

三軸圧縮試験だけを選べば一軸より必ず精度が高い、と思っているなら施工判断で数十万円の手戻りが起きるかもしれません。
一軸圧縮試験(Unconfined Compression Test)は、試料に側圧(拘束圧)を与えずに上下方向のみから圧縮荷重をかけて、土の強度を測定する方法です。
試験手順はシンプルで、直径35mm・高さ70~80mm程度の円柱状試料を作成し、ひずみ速度1%/分の条件で軸方向に圧縮していきます。試料が破壊したときの最大応力を「一軸圧縮強さ(qu)」と呼び、この値を用いて非排水せん断強さ(Cu)を求めます。Cu = qu/2 という関係式が基本です。
一軸圧縮試験は粘性土(粘土・シルト)を対象とした試験です。これが重要なポイントです。砂質土は側圧なしでは試料が崩れてしまうため、原則として一軸圧縮試験は適用できません。
試験コストは1試料あたり約5,000〜10,000円が相場で、三軸圧縮試験と比較すると費用を抑えられます。また装置も小型で操作が比較的容易なため、多くの現場ボーリング調査に組み込まれています。
結果はシンプルに一軸圧縮強さとして出てきます。
ただし「拘束なし」という条件が実際の地中の応力状態とは大きく異なるため、地盤の実態を厳密に反映していない場合があることも理解しておく必要があります。例えば深度10m以深の粘性土を一軸圧縮試験だけで評価すると、実際の強度を低く見積もりすぎるリスクがある、という研究報告もあります。
参考リンクとして、日本産業規格(JIS A 1216)に一軸圧縮試験の詳細規定が定められています。
JIS A 1216:土の一軸圧縮試験方法(日本産業標準調査会)
三軸圧縮試験(Triaxial Compression Test)は、円柱状の試料を円筒セル内に設置し、側面から水圧(セル圧)を与えることで地中の応力状態を再現しながら軸方向の圧縮強度を測る試験です。
つまり実際の地盤環境に近い。これが三軸圧縮試験の最大の強みです。
試験によって得られるのは「c(粘着力)とφ(内部摩擦角)」の2つのパラメータで、モール・クーロンの破壊規準に基づいてせん断強度を表します。せん断強度τ = c + σ tanφ という式を用いた斜面安定計算や基礎の支持力計算に直結するパラメータが手に入ります。
三軸圧縮試験には代表的な3つの試験タイプがあります。
費用は1セット(拘束圧3段階)で約30,000〜80,000円が一般的で、一軸圧縮試験の数倍のコストになります。コストが高めですね。
しかし、斜面の安定計算や軟弱地盤の圧密沈下計算、液状化判定では三軸圧縮試験のパラメータが必須とされており、一軸圧縮試験だけでは設計要件を満たせない場面が多くあります。適切な判断が求められます。
地盤工学会:土質試験に関する技術資料・基準類(地盤工学会公式サイト)
この2つの試験の違いを整理しておくと設計判断がスムーズです。
まず最も根本的な違いは「拘束圧の有無」です。一軸圧縮試験は側圧ゼロで軸圧縮のみ、三軸圧縮試験は側圧(拘束圧)をかけながら軸圧縮する、という試験条件の違いがすべての結果の差を生んでいます。
| 比較項目 | 一軸圧縮試験 | 三軸圧縮試験 |
|---|---|---|
| 拘束圧 | なし(σ3 = 0) | あり(σ3 > 0) |
| 対象土質 | 粘性土(粘土・シルト) | 粘性土・砂質土・砂礫 |
| 得られるパラメータ | qu(一軸圧縮強さ)、Cu | c(粘着力)、φ(内部摩擦角) |
| 試験タイプ | 1種類 | UU・CU・CD の3種類 |
| 試験費用(目安) | 5,000〜10,000円/試料 | 30,000〜80,000円/セット |
| 試験時間 | 数十分〜1時間程度 | 数時間〜数日(タイプによる) |
| 現場への適用 | 簡易評価・品質管理 | 詳細設計・斜面安定・液状化 |
| 試料の崩れリスク | 砂では崩れる(不適) | 拘束圧により安定保持 |
これが基本の整理です。
この表からわかるように、試験の選択を誤るとそもそも必要なパラメータが取れません。たとえば「斜面の安定計算にφ(内部摩擦角)が必要なのに一軸圧縮試験だけ発注した」という事例では、後から三軸圧縮試験を追加発注することになり、試験費用と工程が二重にかかったケースが現場では報告されています。痛いですね。
発注前に設計担当と「何の計算に使うか」「どの土質か」を確認するだけで、こうしたロスは防げます。確認ステップを1つ踏むだけで回避できるリスクです。
試験の使い分けは「土質」と「何を設計するか」の2軸で考えるのが原則です。
粘性土(粘土・シルト系)の地盤で、地盤の支持力概算や改良地盤の品質管理が目的であれば、一軸圧縮試験で十分対応できます。改良地盤の一軸圧縮強さの管理基準としては、セメント系固化処理土でqu ≧ 200kN/m² といった基準値が設計仕様書に明記されることが多く、この確認には一軸圧縮試験がそのまま使われます。
一方、以下のような場面では三軸圧縮試験が必要です。
判断に迷ったら設計目的を確認するだけでOKです。
一つ意外な落とし穴として知っておいてほしいのが、「軟弱粘性土でもUU試験よりCU試験の結果が使われるケース」です。深度が深く、背圧をかけて飽和させた条件でないと信頼性が落ちるケースがあるためで、特に護岸工事や港湾工事では「UU試験ではなくCU試験を用いよ」と仕様書で明記されることがあります。仕様書の確認が基本です。
地盤工学会の「土質試験の方法と解説」では、試験選定の考え方について詳細なフロー図が掲載されており、発注前のチェックリストとして活用できます。
地盤工学会:土質試験の方法と解説(試験選定フロー掲載・地盤工学会出版物)
試験を実施した後に「結果の数字をどう読むか」で設計品質が変わります。これはあまり語られない視点です。
一軸圧縮試験の結果表には通常、応力〜ひずみ曲線と最大応力(qu)、破壊時の軸ひずみ(εf)が記載されています。ここで注目すべきは「ピーク後の強度低下の形」です。ブリトル(脆性)破壊の場合はピーク直後に急激に応力が落ち、ダクタイル(延性)破壊の場合は緩やかに推移します。
ブリトル破壊の場合は残留強度も考慮した設計が求められます。
特に過圧密粘土や一部の改良地盤では、qu値だけを見て安心していると、施工後に一部ひび割れや局部破壊が生じるケースがあります。現場では「数字は合格だったのに割れた」という経験をした方も多いのではないでしょうか。
三軸圧縮試験の結果に関しては、モール円を描いた際の「接線の傾き(φ)」と「縦軸の切片(c)」の両方を設計に使いますが、どのモール円が異常値かを判断することが現場技術者の腕の見せどころです。3段階の拘束圧での破壊点がきれいに直線上に乗っていない場合、試料の乱れや飽和不足を疑う必要があります。
試料の乱れは結果を大きく変えます。
ボーリングサンプリング時の「乱れ度」を示す指標として感度比(St = qu/qu')があります。St = 2〜4 で「中感度」、St > 8 で「高感度」とされ、感度比が高い粘土(クイッククレイなど)では、一軸圧縮試験の結果だけを設計値とすることへのリスクがあります。特に北海道や東北の海成粘土系地盤では感度比が高い場合があり、設計者はサンプリング品質の確認と三軸圧縮試験の組み合わせ判断が重要です。
結果の数字だけでなく曲線の形を読む習慣が、設計の精度を上げるポイントです。
試験結果のレビューには「土質試験結果の整理と解釈」に関する地盤工学会の技術資料が参考になります。
試験コストの最適化も、建築業従事者にとって重要な視点です。
一軸圧縮試験は前述の通り1試料あたり5,000〜10,000円程度ですが、三軸圧縮試験は試験タイプと拘束圧の段階数によって大きく変わります。一般的にはCU試験(拘束圧3段階)で30,000〜50,000円、CD試験では試験時間が長くなるため50,000〜80,000円以上になることもあります。
コストだけで選ぶと必要なパラメータが取れなくなります。
発注時に確認すべき主なポイントは以下の通りです。
特に「地盤改良後の品質確認」で一軸圧縮試験を使う場合、改良体の養生期間(通常28日)を経た後の試料で試験するのが原則です。7日強度だけで判定していると、最終的な強度確認が漏れるリスクがあります。養生期間の管理は必須です。
また、国土交通省の「地盤調査の方法と解説」(地盤工学会編)では、各試験の適用条件と選定基準が整理されており、発注仕様書の作成に役立ちます。
国土交通省:地盤に関する技術基準・調査資料(国土交通省公式サイト)
試験の目的・土質・コスト・規格の4点を発注前に整理する習慣が、設計品質と現場トラブルの両方を防ぎます。これが発注の基本です。