prtr制度の対象事業者と届出義務を建築業で確認

prtr制度の対象事業者と届出義務を建築業で確認

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PRTR制度の対象事業者と届出義務を建築業で正しく把握する

塗料を年間1kg以上扱えば、あなたの現場も届出義務が発生します。


📋 この記事の3つのポイント
🏗️
建築業もPRTR制度の対象になる

業種コード「06」に該当する建設業は、従業員数や取扱量によって対象事業者となります。「うちは小さい会社だから関係ない」は危険な思い込みです。

⚖️
届出義務を怠ると罰則がある

虚偽の届出や届出を行わなかった場合、20万円以下の過料が科せられます。知らなかったでは済まないのが法律の現実です。

📝
排出量の計算は「係数」で行う

実測が難しい現場排出量は、環境省が公表する「排出係数」を使って計算できます。正しい方法を知れば、届出書類の作成はそれほど難しくありません。


PRTR制度の対象事業者になる3つの条件とは何か

PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)は、有害な化学物質がどこからどれだけ環境に排出されているかを把握するための仕組みです。事業者が自ら排出量と移動量を計算して国に届け出ることで、行政が全国的なデータを集積し、化学物質管理の向上に役立てています。


では、自分の事業所が対象になるかどうかは何で判断するのでしょうか?


対象事業者になるかどうかは、以下の3つの条件をすべて満たすかどうかで決まります。一つでも外れていれば、届出義務はありません。




















条件 内容
① 業種 政令で定められた対象業種(建設業は業種番号06)に該当すること
② 従業員数 常時雇用する従業員が21人以上であること
③ 取扱量 対象化学物質を年間1トン(特定第一種は0.5トン)以上取り扱っていること


この3条件はすべて「AND条件」です。つまり、従業員が21人以上いても取扱量が1トンに満たなければ対象外ですし、逆に取扱量が基準を超えていても従業員数が20人以下であれば届出は不要です。


建築業で最も見落とされやすいのが「取扱量」の計算です。「使用量=取扱量」と思っている方も多いのですが、実際には購入量や在庫量を含めた年間の取扱量全体で判断します。


取扱量が条件です。製品に含まれる化学物質の量も換算対象になる点は覚えておいてください。


参考:化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の概要について(経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/prtr/index.html


建築業がPRTR制度の対象事業者になる具体的なケース

建築業がPRTR制度と無関係だと思っているとしたら、それは大きな誤解です。建設業は政令第1条に定められた対象業種のひとつであり、業種番号「06」として明確に位置づけられています。


塗装工事や防水工事を日常的に行う現場では、PRTR対象物質が含まれた塗料、シーリング材接着剤有機溶剤が大量に使用されます。代表的な対象物質は以下の通りです。


- 🎨 キシレン(塗料・シンナーに含まれる溶剤)
- 🧪 トルエン(接着剤・防水塗料に含まれる有機溶剤)
- 🔩 エチルベンゼン(塗料・コーティング剤に含まれる成分)
- 🏚️ ホルムアルデヒド(建材・接着剤・塗料の一部に含まれる物質)


年間1トンというと多く聞こえますが、1トン=ドラム缶約5本分です。現場で使う塗料缶を思い浮かべると、大規模な塗装工事が続く年度であれば決して遠い数字ではありません。


「うちは元請けじゃないから関係ない」という声もよく聞きますが、対象の判定は元請け・下請けの区別なく、その事業所で実際に化学物質を取り扱った量で判断されます。下請け専門の塗装業者でも、単独の事業所として従業員21人以上・年間取扱量1トン以上であれば、届出義務が発生します。


これは意外ですね。元請けかどうかは関係ないというのが原則です。


参考:PRTR届出対象事業者の確認方法(環境省)
https://www.env.go.jp/chemi/prtr/about/target.html


PRTR制度の届出方法と排出量の計算手順

対象事業者であると確認できたら、次は届出書類の作成です。届出先は都道府県知事を通じて環境大臣・経済産業大臣となっており、毎年4月1日から6月30日までの間に前年度(4月〜翌3月)の実績を報告する必要があります。


届出が必要な情報は大きく分けて3種類あります。


- 📦 排出量:大気・公共用水域・土壌・埋立への年間排出量
- 🚛 移動量:廃棄物として事業所外に移動した量(廃棄物処理業者への引渡し量など)
- 📊 取扱量:年間を通じた対象化学物質の取扱総量


建築現場での排出量の実測は現実的に難しいケースがほとんどです。そのため、環境省・経済産業省が公表している「排出係数」を使った計算が認められています。


たとえば、キシレンを含む塗料を屋外で塗装した場合、使用量に排出係数(例:大気への排出係数0.5など)を乗じることで排出量を算出します。排出係数は化学物質・作業種別・使用環境ごとに異なるため、該当する係数を選ぶことが計算精度のカギになります。


排出係数を使えば計算できます。実測できなくても届出は十分に可能です。


計算ツールとして、経済産業省・環境省が提供する「PRTRe-シス(電子届出システム)」を活用すると、計算から届出書の作成まで一括で行えます。入力フォームに従って数字を入力していくだけなので、初めての届出でも手順が分かりやすい設計になっています。


参考:PRTR電子届出システム(PRTRe-シス)(経済産業省・環境省)
https://www.prtr-info.jp/esys/


PRTR制度で届出を怠った場合の罰則と建築業での法的リスク

「届出をしなかったら、どうなるのか?」と思う方もいるでしょう。結論は明確です。


化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第23条により、虚偽の届出を行った者、または届出を怠った者には20万円以下の過料が科せられます。過料は刑事罰ではなく行政上の制裁ですが、法人名義での届出義務違反として記録が残り、行政指導の対象にもなります。


実際、環境省は毎年届出データを集計・公表しており、対象事業者リストとの照合チェックも行われています。「どうせバレない」という認識は危険です。


罰則よりも深刻な問題が、社会的信用の損失です。近年、建設業でも環境関連法規の遵守状況がISO14001認証や公共工事の入札審査項目として問われるケースが増えています。PRTR届出違反が発覚した場合、入札資格の停止や取引先との契約解除につながる可能性があります。


法的リスクに加え、経営リスクも大きいということですね。


さらに、特定第一種指定化学物質(発がん性が確認されている物質など)については、基準取扱量が0.5トンと通常の半分に設定されており、見落としが起きやすいポイントです。代表的な特定第一種物質には「クロロホルム」「ジクロロメタン」「ベンゼン」などが含まれており、特殊塗料や剥離剤を使う工事では注意が必要です。



















物質の種類 届出基準取扱量 代表例
第一種指定化学物質 年間1トン以上 キシレン、トルエン、エチルベンゼン
特定第一種指定化学物質 年間0.5トン以上 ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン


参考:化学物質排出把握管理促進法の罰則規定(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000086


建築業が見落としやすいPRTR制度の対象外・免除ケースと実務上の注意点

制度の対象になるかどうかを判断するうえで、「対象外になる条件」も同様に重要です。むしろ、正確に把握していないと「対象外なのに届け出てしまう」あるいは「対象なのに対象外と思い込む」という両方のミスが起きます。


まず、従業員数が20人以下の小規模事業者は、原則として届出義務が免除されます。ただし、これはあくまで「届出義務」の免除であり、SDS(安全データシート)の交付義務や化学物質のリスクアセスメント義務は従業員数に関わらず別途発生します。届出不要=何もしなくていい、ではありません。


次に注意したいのが、複数現場を持つ建設業者の扱いです。PRTR制度では「事業所単位」ではなく「都道府県ごとの集計」で届出を行う点が独特です。複数の都道府県にまたがって現場を持つ場合、それぞれの都道府県ごとに集計・届出が必要になります。


これも見落とされがちな点です。一つの会社でも届出は複数になりえます。


また、建築現場では「資材として購入した製品に含まれる化学物質」と「現場で直接使用する化学物質」の両方を取扱量に含める必要があります。たとえば、揮発性有機溶剤(VOC)を含む塗料を10缶購入して7缶使い3缶を翌年度に繰り越した場合、その年の取扱量は購入量ではなく使用量・在庫変動を加味した量で計算するのが正しい方法です。


実務上、最も確実な方法は「仕入れた製品のSDS(安全データシート)を全品確認し、含有成分を一覧化する」ことです。SDSの16項目のうち「第3項:組成及び成分情報」に対象物質と含有率が記載されています。含有率×仕入れ量で対象物質の取扱量が計算でき、1トン超かどうかの判断が可能になります。


SDSの確認が基本です。メーカーへの問い合わせで最新版を取り寄せることも有効な手段のひとつです。


参考:SDS(安全データシート)の書き方と確認方法(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121.html