

ポリエステル樹脂モルタル材は、セメントと骨材にポリエステル樹脂を組み合わせた樹脂モルタルの一種で、普通モルタルと比べて高い接着力と曲げ強度を持つことが最大の特徴です。 樹脂の効果により乾燥収縮が抑えられ、ひび割れ抵抗性が高まるため、欠損部の補修や断面修復など応力のかかる部位に適した材料として位置付けられています。
また、樹脂を配合することで軽量化が図られ、厚塗りになりがちな断面修復でも天井面や垂直面に施工しやすいというメリットがあります。 普通モルタルは「セメント+砂+水」が基本ですが、ポリエステル樹脂モルタル材は混和材として樹脂が入ることで付着性や耐水性が向上し、コンクリート躯体への食いつきや水回りでの耐久性で大きな差が出ます。mirix+1
さらに、配合はメーカーごとに最適化されており、既調合タイプでは「水または専用液を加えて練るだけ」で所定の性能を確保できるため、現場配合による品質のバラつきも抑えられます。 一方で、樹脂を多く含む分だけ材料単価は普通モルタルより高く、用途や要求性能を見極めたうえで使いどころを絞ることがコスト管理のポイントになります。yabu-sen+1
床の欠損・段差補修にポリエステル樹脂モルタル材を用いる場合、超速硬タイプを選べば施工後数時間で歩行が可能になり、翌日にはフォークリフト走行に対応できる製品もあります。 5〜40mm程度の欠損部の充填や、沈下によって生じた床段差の是正などに適したパッチングモルタルとして各社がラインアップしており、倉庫や工場など稼働を止めにくい現場で重宝されています。
施工手順の基本は、欠損範囲の切り直しと清掃、プライマー塗布、モルタルの充填・均し、養生という流れで、特に開口部のエッジ処理と下地清掃の徹底が寿命を左右します。 超速硬タイプでは温度による硬化時間の変動が大きく、15℃で歩行可能まで8時間、30℃で4時間など、製品ごとの硬化曲線を把握しておかないと開放タイミングを誤るリスクがあります。abc-t+1
また、床補修材として用いる場合は、施工厚と骨材の最大粒径のバランスも重要で、薄塗りにしたいのか、ある程度厚みを持たせてレベル調整をしたいのかによって最適な製品が変わります。 ポリエステル樹脂モルタル材は耐摩耗性や衝撃抵抗にも優れるため、表面に塗床仕上げを重ねる前の下地としてだけでなく、素地仕上げでの使用を前提としたグレードを選ぶケースも増えています。kumazawagiken+2
ポリエステル樹脂モルタル材の性能を発揮させるうえで最も重要なのが下地処理であり、付着不良や剥離の多くはコンクリート表面の清掃不足や含水状態の管理不足に起因しています。 下地に粉塵やレイタンス、油分が残ったまま施工すると、いくら樹脂モルタル自体の接着力が高くても界面での接着破壊が起こりやすく、短期間で浮きが発生する可能性が高まります。
下地コンクリートの含水率にも注意が必要で、表面被覆材と同様に含水が多い状態で樹脂を含む材料を施工すると硬化不良や膨れ、白化などのトラブルの要因になります。 モルタル下地では夏期で2週間以上、冬期で3週間以上、コンクリート下地では4週間以上の養生期間を確保することが推奨されており、さらに水分計を用いて一定以下の水分率であることを確認してから着工するのが安全です。gripcoat+1
付着力を補強するための手段として、ポリマーセメントペーストやプライマーを下地に塗布してからポリエステル樹脂モルタル材を充填する工法も広く採用されています。 目荒らしや既存塗膜の除去、ハンマー打診による浮き範囲確認など、地味な前工程を丁寧に行うことが、結果的には補修回数を減らし、長期的なコスト削減につながる点を現場で共有しておくとよいでしょう。jstage.jst+2
樹脂モルタルにはポリエステル樹脂系のほか、エポキシ樹脂系やアクリル系、エチレン酢酸ビニル系などさまざまな種類があり、ポリエステル樹脂モルタル材はその中でも速硬性や施工性のバランスに優れた位置づけです。 エポキシ樹脂系は防水性・止水性や耐薬品性が高く、垂直面や天井面への厚塗りにも対応しやすい一方で、材料価格が高く硬化後が高剛性になるため、動きの大きい部位ではクラックの発生に注意が必要です。
一方、エチレン酢酸ビニル樹脂モルタルは価格が安くコテ伸びがよい反面、耐水性は他の樹脂系に比べてやや劣るため、恒常的に湿潤となる床や水回りの補修には適さないケースがあります。 ポリマーセメントモルタル(PCM)はセメントに5〜20%程度のポリマーを加えたもので、接着力やひび割れ抵抗が向上し、外壁タイルや屋上防水の下地調整など広範囲に使用されていますが、ポリエステル樹脂モルタル材ほどの速硬性を求めない場面に向いています。nissaren+1
ポリエステル樹脂モルタル材を選ぶ際は、要求される開放時間、下地の状態、上部仕上げの種類(塗床、タイル、防水層など)を整理し、メーカーの技術資料や施工要領書で適用範囲と注意事項を確認することが不可欠です。 特に改修工事では既存仕上げとの相性や既存下地に含まれる水分・油分の影響を評価する必要があり、樹脂モルタル工法に詳しいメーカー担当者や施工会社と事前に協議しておくことで、想定外のトラブルを避けやすくなります。pwrc+3
ポリエステル樹脂モルタル材は「速く固まる補修材」としてだけ認識されがちですが、下地からの水分や油分に対してクッションのような緩和層を形成し、塗床や仕上げ材の耐久性を高める役割も果たします。 下地コンクリートのひび割れや収縮による微細な動きを樹脂モルタル層がある程度吸収することで、表層仕上げへのひび割れ伝播を抑制できる場合があり、単なる「穴埋め材」以上の意味を持つことは意外と知られていません。
一方で、「樹脂モルタルだからどんな下地にもくっつく」という誤解も多く、実際には含水状態の悪い下地や、油分・離型剤がしみ込んだ古い床では期待通りの付着性能が出ないケースが報告されています。 また、速硬タイプだからといって無理に低温時に使用すると硬化遅延や初期強度不足を招くことがあり、温湿度管理や施工時間帯の選定など、コンクリート工事と同様の管理が必要になります。mirix+2
さらに、プレミックスのポリエステル樹脂モルタル材でも「水量はだいたいこのくらい」と現場勘で調整すると、流動性が上がる代わりに強度や付着力が低下し、メーカーの想定性能を満たさなくなる点にも注意が必要です。 技術資料に記載された水量や可使時間、温度別の硬化時間を一度整理して現場で共有しておくだけでも、ムラの少ない安定した補修品質につながっていきます。abc-t+1
ポリエステル樹脂モルタル材の基本性能や下地処理、施工条件の考え方を詳しく解説している技術資料です。
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