設備の現場では、古い設備から新しいセンサへの交換・流用がよく行われます。ここで見落とされがちな落とし穴が「JPt100」と「Pt100」の混在問題です。これは検索上位の記事でほぼ触れられていない、現場目線の重要トピックです。


Pt100とJPt100は、どちらも0℃のときの抵抗値が100Ωである点は同じです。しかし、温度変化に対する抵抗値の変化率(抵抗比率)が異なります。具体的には以下のとおりです。


規格 0℃での抵抗値 100℃/0℃の抵抗比率 由来
Pt100(現行JIS/IEC準拠) 100Ω 1.3851 1989年JIS改正でIEC規格に統一
JPt100(旧JIS) 100Ω 1.3916 1989年以前の旧JIS規格。1997年に廃止


意外ですね。名前も見た目もよく似ているため、現場では「同じもの」と思い込んでセンサと受信器のJIS規格を混在させてしまうケースがあります。これが何を意味するかというと、たとえば受信器側がJPt100対応のままで現行Pt100センサを接続した場合、温度の読み取り換算式が異なるため、数十℃の使用温度帯では常にずれた値が表示されることになります。


空調の温度制御ループや、設備の異常温度アラームがこのずれによって誤作動・見落としにつながった場合、設備損傷や施工不良の原因になりかねません。古い建物のリニューアル工事・既存設備の増設・改修工事をおこなう際は、既設センサと受信器の規格が一致しているか必ず確認することが重要です。


「JPt100の受信器に、現行Pt100センサを接続する」または逆のパターンも含め、不明なときはセンサと受信器の型番から規格を調べてメーカーのサポートに確認するのが確実です。確認する、それだけで大きな損失を防げます。


また、同様の注意点として、1本の測温抵抗体を複数の計測器に並列で接続しないことも重要なルールです。並列接続すると複数の計測器から同時に電流が流れてしまい、抵抗値が正確に測れなくなります。複数台に同一の測定値を送りたい場合は「ダブルエレメント(2素子)タイプ」を使うのが正解です。


並列接続はダメです。これは配線の基本ルールとして覚えておきましょう。


参考:オムロン FAQサイト Pt100とJPt100の違いについて(規格改正の背景も解説)
https://faq.fa.omron.co.jp/tech/s/article/faq00606




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