

改正の大きな柱は、「再生資源の利用義務を課す製品」を国が指定し、一定規模以上の製造事業者等に対して、再生資源の利用に関する計画提出と定期報告を義務付ける点です。根拠は、経済産業省の公表資料でも「再生資源の利用義務化」「計画の提出及び定期報告」と明示されています。建築従事者から見ると「製造業の話」に見えますが、実務では資材選定・仕様書・サプライヤー監査を通じて波及します。
建設で影響が出やすいのは、プラスチックを含む建材・設備部材(配管、断熱材、内装材、外装の複合材、梱包材など)です。改正の議論資料では、まず再生プラスチックを指定していく方向性、さらに容器包装・家電・自動車などが検討対象として挙げられています。現場が直接「指定製品の製造者」ではなくても、建材メーカーが義務対象になれば、発注段階で「再生材比率」「利用計画に沿った供給」「証明書類」の提示を求められ、施工側も提出物が増えます。
実務上の落とし穴は、「再生材を使っている」だけでは足りず、計画・報告の裏付けになるデータ体系が必要になる点です。例えば、材料ロットごとの再生材含有率、調達先のトレーサビリティ、製品規格と現場納入品が一致していることの証跡がないと、元請・発注者の確認に耐えません。着手順としては、①影響の大きい資材カテゴリを絞る、②サプライヤーに証明可能な項目を確認する、③現場の受入検査に「証跡回収」を組み込む、の3点が現実的です。
参考:国の制度趣旨(再生資源の利用義務化、計画提出・定期報告、環境配慮設計などの改正概要)
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250225001/20250225001.html
改正では、解体・分別しやすい設計や長寿命化につながる設計など「特に優れた環境配慮設計」を国が認定する制度が創設されます。経済産業省のニュースリリースでも「環境配慮設計の促進」「認定制度を創設」と整理されており、環境省の整理資料でも同趣旨が明記されています。ここは建築分野にとって、材料選定の指標が「価格・納期・性能」に加えて「分解容易性」「単一素材化」「部材交換性」に寄っていく転換点になり得ます。
設計実務で効いてくるのは、複合材・多層材・接着固定の扱いです。例えば、解体時に分別が困難な接着一体化は、リサイクル工程で「異物」扱いになりやすく、回収されても歩留まりが落ちます。改正の狙いはまさにライフサイクル全体で資源効率を上げることにあるため、建築の詳細納まり(接合方式、表面仕上げ、解体手順の見える化)が、将来の「資源化可能性」に直結します。
現場寄りの実装としておすすめなのは、設計図書・施工計画に「解体・更新の前提」を短くてもよいので織り込むことです。例えば、設備更新周期が短い部分(照明、空調、制御機器、衛生器具)だけでも、交換しやすいモジュール化、部材識別(ラベル・台帳)、ボルト固定優先などを方針化すると、建物の“将来の廃棄物性状”が変わります。意外に見落とされがちですが、こうした配慮は維持管理コストの低減(ダウンタイム短縮)にも効くため、環境対応を「コスト増」で終わらせない説明材料になります。
参考:改正ポイントの公式整理(環境配慮設計の促進、認定制度、表示や支援など)
https://www.env.go.jp/content/000342215.pdf
改正では、GXに必要な原材料等の再資源化を促進する枠組みとして、回収・再資源化で高い目標を掲げて認定を受けた事業者に、廃棄物処理法上の特例(適正処理を前提に業許可不要)を講じる方向が示されています。経済産業省のニュースリリースに「廃棄物処理法の特例措置(業許可不要)」が明記され、環境省の資料でも同じ構造で整理されています。建設現場での直結ポイントは、「誰が」「どのスキームで」回収し、どこまでを“事業者の計画”で回せるのかという運用設計です。
ここで注意したいのは、特例がある=何でも自由に運べる、ではない点です。特例は「認定計画に基づく」「適正処理の遵守を前提」とセットで語られており、対象外のフローを混ぜると途端にリスクが跳ね上がります。例えば、現場で発生した端材・撤去品を、認定スキームの回収物と一緒に積む、別現場の混載をする、保管場所の表示や分別が曖昧、といった“現場あるある”がコンプライアンス事故になり得ます。
建築従事者が今からできる現実的な備えは、回収フローの「線引き」を帳票に落とすことです。具体的には、①対象物(品目・型番・材質)を明確化、②排出事業者責任の範囲と委託先の範囲を契約に明記、③搬出時点で写真・数量・ロットを残す、④マニフェスト運用との整合(特例適用部分と通常処理部分の区別)を取る、の4点が効きます。法改正の話題は抽象化しがちですが、現場では「混ぜない」「残す」「一致させる」が最重要です。
改正のもう一つの柱として、シェアリング等の「サーキュラーエコノミー(CE)コマース事業者」を新たに位置づけ、資源の有効利用等の観点から満たすべき基準を設定する方針が示されています。経済産業省のニュースリリースでは「サーキュラーエコノミーコマースの促進」として明確に項目立てされており、単なる啓発ではなく制度上の居場所ができます。建設ではこの流れが、レンタル・リース・サブスク・リユース材の調達に、じわじわ効いてきます。
建設調達で変わり得るのは、「買い切り前提の仕様」からの脱却です。例えば、仮設材、現場事務所備品、照明・空調の一部(更新頻度が高い機器)などは、所有せずサービスとして利用する設計がしやすい領域です。CEコマースの基準が具体化すると、事業者側に点検・回収・再利用の設計(逆物流)が求められ、施工側も「返却時の状態管理」「部材の欠損責任」「現場内の紛失防止」まで含めた運用が必要になります。
意外な盲点は、会計・原価管理と現場管理がずれやすい点です。リース・サブスクは月額費用として見えやすい一方、返却条件や破損ペナルティは現場の“最後の最後”で発生し、工期末に揉めやすいです。契約時点で、破損判定基準、写真記録のルール、日常点検の責任分界を決め、現場のKY・巡回に組み込むと、CE型調達が「環境によいが面倒」から「事故が減って合理的」に変わります。
検索上位の記事では「改正のポイント解説」に寄りがちですが、建築従事者にとって差が出るのは“データの作り方”です。改正は、再生資源の利用計画や定期報告、環境配慮設計の評価といった「提出・説明」が増える方向で整理されています。つまり、現場や設計が作った情報を、メーカー・商社・元請・発注者が再利用できる形にしておくほど、対応コストが下がります。
ここで有効なのが、BIMや資材台帳を「数量拾い」だけで終わらせず、資源循環の属性を持たせる発想です。たとえば次のような属性を、主要資材だけでもよいので付けておくと、将来の要求に耐えやすくなります(全てを一気にやる必要はありません)。
「そんな属性は今の仕様書にない」と感じるかもしれませんが、改正の方向性は“国がモニタリングする仕組みを構築する”ことにあります。つまり、いずれ発注者やサプライチェーンの上流から、「証明できる形で出して」と言われる確率が上がります。先回りして、社内の標準仕様・チェックリスト・検査記録の様式に1行ずつ追加するだけでも、将来のペナルティや手戻りを減らせます。
参考:改正の全体像(4本柱の整理、廃棄物処理法特例、CEコマース等)
https://www.env.go.jp/content/000342215.pdf