

吸水率4.8〜7.0%の白河石黒目は、御影石(約0.1〜0.3%)の約30倍以上も水を吸うのに、外壁材として採用されています。
白河石は福島県白河市(主に久田野付近、西白河郡西郷村も含む)で採掘される安山岩質凝灰岩です。その誕生は今から約100〜700万年前にさかのぼり、会津地方で起きた爆発的な火山噴火による火山灰・火砕流が積み重なって固まったものとされています。
同じ噴火由来の石が栃木県那須町側で採れると「芦野石」、福島県白河市側で採れると「白河石」と呼ばれます。つまり基本的には同一起源の石材なのです。意外ですね。ただし、産地の違いによって色調や石質に微妙な差が生まれるため、石材業界では別石種として区別されています。
白河石には大きく分けて「黒目」と「白目」の2種類があります。黒目は黒色硝子質を多く含む灰色〜灰紫色で、石質が硬いのが特徴です。白目はやや柔らかく、芦野石の白目に色調が近く、石目に流れがあります。産地によっては「久田野石」「米村石」「小田川石」「根田石」などと呼ばれることもあり、同じ白河石でも産出場所によって微妙に色合いが異なります。
| 種別 | 石質 | 色調 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 黒目 | 硬め | 灰色〜灰紫色 | 水を打つと美しく発色・苔が生えやすい・超高級品 |
| 白目 | やや柔らかい | やや赤味を帯びた白灰色 | 石目に流れがある・芦野石白目に似た色調 |
「黒目」が「超高級品」と評される背景には、産出量の少なさがあります。白河石全体の中でも黒目の割合は限られており、加工できる職人の高齢化と後継者不足も重なって、流通量は決して多くありません。建築業界でも取り扱い実績のある石材店が限られているのが現状です。
埋蔵量は数千万トン以上とも言われており、資源としては安定していますが、加工・流通面での供給力が課題となっています。これが基本です。
参考:白河石の基本情報(採掘地・物性データ含む)
石材のことが日本一わかるサイト「いしマガ」白河石ページ
建築現場で白河石を扱う際、最もよく混乱するのが「白目」「黒目」「芦野石」の三者の識別です。現場で誤認したまま施工が進むと、仕上がりのイメージが異なるだけでなく、発注・補修時のコストにも影響します。
まず白河石の黒目と白目の見分け方ですが、最も分かりやすいのは色です。黒目は水を打つとしっとりとした濃い灰色〜灰黒色に発色し、独特の深みが出ます。白目はやや白みがかった灰色で、石目に流れ模様(流理構造)が確認できることが多いです。手に取って端部を見ると、黒目のほうが緻密で硬い印象があります。
芦野石と白河石の見分け方は、さらに難しいとされています。両者は基本的に同一起源の石であり、色調・質感が非常によく似ているためです。ただし傾向として、芦野石は白目・赤目・寅目など色の幅が広く、白河石は白目・黒目が主です。建築業者の中には同一石種として扱うケースもあるほど見た目が似ていますが、正式には産地で区別します。つまり「採掘場所が唯一の根拠」が原則です。
建築用途で白河石黒目を指定する場合は、石材店に「黒手(くろて)」「黒目」と明確に伝えることが大切です。石材業界では同じ白河石でも「通常より割高で扱う黒手」という認識が業者間で共有されており、仕入れ時の見積確認は必須です。
一点、注意しておきたいことがあります。補修や増設で既存の白河石に合わせようとしても、同じ産出場所から同じ色合いの石が出るとは限りません。天然石ゆえのロット差があり、既存石との色合わせが難しいケースがあります。これはデメリットとして覚えておくべき点です。
参考:芦野石・白河石の採掘・加工の詳細解説(大徳石材工業)
【芦野石・白河石】採掘・加工方法そして素材の魅力を徹底解説 | 大徳石材工業
白河石黒目は歴史的建造物から現代建築まで、幅広い場面で使用されてきた実績を持ちます。代表的な事例として、1632年完成の白河小峰城の石垣、京都・桂離宮の石橋、そして中山義秀記念文学館(側壁)が挙げられます。現代では積水ハウスの最高級邸宅ブランド「イズ・ロイエ」の外壁材としても採用されており、民間住宅・商業建築でも存在感を発揮しています。
使用箇所としては、以下のような場所が代表的です。
白河石黒目が特に評価される場面として、「水を打ったときの発色」が挙げられます。御影石や大理石は乾くと表面の輝きが主役ですが、白河石黒目は濡れた状態での深みのある灰黒色が美しく、造園分野では意図的に「水打ち前後」の変化を演出に使うこともあります。これは使えそうです。
また、白河石特有の調湿作用も建築活用上の重要なポイントです。御影石や大理石のような緻密な石材は多湿な環境で表面が結露し「汗をかく」ことがありますが、白河石は適度な吸水性があるため湿気を吸ってくれます。調湿機能を持つという点は、日本の高温多湿な気候に適した特性です。
一方で内装の浴室床への使用は、吸水性と滑りにくさを両立できるとして評価されている反面、長期的なカビ・汚れ対策が必要になります。「浴室に使えるから撥水処理は不要」という認識は間違いです。内外装問わず、使用前の撥水剤処理が基本です。
参考:白河石の建築・造園・外構への活用事例(白井石材)
取扱製品白河石 (株)白井石材
白河石黒目は中硬石であるがゆえに加工性に優れており、多様な仕上げ加工が可能です。この点は御影石などの硬質石材と異なる大きなメリットです。仕上げの選択によって、同じ白河石黒目でも表情がまったく異なるため、建築業者として仕上げの違いを正確に把握しておくことは実務上の重要知識です。
また、白河石は安山岩の優れた耐火性を活かして炉で焼くことで、表面を赤みがかった色調に変化させることもできます。建築家の隈研吾氏が設計した「石の美術館 STONE PLAZA」(栃木県那須町)では、芦野石のこの加工法が取り入れられており、建築デザインの素材として新たな可能性が広がっています。これも知識として押さえておきたいところです。
仕上げ選定の実務ポイントとして、屋外床・アプローチには防滑性の高いビシャン仕上げまたは割肌仕上げが適しており、外壁貼りや内装壁には荒ずり仕上げやビシャン仕上げが多く選ばれます。滑り止めが必要な浴室床・階段では、割肌やビシャン仕上げを標準として提案するのが基本です。
参考:ビシャン仕上げ・小叩き仕上げの特徴と使い分け(関ヶ原石材)
ビシャン仕上・小叩き仕上 のご紹介 | STONE COLUMN | 関ヶ原石材
白河石黒目を扱う上で最も見落とされがちなのが、吸水率の高さへの対策です。白河石の吸水率は室温24時間浸漬で4.8〜7.0%、3時間煮沸では5.0〜8.0%にも達します(白井石材の測定データより)。一般的な凝灰岩全体で見ると吸水率が約17%という分類もありますが、白河石黒目はその中でも硬めの部類ながら、御影石(約0.1〜0.3%)と比べると30倍以上の吸水性があります。痛いですね。
この吸水性の高さが引き起こすリスクを整理すると、次の3点が中心になります。
対策として最も確実なのが撥水剤の事前処理です。浸透型の石材用撥水剤(シリコーン系)を施工前に塗布することで、石の風合いを変えずに吸水率を大幅に下げることができます。白井石材も公式に「外部や浴室の使用には撥水剤の使用をお勧めします」と明記しており、業者として施主に撥水処理を標準提案として含めることが重要です。撥水処理は必須と覚えておけばOKです。
また、白河石は多孔質であるため、施工後に石の粉が落ちることがあります。施主へ事前に伝えておかないと、「施工直後から崩れている」と誤解されるケースがあります。特に黒目は高価な石材であるため、施主の期待値も高く、竣工前の丁寧な説明が後々のトラブル防止につながります。
さらに、白河石は角欠けや割れが起こりやすい準硬石です。施工中の強い衝撃・鋭利な工具の当て方・搬入時の落下には細心の注意を要します。コスト面でも、白河石黒目は通常の白河石より割高で取り扱われており、補修材の確保も難しい場合があることを念頭に置いた施工管理が求められます。
参考:白河石の注意事項・吸水率データ(関ヶ原石材)
新国産石種 白河石 のご紹介 | 関ヶ原石材
参考:石材分類別の吸水率データ(凝灰岩約17%)
石材分類別の物性データ表 | タイルライフ