

倉庫業法の施設設備基準では、軸組み・外壁・荷ずり等の強度について「国土交通大臣の定める基準に適合」することが求められ、その基準として1㎡あたり2500ニュートン以上の荷重に耐える強度が示されています。
ここで重要なのは、法令運用上の「外壁」が、建物の外周部だけでなく「倉庫の有効面(容)積部分とそれ以外の部分で接している間仕切り壁等の壁面も含む」と整理されている点です。
つまり、同じ建物内であっても「営業倉庫として登録申請する区画」と「事務所・別用途区画・屋外側」などの境界にある間仕切壁は、審査実務上“外壁扱い”になり、2500N/㎡の対象として見られる可能性があります。
設計・改修でありがちな誤解は、「間仕切壁は内壁だから倉庫業法の2500N/㎡は関係ない」と一括りにしてしまうことです。
参考)https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/souko/file/gaiheki.pdf
営業倉庫の登録は“倉庫区画”ごとに評価されるため、区画計画(どこからどこまでを申請区画にするか)と、その境界壁の構造仕様がセットで問われます。
このため、工事範囲が間仕切更新だけでも、登録区画境界に当たるなら、構造仕様・試験成績・施工要領まで含めた説明資料が実務上の勝負所になります。
参考:運用上の「外壁」定義や、2500N/㎡の考え方(告示・運用方針抜粋)がまとまっています(用語の定義・開口部の考え方の参考)。
運用上、外壁に窓などの開口部がある場合で、開口部の幅と高さがいずれも内法寸法で1m以上だと、その部分は「十分な強度を有している外壁とは認められない」という扱いが示されています。
これは“壁”としての面外抵抗を期待する範囲から外れる、という審査ロジックに近く、間仕切壁に大開口(引戸・ガラス開口・大きな連絡口)を設ける計画ほど注意が必要です。
一方で、搬出入や従業員出入りのための出入口については、通常そこに寄託貨物を置かないことが多いため、外壁強度基準の開口部に含めない扱いが可能とされる旨も整理されています。
この“出入口扱い”が通るかどうかは、運用上の説明ができるか(運用・動線・保管形態・貨物配置のルール化)に依存しやすいので、図面の「扉がある」だけで安心しない方が安全です。
また、ラック保管で外壁付近に貨物を置かないことが明らかなど、荷崩れのおそれがない措置が講じられている場合は、2500N/㎡を満たしていなくても登録自体は可能だが、登録通知書に条件が付される運用がある点も押さえるべきです。
現場運用で条件を守り切れないと、事故リスクはもちろん、運用監査や更新・増床・用途変更のタイミングで説明が苦しくなるため、可能なら壁側で素直に基準を満たす方が長期的に有利です。
2500N/㎡の適合を“どう証明するか”は、設計だけでなく申請・審査の作業量を左右します。
運用の整理では、民間の建築士事務所等によって2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度を有することが証明できる場合は、開口部等の扱いも含めて「基準に適合」と判断し得る要素として挙げられています。
つまり、最終的に問われるのは“壁の断面が強そうか”ではなく、「この仕様が2500N/㎡の面外荷重に耐える」ことを、誰が・どんな資料で・再現可能に説明できるかです。
実務で使われやすい根拠は、次のいずれか(または組合せ)です。
例えば、倉庫業法(則の該当条項)で求められる2,500N/m²の面外荷重に耐える工法として、軽量鉄骨下地の間仕切り壁工法の研究開発が紹介されており、「外壁やテナント間の界壁など」が対象になり得ることが明記されています。
また、製品・工法側でも「倉庫業法で定められた2500N/㎡の荷重に耐える強度を載荷実験で確認」といった形で、試験ベースの根拠を示す例があります。
ここでの“意外な落とし穴”は、カタログに「2500N/㎡対応」と書いてあっても、壁高さ・スタッドピッチ・ボード種・留付けピッチ・開口補強・上端支持条件(スラブ直 or 梁下地)などの前提が少しでも外れると、同じ性能として扱えないことです。
参考)倉庫業法2500N/㎡仕様|株式会社佐藤型鋼製作所(公式ホー…
そのため、審査・施工・引渡し後の説明まで見据えるなら、施工要領書(どこまでが標準仕様か)と、現場写真・検査記録(ピッチや補強の確認)が残る運用にしておくと、後で効いてきます。
参考:倉庫業法2500N/㎡仕様を載荷実験で確認した旨が示され、構成部材の考え方の参考になります(証明資料の作り方・メーカー根拠の持ち方の参考)。
倉庫の壁に求められる2500N/㎡は、ざっくり言えば「荷崩れ等で貨物が壁に押し付けられる」ことを想定した面外方向の要求として扱われるため、間仕切壁でも“薄い内装壁の感覚”では通りません。
その結果、工法としては、軽量鉄骨下地(スタッド)+ボード多層、あるいは鋼製下地の高強度タイプ、ALC等のパネル系など、メーカーが2500N/㎡対応を明示しやすい構成が選ばれやすくなります。
実例として、倉庫業法に規定される2500N/m2に対応したスタッド工法の「倉庫業法対応壁」製品が紹介されています。
また、製品によっては「振れ止め無しスタッド工法」といった施工性や納まりに関する特徴が示され、物流施設での施工条件(工期・干渉・設備貫通)を踏まえた選択肢として提示されています。
参考)ソリーダシリーズ(倉庫業法対応壁)
別の視点として、研究開発の文脈では、倉庫業法対応の耐火間仕切り壁工法の選択肢を増やし、材料・技能者不足への対応も意図している旨が述べられています。
参考)軽量鉄骨下地間仕切り壁工法|建築系|研究成果|総合技術研究所…
つまり、強度だけでなく「施工の再現性(誰が施工しても仕様通りになりやすい)」が、結果的に審査資料の整合にもつながるという発想が重要です。
現場目線のチェック項目(設計段階から決めておくと後が楽なもの)をまとめます。
検索上位で「壁の仕様」ばかりが語られがちですが、実務で効く独自視点は“壁を強くする”と同時に“壁に荷重をかけない運用を設計する”という二段構えです。
運用整理では、ラック保管で外壁付近に貨物を配置しないことが明らか等、荷崩れのおそれのない措置が講じられている場合は2500N/㎡を満たしていなくても登録が可能な余地が示され、条件付き登録の運用も例示されています。
この考え方を逆手に取ると、壁の性能検討と並行して、WMS上のロケーション制限、壁際の立入・仮置き禁止、床面マーキング、パレットの向き統一、フォークリフト動線の交錯回避などを“図面化・規程化”して、審査説明や社内運用品質を上げる方向に繋げられます。
もちろん、運用でカバーする方針は「将来の現場が守り続ける」前提になるため、属人化すると崩れます。
そこで、次のように“建築・設備・運用”を一体で設計すると、条件付き登録になった場合でも現場の実行性が上がります。
この“運用を設計図書レベルに落とす”発想は、壁強度の議論を現場に押し付けず、登録・監査・安全の三つを同時に満たすための現実的な解です。