

試験の種類を間違えると、設計強度が最大で30%以上ズレて手戻り工事が発生することがあります。
三軸圧縮試験は、大きく分けてUU試験(非圧密非排水)・CU試験(圧密非排水)・CD試験(圧密排水)の3種類があります。この3つの違いは「排水条件」と「圧密の有無」にあり、これが使い分けの核心です。
UU試験は、供試体を圧密させずそのまま非排水条件でせん断する試験です。短時間施工や急速盛土など、間隙水圧が消散する暇がない施工場面に対応します。飽和粘性土の即時安定解析に使われることが多く、φ=0解析(φu=0)との組み合わせが基本です。
CU試験は、いったん圧密させてから非排水条件でせん断します。圧密後に急速荷重が加わるケース、たとえば圧密が完了した地盤への急速載荷時の安定解析に用います。間隙水圧を計測するCU̅試験(バー付き)と組み合わせると、有効応力解析も可能になります。
CD試験は、圧密後に排水条件でゆっくりせん断する試験です。長期安定解析や緩速施工時の解析に使います。ただし試験時間が長くなる点が実務上のネックで、砂質土の排水強度定数を求める場面で特に活用されます。
つまり「速い施工=UU」「圧密後の急速載荷=CU」「ゆっくり施工・長期安定=CD」が判断の原則です。
| 試験種別 | 圧密 | 排水 | 主な用途 |
|----------|------|------|---------|
| UU試験 | なし | なし | 急速施工・即時安定 |
| CU試験 | あり | なし | 圧密後の急速載荷 |
| CD試験 | あり | あり | 長期安定・緩速施工 |
排水条件の選択は、地盤の透水性と施工速度のバランスで決まります。これが実務で最も迷いやすいポイントです。
粘性土(透水係数 k=10⁻⁷cm/s以下)は、施工中に間隙水圧がほとんど消散しません。そのため急速施工ではUU試験の結果をもとに設計するのが原則です。反対に透水性の高い砂質土(k=10⁻²〜10⁻³cm/s程度)では、施工中でも排水が進むためCD試験が適合します。
問題になりやすいのは、粘性土と砂質土が互層になっているケースです。この場合、どちらの強度定数を使うかで安全率の計算値が大きく変わります。地盤調査報告書の粒度分析や透水試験の結果を確認してから試験種別を選ぶことが、実務上の正しい手順です。
施工速度については、一般的に1日あたりの盛土速度が20cm以下なら排水が期待できるとされており、UUではなくCU・CD選択の検討域に入ります。逆に1日50cm以上の急速盛土では、間隙水圧の消散を期待できないためUU試験が安全側の選択になります。
透水係数の判断には、ボーリング孔内での現場透水試験(ルジオン試験・揚水試験など)の結果も参照すると精度が上がります。これは使えそうです。
三軸圧縮試験の最終的な目的は、粘着力 c(コヒージョン)と内部摩擦角 φ(ファイ)の2つの強度定数を求めることです。この2つの値が地盤の「せん断強度」を表し、斜面安定・基礎設計・土圧計算のすべての基盤になります。
試験で得られる応力円(モールの応力円)を複数描き、その共通接線を引くことで c と φ を求めます。接線の傾きが φ、縦軸との切片が c です。せん断試験は最低3点の応力条件で実施するのが一般的で、それ未満だと誤差が大きくなるため注意が必要です。
UU試験では全応力表示のパラメータ(cu、φu)が得られ、CU試験やCD試験では有効応力パラメータ(c'、φ')も算出できます。長期的な設計に有効応力解析を使う場合は、CU̅試験で間隙水圧を計測することが必要です。有効応力解析が条件です。
設計への反映では、斜面安定解析(Bishop法・Fellenius法など)に強度定数を入力します。この際、UU試験結果を長期安定解析に誤用してしまうと、実際より強い強度が出て危険側の設計になる恐れがあります。試験種別と解析手法の対応が原則です。
参考:公益社団法人地盤工学会による三軸圧縮試験の規格・解説(JGS 0520〜0524)
公益社団法人 地盤工学会 公式サイト(試験規格・技術資料の参照元)
現場では三軸圧縮試験以外にも、一軸圧縮試験(qu試験)や一面せん断試験が使われます。どの試験を選ぶかは、コスト・精度・地盤条件の3軸で判断することになります。
一軸圧縮試験は拘束圧がゼロの状態でせん断するため、サンプリングの品質が結果に直結します。費用は三軸試験より安価(1供試体あたり3,000〜5,000円程度)ですが、砂質土・礫質土には適用できません。飽和粘性土のスクリーニング的な強度把握には向いている一方、設計用の強度定数としての精度は三軸試験に劣ります。
一面せん断試験は、すでに破壊面が決まっている地盤(既存の弱面・断層・薄層など)の残留強度を求めるときに使います。三軸試験では破壊面を強制できないため、既存弱面の評価には一面せん断試験が有利です。こちらも試験費用は比較的安価です。
三軸圧縮試験は費用が1供試体あたり1万〜3万円程度と高めですが、拘束圧を変えて複数条件で試験できるため、強度定数の信頼性が最も高くなります。設計に直接使う値を求めるなら三軸試験が基本です。
| 試験 | 費用目安(1供試体) | 適した地盤 | 強度定数の精度 |
|---|---|---|---|
| 一軸圧縮試験 | 3,000〜5,000円 | 飽和粘性土 | 低〜中 |
| 一面せん断試験 | 5,000〜1万円 | 薄層・弱面 | 中(残留強度向き) |
| 三軸圧縮試験 | 1万〜3万円 | 粘性土・砂質土 | 高 |
予算が限られている現場では、まず一軸圧縮試験で傾向をつかみ、重要断面の設計には三軸試験を使うという段階的アプローチが現実的な選択肢になります。
試験の種類選びに意識が向きがちですが、実は供試体の採取品質が試験精度を大きく左右します。これは意外ですね。
三軸試験の結果は、供試体に含まれる乱れの程度によって最大で20〜40%の強度差が生じることがあります(地盤工学会の調査事例より)。特にサンプリング時の押し付け・引き抜き動作が速いと、粘性土の構造が壊れてしまい、実際より低い強度値が出てしまいます。
高品質なサンプリングには、薄肉固定ピストン式シンウォールサンプラー(シェルビーチューブ)の使用が推奨されています。N値2以下の軟弱粘性土では、ロータリー式二重管サンプラーを使うケースもあります。どちらを選ぶかは地盤の硬さと試験の目的で変わります。
採取後の試料の運搬・保管も重要で、試料が乾燥・振動・温度変化にさらされると構造が変化します。現場から試験室への輸送は衝撃吸収材で保護し、試験まで密封・冷暗所保管が原則です。
設計の信頼性は「試験種別の選択」と「サンプリング品質」の両方で決まります。試験の種類だけ合っていても、供試体が乱れていれば正確な強度定数は出ません。どちらも条件です。
実務では、地盤調査会社への発注時に「乱れの少ない試料採取」を明示して依頼することで、このリスクを大幅に下げることができます。調査仕様書の段階で採取方法を指定するのが確実な手順です。
参考:国土交通省「地盤調査の方法と解説」に関する技術資料(試料採取・試験法の参照)
国土交通省 都市局 地盤・地質関連技術資料ページ(地盤調査・土質試験の技術的背景)