サニタリ配管規格の種類と選び方:JIS・ISO・DIN完全ガイド

サニタリ配管規格の種類と選び方:JIS・ISO・DIN完全ガイド

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サニタリ配管規格の基礎知識

サニタリ配管規格の重要ポイント
📏
主要規格の種類

JIS・ISO・DIN・3Aなど国内外の規格が混在

🔧
継手の互換性

規格違いによる段差発生リスクを回避

💰
コスト最適化

適切な規格選択で初期投資と維持費を削減

サニタリ配管規格の種類と特徴

サニタリ配管の規格選定において、まず理解すべきは各規格の基本的な特徴です。日本国内で流通している主要な規格は以下の通りです。

 

JIS G3447(ステンレス鋼サニタリー管)

  • 外径:25.4mm〜165.2mm
  • 呼びはなく、外径と厚さのみで規格化
  • 1S、2S、3Sなどの呼び方で識別
  • 管内外面の研磨処理が標準化

JIS G3459(配管用ステンレス鋼鋼管

  • ガス管サイズに対応(20A、25A、32Aなど)
  • 肉厚が大きく、高圧配管に適用
  • ヘルール継手との接続も可能

IDF/ISO規格

  • 国際酪農連盟と国際標準化機構の共通規格
  • 最も実用的で種類が豊富
  • 1.5インチ以下を除きJISと共通寸法

3A規格(米国サニタリー規格)

  • アメリカで開発された衛生規格
  • 厚さ規定が他規格と異なる場合あり
  • 食品業界で広く採用

DIN規格(ドイツ規格協会規格)

  • ヨーロッパ圏で主流
  • ISO規格との互換性が高い
  • 精密な寸法管理が特徴

これらの規格の中で、日本国内では改正されたJIS G3447:2015が現在の主流となっています。また、IDF/ISO規格も実用性の高さから広く使用されており、継手の種類も豊富です。

 

規格選定の際の注意点として、同じ外径でも内径や肉厚が異なるケースがあります。例えば、外径139.8mmを5S呼びとするメーカーもあれば、5.5S呼びとするメーカーもあり、業界内での統一が完全ではありません。

 

JIS規格とISO規格の寸法比較

サニタリ配管規格選定において最も重要な検討項目が寸法の違いです。JIS規格とISO規格では、同じ呼び径でも実際の寸法が異なる場合があります。

 

寸法比較の具体例

呼び JIS G3447外径(mm) JIS G3447内径(mm) ISO外径(mm) ISO内径(mm)
1S相当 25.4 23.0 25.4 23.2
2S相当 50.8 47.8 51.0 48.0
3S相当 76.3 72.3 76.1 72.1

この寸法差は、継手選定時に重要な影響を与えます。特に、異なる規格の配管を接続する際は、内部に段差が生じる可能性があり、これは衛生面で致命的な問題となります。

 

肉厚の違いによる影響
JIS G3447では比較的薄肉設計となっており、軽量化と分解作業の容易性を重視しています。一方、JIS G3459(ガス管サイズ)は肉厚が大きく、高圧用途に適しています。

 

  • JIS G3447:1.2mm〜3.0mm(軽量・衛生重視)
  • JIS G3459:2.1mm〜3.4mm(強度重視)
  • ISO規格:1.0mm〜3.2mm(バランス型)

この肉厚の違いは、使用圧力や流体の種類によって選択基準となります。食品工業では軽量性を重視してJIS G3447を、医薬品工業では耐圧性を重視してJIS G3459を選択するケースが多く見られます。

 

内径サイズの対応範囲
各規格で対応している内径サイズ範囲も大きく異なります。IDFの最小1S規格では内径23mmですが、ISOの最小6A規格では内径8.1mmと、小径配管での選択肢に差があります。大径配管においても、最大値が規格により異なるため、設計段階での規格選定が重要です。

 

サニタリ配管継手の選び方

サニタリ配管システムにおいて、継手の選択は配管本体と同等かそれ以上に重要です。継手部分は分解・洗浄の頻度が高く、衛生管理の要となる部分だからです。

 

ヘルール継手の特徴
ヘルール継手は、サニタリ配管で最も一般的に使用される継手です。

 

  • フランジ面の段差をなくし、デッドスペースを最小化
  • ガスケット交換が容易で保守性が高い
  • クランプによる締付けで分解・組立が簡単
  • 高い密封性能を確保

ヘルール継手の選定では、配管規格との適合性が最優先となります。JIS G3447用とJIS G3459用では、同じ外径でも微細な寸法差があるため、専用設計の継手を使用する必要があります。

 

サニタリーネジ継手の用途
ヘルール継手と並んで使用されるのがサニタリーネジ継手です。

 

  • 小径配管で威力を発揮
  • 振動の多い箇所に適用
  • 配管の固定が確実
  • 分解頻度の低い箇所に最適

ネジ継手選定時の注意点として、ネジピッチの違いがあります。メートルネジとインチネジが混在している場合があり、規格書の確認が必須です。

 

継手材質の選定基準
継手材質は配管材質と同等以上の耐食性が求められます。

 

  • SUS304:一般食品用途
  • SUS316L:医薬品・化学薬品用途
  • SUS316:高温・高濃度用途

特に、電解研磨処理された継手では、表層のクロムリッチ層により従来比約10倍の不動態層が形成され、金属溶出を大幅に抑制できます。これは医薬品製造や半導体製造において重要な要件となります。

 

規格間互換性の確認方法
異なる規格の継手を使用する場合、以下の点を確認する必要があります。

  • フランジ面の寸法適合性
  • ガスケット溝の深さと幅
  • 締付けトルクの規定値
  • 使用可能圧力範囲

実際の現場では、200Aなどの大口径や8A、10A、15Aの小口径では専用クランプが必要となるケースもあり、事前の詳細確認が重要です。

 

サニタリ配管表面処理の重要性

サニタリ配管の性能を左右する重要な要素の一つが表面処理です。表面処理の品質は、洗浄性、耐食性、そして最終的な製品品質に直接影響を与えます。

 

バフ研磨の特徴と限界
バフ研磨は物理的研磨による従来的な表面処理方法です。

 

  • 綿布やフェルトのバフに研磨剤を付けて機械研磨
  • 比較的低コストで実施可能
  • 目視での仕上がり確認が容易

しかし、バフ研磨には重要な問題点があります。

  • 微細なバリや傷が残存
  • パーティクルの付着リスク
  • 滞留物による雑菌繁殖の可能性
  • 再現性の確保が困難

これらの問題は、食品や医薬品製造において品質トラブルや安全性問題に直結する可能性があります。

 

電解研磨の優位性
電解研磨は電気化学的な表面処理方法で、サニタリ配管では標準的な処理となっています。

 

  • 電解反応により金属表面を均一に溶解
  • バフ研磨後の微細凹凸を完全に除去
  • 平滑化・鏡面化を同時に実現
  • 再現性の高い品質管理が可能

電解研磨の化学的効果として、ステンレス表面のFeとNiを溶解し、表層にクロムリッチな層を形成します。これにより耐食性が大幅に向上し、金属イオンの溶出も抑制されます。

 

高度な表面処理技術
最新の表面処理技術では、電解研磨後に熱処理を組み合わせることで、さらに高い性能を実現しています。

 

  • 表層の鉄酸化層と下層のクロム酸化層の厚み増加
  • 一般電解研磨比約10倍の不動態層形成
  • 金属溶出の大幅抑制
  • 長期安定性の向上

この処理は特に医薬品製造や半導体製造において、厳格な品質基準をクリアするために不可欠となっています。

 

表面粗度の管理基準
サニタリ配管の表面粗度は、用途により異なる基準が設定されています。

 

  • 内面:Ra≦1.0μm(#320〜400相当)
  • 外面:Ra≦2.5μm(#320〜400相当)
  • 溶接部:内径部ビード処理により同等仕上げ

これらの基準値は、洗浄効果と製品品質の両立を図るために設定されており、定期的な測定による品質管理が重要です。

 

サニタリ配管規格選定のコスト比較

サニタリ配管システムの総保有コスト(TCO)を最適化するためには、初期投資だけでなく運用・保守コストを含めた総合的な評価が必要です。各規格により異なるコスト構造を理解することで、最適な選択が可能となります。

 

初期投資コストの比較
各規格の材料コストには明確な差があります。

 

  • JIS G3447:国内標準規格のため調達性が高く、比較的低コスト
  • IDF/ISO規格:種類豊富で競争が激しく、中程度のコスト
  • DIN規格:輸入品が中心となり、やや高コスト
  • 3A規格:特殊用途向けで最も高コスト

継手コストについても同様の傾向があり、特にヘルール継手では規格により2-3倍の価格差が生じる場合があります。ただし、継手の品質や精度も価格に比例する傾向があるため、単純な価格比較だけでは適切な判断ができません。

 

運用コストの詳細分析
運用段階でのコスト差は、主に以下の要因により発生します。

  • 分解・組立作業時間の違い
  • ガスケット交換頻度の差
  • 洗浄剤使用量の違い
  • 保守部品の調達コスト

軽量設計のJIS G3447は分解・組立作業が容易で、作業時間を30-40%短縮できます。これは年間保守作業において大きなコスト削減効果をもたらします。

 

保守性による長期コスト
各規格の保守性は、設計思想の違いにより大きく異なります。
高保守性規格(JIS G3447、IDF/ISO)

  • 薄肉設計による軽量化
  • 工具なしでの分解が可能
  • ガスケット交換が容易
  • 標準部品の流通性が高い

高耐久性規格(JIS G3459、DIN)

  • 厚肉設計による高強度
  • 高圧・高温条件に対応
  • 交換頻度が低い
  • 専用工具が必要な場合あり

用途に応じた適切な選択により、15-20年の運用期間で総コストに2倍以上の差が生じる場合があります。

 

将来性とアップグレード性
規格選定において見落とされがちなのが、将来のシステム拡張やアップグレード性です。

  • 新規格への対応性
  • 自動化システムとの親和性
  • IoT対応センサーとの互換性
  • 国際展開時の規格統一性

特に、Industry 4.0やIoT化の進展により、センサー内蔵型継手や遠隔監視システムとの連携が重要になっています。この観点では、国際規格であるIDF/ISOやDIN規格が有利となる場合があります。

 

最適化のための選定フローチャート
実際の規格選定では、以下の優先順位で検討することを推奨します。

  1. 用途・業界基準の確認(食品/医薬品/化学)
  2. 技術要件の整理(圧力/温度/流体特性)
  3. 初期投資予算の設定
  4. 運用・保守体制の評価
  5. 将来拡張計画との整合性確認

これらの要素を総合的に評価することで、単なる価格競争ではない、真の意味でのコスト最適化が実現できます。特に、運用開始後のランニングコストは初期投資を上回る場合が多いため、TCOベースでの比較検討が重要です。