

六角レンチの「サイズ表」で最初に見るべき項目は、六角穴に接触する二面幅sです。呼び(例:2.5、3、4…)はこの二面幅s(mm)と同じ値として扱われ、少しでも違うとガタが出て六角穴を傷めます。
JIS B 4648では、二面幅sだけでなく、対角距離e、長柄の長さl1、短柄の長さl2(資料によっては2l表記)なども規定され、サイズごとに「工具として成立する形状」が決まっています。特に建築・設備の現場では、狭所作業でロング形状を選ぶのか、取り回し重視で標準形を選ぶのかで、作業時間と破損率が変わります。
下の表は、現場で出番が多いミリサイズ(1.5~10mm)の「長柄/短柄」目安をまとめたものです(JIS B4648の寸法表に基づく代表値)。
※同じ呼びでも「標準形/M形/L形」で長柄l1が変わるため、セット購入時は形状も確認してください。
| 呼び(mm) | 二面幅s(mm) | 長柄 標準形l1(mm) | 長柄 L形l1(mm) | 短柄l2(mm) |
|---|---|---|---|---|
| 1.5 | 1.5 | 46.5 | 91.5 | 15.5 |
| 2 | 2 | 52 | 102 | 18 |
| 2.5 | 2.5 | 58.5 | 114.5 | 20.5 |
| 3 | 3 | 66 | 129 | 23 |
| 4 | 4 | 74 | 144 | 29 |
| 5 | 5 | 85 | 165 | 33 |
| 6 | 6 | 96 | 186 | 38 |
| 8 | 8 | 108 | 208 | 44 |
| 10 | 10 | 122 | 234 | 50 |
ポイントは「長いほど強い」ではなく、「必要なトルクを“過不足なく”掛けられる長さ」を選ぶことです。ロングは楽に回せますが、結果として過大トルクでねじを痛めるケースもあります。逆に標準やショートは、固着ねじや高トルク管理が必要な箇所では、無理な姿勢で力を掛けて工具破損につながります。
現場の実務では、標準形をベースに、5mm以上はロングも用意、という構成が事故が少ない印象です。
参考リンク(JIS B 4648の寸法表:二面幅s、対角距離e、長柄/短柄長さ、保証トルクの根拠)
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Services/Tech_data/tech13.html
六角レンチ作業で地味に効くのが「どこまで回してよいか」の判断です。感覚だけで本締めすると、ねじ山を傷めたり、六角穴をナメたり、最悪は破断や部材変形につながります。
JIS B 4648の技術資料には、サイズごとの保証トルク(N・m)が掲載されており、例えば呼び2mmで約1.9N・m、呼び5mmで約30N・m、呼び10mmで約220N・mと、サイズが上がると急に増えます。ここを知っていると「レンチがしなる/手が痛い」などの体感が、危険信号として読めるようになります。
建築従事者の現場で実用的な考え方は次の通りです。
メーカー系の解説でも、六角穴の破損を避けるため「奥まで完全に挿入して押し付けながら回す」「パイプで延長しない」などが強調されています。これを守るだけで、ナメ率が体感で大きく下がります。
参考リンク(サイズ表と保証トルク、正しい挿入・回し方、延長禁止など安全上の注意)
https://www.vessel.co.jp/btob/knowledge/3624.html
現場での「サイズ迷い」は、実は六角レンチ自体ではなく、相手(六角穴付ボルト/止めねじ)の呼びと結びつけられていないことが原因になりがちです。
六角レンチのサイズは、六角穴付ボルトの六角穴(二面幅)に合わせるのが基本で、代表的な対応関係はほぼ固定です。例えば、M6の六角穴付ボルトなら呼び5mm、M8なら6mm、M10なら8mm、といった具合に、対応表を見れば即決できます(例外はありますが、まずはこの基本で8割解決します)。
下は、よく使われるミリ側の対応関係の例です(六角穴付ボルト/止めねじの対応表として一般に流通している内容)。
「呼び(Mの数字)=レンチサイズ」ではない点が、初心者がつまずきやすいポイントです。M6に対して“6mmのレンチ”を当てたくなりますが、正しくは5mmというケースが多いので、現場掲示用に対応表を1枚プリントして工具箱に入れておくと効果的です。
また、同じMでも製品規格やシリーズで六角穴寸法が違う場合があるため、怪しいときは必ず現物のフィット感で確認し、ガタがあるならサイズ違い・摩耗・異物を疑ってください。
建築設備や輸入機器、海外製金物が混ざる現場では「ミリと思って差し込んだら入る。でも回すとナメる」という事故が起きます。原因の多くは、ミリとインチの取り違いです。
インチは見た目で判断しづらく、さらに“近いミリ値”が存在するため厄介です。例えば1/8インチは約3.175mmで、3mmに近く見えますが、当然ながら完全一致ではありません。差し込めても接触が甘くなり、トルクを掛けた瞬間に角が崩れやすくなります。
実務で使う「混在回避」のコツは次の通りです。
インチ→ミリ換算表はWebでもすぐ確認できますが、現場では「よく出るインチ」だけ暗記するのが早いです(例:1/16=約1.588、5/64=約1.984、3/32=約2.381、1/8=約3.175、5/32=約3.969、3/16=約4.763、1/4=約6.35)。
特に「5/32≈3.969」は4mmと紛らわしく、六角穴が既に少し傷んでいる個体だと“入ってしまう”ので要注意です。
検索上位は「サイズ表」「対応表」「インチ換算」が中心ですが、現場で本当に困るのは“サイズは合っているのにナメる”パターンです。ここは作業者のクセと工具選定が直結します。
代表的な原因は、①摩耗したレンチ先端、②六角穴内の異物、③浅い差し込み、④ボールポイントでの本締め、の4つです。特にボールポイントは狭所で便利な反面、構造上「点に近い接触」になりやすく、強いトルクを掛けると六角穴側の角が先に負けます(斜め掛けができる=強締め向きとは限りません)。
予防のための具体策を、建築の保全・施工の目線でまとめます。
「サイズ表」を手元に置くのはスタート地点で、事故や手戻りを減らすには、サイズの正確さに加えて“接触状態の再現性”を上げることが重要です。六角穴は一度ナメると復旧コストが跳ね上がるので、違和感が出た時点で止める判断が、結局いちばん速いことが多いです。