

粒径が同じ砂でも、透水係数は現場によって10倍以上ズレることがあります。
透水係数(記号:k)とは、土や地盤が水をどれだけ通しやすいかを数値化した指標です。単位は「cm/sec」または「m/s」で表され、この値が大きいほど水が通りやすく、小さいほど水が通りにくい地盤ということになります。
透水係数は、土木・建築の現場では排水計画・雨水浸透設計・根切り工事の地下水対策など、さまざまな場面で使われます。これを理解せずに設計を進めると、ディープウェルの本数不足や浸透施設の機能不足につながる危険があります。
透水係数の基礎となる式が「ダルシーの法則」です。式はシンプルで、
$$Q = k \cdot i \cdot A$$
と表されます。Qは流量(cm³/sec)、kは透水係数(cm/sec)、iは動水勾配(水頭差÷距離)、Aは断面積(cm²)です。つまり、透水係数が2倍になれば流量も2倍、10倍になれば流量も10倍になります。これが、排水計画における透水係数の信頼性が非常に重要な理由です。
透水係数と流量の関係は次の通りです。
- 透水係数が大きい(例:砂・礫) → 地下水が速く流れ込む → 掘削時に大量の排水が必要
- 透水係数が小さい(例:粘土) → 地下水の移動が遅い → ゆっくりと圧密・沈下が進む
透水係数が原則です。地盤の挙動を読むうえで、この数値を軽視するとコスト超過やトラブルに直結します。
土の透水性は、土粒子の間にある「間隙(かんげき)」を水が通ることで生まれます。間隙比(土粒子の体積に対する間隙の体積の割合)が大きいほど透水係数も大きくなります。また、水温にも左右されます。水温が高いと水の粘性が下がるため水が通りやすくなり、透水係数は大きくなります。現場透水試験の結果は水温15℃に補正するのがルールです。
水温が違うだけで透水係数の値がズレる、ということですね。
透水係数とは?意味、土質区分と目安、求め方をわかりやすく解説|建築構造がわかるサイト
透水係数の目安は、土の種類(土質区分)によって大きく異なります。建設現場でよく参照される「道路土工 排水工指針」(国土交通省)に記載されている代表的な概略値は次の通りです。
| 土質区分 | 透水係数(cm/sec) | 透水性の特徴 |
|---|---|---|
| 礫(れき) | 10⁻¹以上 | 非常に高い |
| 砂 | 10⁻³〜10⁻¹ | 高い |
| 砂質土 | 10⁻⁵〜10⁻³ | 中程度 |
| 粘質土 | 10⁻⁷〜10⁻⁵ | 低い |
| 粘土 | 10⁻⁷以下 | 非常に低い |
数字だけだとイメージしにくいので、具体的な感覚で説明します。透水係数10⁻¹cm/secの礫地盤は、1秒間に1mm近い速さで水が移動するイメージです。一方、粘土の10⁻⁷cm/secは、同じ1秒間に0.001マイクロメートルほど、ほぼ動かないに等しいレベルです。
つまり礫と粘土では、透水のしやすさが100万倍以上違うということですね。
この差が、現場での排水計画の難易度に直結します。砂礫地盤では掘削直後から大量の地下水が湧き出すため、釜場排水や専用ポンプの計画が不可欠です。一方、粘土地盤では急激な浸水は少ないものの、長期的な圧密沈下が問題になります。
さらに詳細な推定値を知りたい場合は、「クレーガーの透水係数推定表」が実務でよく使われます。これは粒度試験から得られる「D20(通過重量20%に相当する粒径)」と透水係数の関係を示した表で、例えば。
- D20=0.10mm → k≒1.75×10⁻³cm/sec(極微粒砂)
- D20=0.25mm → k≒1.40×10⁻²cm/sec(細粒砂)
- D20=0.50mm → k≒7.50×10⁻²cm/sec(中粒砂)
- D20=1.00mm → k≒3.60×10⁻¹cm/sec(粗粒砂)
といった具体的な数値が得られます。ただし、クレーガー法はあくまで「参考値」であり、信頼性は室内透水試験<単孔式透水試験<揚水試験の順で高くなります。これは原則です。
特に注意したいのが、砂礫地盤のマトリクス(粒子間を埋める細粒分)の存在です。D20は礫の粒径を見てしまいがちですが、透水係数はマトリクスとなる細粒土の性質に支配されることがあります。見た目は礫でも、細粒分が多ければ実際の透水係数はずっと小さくなります。意外ですね。
透水係数の推定早見表(クレーガーによるD20と透水係数の関係)|道路技術者支援ブログ
透水係数の求め方には、大きく「室内試験」と「現場(原位置)試験」の2種類があります。いずれを選ぶかは、対象地盤の土質と透水係数の大小によって決まります。
まず室内試験について整理します。室内試験には「定水位透水試験」と「変水位透水試験」があります。
定水位透水試験は、透水性の高い砂質土〜礫質土に使います。給水を続けて水頭差Hを一定に保ちながら、一定時間Qの流量を測定し、次の式で透水係数を算出します。
$$k = \frac{Q \cdot L}{H \cdot A \cdot t}$$
Qは流量、Lは供試体の長さ、Hは水頭差、Aは断面積、tは時間です。
変水位透水試験は、透水性の低い粘性土〜細粒砂に適用します。注水後に水頭が自然に下がっていく速さから透水係数を逆算します。
切り分けの目安は、透水係数k=10⁻⁴cm/s(あるいはm/s表記では10⁻⁶m/s)です。これが境界値です。
- k>10⁻⁴cm/s → 定水位透水試験
- k<10⁻⁴cm/s → 変水位透水試験
次に現場透水試験について説明します。現場透水試験は、ボーリング孔を使って地盤の透水係数を直接測定する方法で、乱れのない状態の地盤を評価できるため室内試験より信頼性が高いとされます。
一般的に多く実施されるのが「JGS1314 単孔を利用した透水試験方法」です。この試験には定常法(定水位法)と非定常法(変水位法)があり、対象地層の透水性によって使い分けます。定常法は透水係数10⁻³〜10⁻⁵の範囲に適し、10⁻⁴より低い場合は非定常法(スラグ試験)が有効です。
現場透水試験の注意点として見落とされがちなのが「自記水位計のセンサー選択」です。センサーには10m計・20m計などの計測範囲があり、水位変化が大きい透水性の高い地盤では誤差が生じます。これは実務でよくある落とし穴なので覚えておけばOKです。
また、2018年には「JGS1319 地下水面より上の地盤を対象とした透水試験方法」が新たに規定されました。従来の基準は地下水面以下の飽和地盤を対象としていましたが、雨水浸透設計や斜面崩壊検討など、地下水面より上の地盤を対象とした評価ニーズが増えたため制定されたものです。基準の適用範囲が年々変化している分野ですので、最新の地盤工学会基準を確認することをお勧めします。
現場透水試験の調査手法の選び方(定常法・非定常法の比較)|地盤工学会 中国支部
透水係数の目安を正しく把握することで、現場の排水設計や雨水浸透施設の計画精度が大きく変わります。ここでは実務で直結する2つの応用場面を整理します。
① 根切り工事・地下水対策への活用
根切り工事で地下水が多量に湧き出すかどうかは、その地盤の透水係数に左右されます。透水係数が砂の範囲(10⁻³〜10⁻¹cm/sec)の地盤では、掘削開始直後から地下水の流入が始まるため、ディープウェルやウェルポイントなどの地下水位低下工法の計画が必須です。
特に重要な点があります。ディープウェルの計算では、透水係数が2倍違うと必要本数も約2倍、10倍違えば必要本数も約10倍変わります。粒度試験(D20)だけで推定した概略値をそのまま設計に用いると、本数不足で排水が追いつかないリスクが生じます。実施工段階では、ディープウェル概略計算に加えて揚水試験を実施し、透水係数の実測値で設計をやり直すことが安全サイドの対応です。
揚水試験が必須です。
また、建築工事では「支持層探し(標準貫入試験)」を目的とした調査が多く、粒度試験が実施されていないケースも少なくありません。そのような場合、透水係数は現地観察と施工実績から推測するしかなく、信頼性が低い状態での排水計画になりがちです。地下水が関係する工事では、必要に応じて現場透水試験の追加を施主と協議するプロセスが重要です。
② 雨水浸透施設・透水性舗装の設計
透水ますや浸透トレンチなどの雨水浸透施設を設計する際には、設置場所の地盤の「飽和透水係数」が計算の基礎になります。多くの自治体指針では、現地浸透試験を実施して飽和透水係数を実測することを標準としており、過去データによる推定値の利用は条件付きで認められる形です。
透水性舗装(透水性アスファルト)の設計では、舗装体自体の透水係数として1×10⁻¹cm/sec以上が求められます。歩道用舗装に求められる透水係数の基準値は0.01cm/secとされており、新設直後の透水性舗装はこれを大幅に上回る性能を持ちます。
ただし、経年劣化には注意が必要です。透水性舗装は目詰まりにより、施工後2〜3年で基準値を下回るケースが報告されています。これは痛いですね。維持管理の計画段階で、高圧洗浄による機能回復作業を定期的に組み込んでおくことが、長期的なコスト節約につながります。
雨水浸透を考慮した透水性舗装の実用化に関する基礎的研究(透水性能の経年変化データあり)
ここでは、検索上位ではあまり語られない現場視点の話をします。
透水係数の目安を使う際、多くの技術者は「土質区分を見てその範囲の値を使えばよい」と考えがちです。しかし実際には、同じ「砂」であっても現場によって透水係数が1〜2桁変わることがあります。これが落とし穴になります。
その主な原因は以下の3点です。
① 細粒分の混入量
砂質土に粘土やシルト分が混入していると、透水係数は大幅に低下します。細粒分含有率が15%を超えると、砂の透水係数の目安(10⁻³〜10⁻¹cm/sec)から外れることが実験でも確認されています。クレーガー法(D20による推定)は、細粒分をほとんど含まないきれいな砂質土を前提としているため、混合土質には適用限界があります。
② 間隙比(締まり具合)の違い
同じ土質区分でも、地盤の締まり具合(密度)によって透水係数は変わります。N値が高く締まった砂は、間隙が少なく透水係数が小さめになる傾向があります。つまり、同じ「中粒砂」でも緩い砂と締まった砂では挙動が変わるということですね。
③ 水温の影響
透水係数は水温15℃を基準として算定するルールですが、真冬の現場では水温が5℃前後まで下がることがあります。水温が低いと水の粘性が上がり、透水係数は見かけ上小さく出ます。逆に夏の高温時は透水係数が大きめに出る傾向があります。季節をまたいで試験するプロジェクトでは、この補正を必ず確認することが条件です。
また、現場でよく見られる「目視だけで土質を判断して透水係数を推定する」というやり方は、信頼性が低い方法に分類されます。特に混合土や互層地盤では、ボーリングコアの記録と粒度試験結果を必ず照合したうえで透水係数を判断する習慣を持つことが大切です。
粒径だけで透水係数を判断するのはダメです。
地盤調査報告書に透水係数の記載がない場合でも、粒度試験結果(D20)さえあればクレーガー表から概略値を読み取ることができます。信頼性は参考値程度ですが、事前検討の段階で活用する分には有効です。その際は「試験値ではなく推定値」であることを設計書に明記し、追加調査の必要性を施主と共有するプロセスが現場トラブルの防止につながります。
地盤工学会(公益財団法人)のウェブサイトでは、透水試験方法に関する最新基準(JGS1314、JGS1319など)の詳細が参照できます。実務で使用する前に最新版を確認することをお勧めします。
JGS 現場透水試験方法の解説(地盤工学会による公式基準の背景と解説)

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