
騒音規制法では、工場や事業場に設置される著しい騒音を発生する施設を特定施設として定めています。金属加工機械に関する特定施設は11種類あり、それぞれ原動機の定格出力や能力によって規制対象が決定されます。
圧延機械は原動機の定格出力の合計が22.5kW以上のものが対象となり、製管機械はすべてのものが規制対象です。ベンディングマシンについてはロール式で原動機の定格出力が3.75kW以上のものが該当します。液圧プレスは矯正プレスを除くすべてが対象で、機械プレスは呼び加圧能力が294kN(30t)以上のものが規制されます。
せん断機は原動機の定格出力が3.75kW以上、鍛造機とワイヤーフォーミングマシンはすべてのものが特定施設に該当します。ブラストはタンブラスト以外で密閉式を除くもの、タンブラーはすべてのもの、切断機はといしを用いるものに限定されています。これらの施設を設置する場合、事前の届出が義務付けられています。
空気圧縮機および送風機は、令和4年12月1日から規制内容が変更されました。現在は一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が7.5kW以上のものが特定施設の対象となっています。低振動型圧縮機に関する新たな告示により、技術革新に対応した規制が行われています。
土石用または鉱物用の破砕機、摩砕機、ふるい、分級機については、原動機の定格出力が7.5kW以上のものがすべて特定施設として規制されます。これらの施設は建設資材の製造や骨材の処理などで広く使用されており、騒音発生源として重要な管理対象となっています。
織機については原動機を用いるものすべてが対象で、穀物用製粉機はロール式で原動機の定格出力が7.5kW以上のものが該当します。これらの施設を新たに設置する際は、設置工事開始の30日前までに届出を行う必要があります。
建設用資材製造機械には、コンクリートプラントとアスファルトプラントが特定施設として指定されています。コンクリートプラントは気ほうコンクリートプラントを除き、混練機の混練容量が0.45㎥以上のものが対象です。アスファルトプラントは混練機の混練重量が200kg以上のものが規制されます。
木材加工機械に関しては、ドラムバーカー、チッパー、砕木機、帯のこ盤、丸のこ盤、かんな盤の6種類が特定施設に該当します。ドラムバーカーと砕木機はすべてのものが対象となり、チッパーは原動機の定格出力が2.25kW以上のものが規制されます。
帯のこ盤と丸のこ盤については、製材用は原動機の定格出力が15kW以上、木工用は2.25kW以上のものが対象です。かんな盤は原動機の定格出力が2.25kW以上のものが特定施設として届出が必要になります。これらの木材加工機械は製材所や木工場で使用されることが多く、周辺環境への配慮が求められています。
抄紙機はすべてのものが特定施設に該当し、製紙工場での騒音管理が重要視されています。印刷機械については原動機を用いるものすべてが対象となり、印刷工場や製版工場では適切な騒音対策が求められます。
合成樹脂用射出成形機はすべてのものが特定施設として規制され、プラスチック製品の製造現場で広く使用されています。鋳型造型機についてはジョルト式のものが対象で、鋳物工場における主要な騒音発生源として管理されています。
これらの特定施設を設置する場合、指定地域内の工場または事業場では、設置工事開始の30日前までに市町村長への届出が義務付けられています。届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合は、5万円以下の罰金が科される可能性があります。また、既存施設が新たに特定施設の指定を受けた場合は、指定日から30日以内に使用届出書の提出が必要です。
特定建設作業とは、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音を発生する作業として政令で定められているものです。くい打機(もんけんを除く)、くい抜機、くい打くい抜機(圧入式を除く)を使用する作業が代表的で、くい打機をアースオーガーと併用する作業は除外されています。
びょう打機を使用する作業、さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業では1日の最大距離が50mを超えないものに限る)も特定建設作業に該当します。空気圧縮機を使用する作業(電動機以外の原動機を用いる場合で一定の要件を満たすもの)、コンクリートプラントやアスファルトプラントを使用する作業も規制対象です。
特定建設作業を実施する場合は、作業開始の7日前までに市町村長へ届出が必要です。ただし、当該作業が開始日に完了するものについては届出は不要となっています。規制基準として、敷地境界線において85デシベルを超える騒音を発生させないことが定められており、作業時間や作業日数にも制限があります。
騒音規制法に基づく届出には複数の種類があり、それぞれ提出期限が定められています。特定施設設置届出書は、設置工事開始の30日前までに提出することが騒音規制法第6条第1項で義務付けられています。この30日という期間は、市町村長が騒音防止対策の妥当性を審査するために設けられた猶予期間です。
特定施設使用届出書は、当該施設が指定地域となった日または特定施設となった日から30日以内に提出する必要があります。これは法改正や地域指定の変更により、既存の施設が新たに規制対象となった場合に適用されます。
特定施設の種類及び能力ごとの数等変更届出書、騒音防止の方法変更届出書については、変更工事開始の30日前までの提出が求められます。届出者の氏名や住所などを変更した場合は、変更後遅滞なく届出が必要です。届出書は正副2部を作成し、市町村役場の公害担当部局に原則として持参で提出します。
騒音規制法では、都道府県知事または市町村長が住居が集合している地域、病院や学校の周辺地域など、騒音を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認める地域を指定地域として定めます。工業専用地域や臨港地区の一部など、住居が存在しない地域は通常指定地域から除外されています。
指定地域は通常、第1種区域から第4種区域までに区分されます。第1種区域は第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域など、良好な住環境を保護する必要性が特に高い地域です。第2種区域は第一種中高層住居専用地域や第二種中高層住居専用地域、第1種住居地域などが該当します。
規制基準値は区域と時間帯によって異なり、例えば第1種区域では朝(午前6時~8時)が45デシベル以下、昼間(午前8時~午後7時)が50デシベル以下、夕(午後7時~10時)が45デシベル以下、夜間(午後10時~午前6時)が40デシベル以下と定められています。工場や事業場は敷地境界線上でこれらの基準を遵守する義務があります。
騒音規制法に基づく特定施設から発生する騒音が規制基準に適合しない場合、市町村長は改善勧告を行うことができます。改善勧告を受けた事業者は、騒音防止方法の改善や作業時間の調整などの対策を講じる必要があります。令和元年度には全国で改善勧告が30件実施されたという記録があります。
改善勧告に従わない場合や、周辺の生活環境が著しく損なわれると認められる場合、市町村長は改善命令を発することができます。改善命令には法的強制力があり、これに違反した場合は騒音規制法第29条により、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
届出義務に関する違反についても罰則が設けられています。特定施設の設置届出を行わなかった場合や、虚偽の内容で届出を行った場合は、5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。特定建設作業の届出義務違反についても同様の罰則が適用されます。これらの罰則は、騒音規制法の実効性を確保し、住民の生活環境を保護するために重要な役割を果たしています。
建築業従事者が騒音規制法に適切に対応するためには、計画段階からの配慮が重要です。新規に工場や事業場を設置する場合、使用予定の機械設備が特定施設に該当するかどうかを事前に確認し、該当する場合は設置工事開始の30日前までに確実に届出を行う必要があります。
建設現場では特定建設作業の実施前に、作業開始の7日前までの届出が必須です。くい打ち工事やさく岩作業など騒音を発生させる作業を行う際は、作業時間を平日の午前7時から午後7時までに制限し、日曜日や休日の作業を避けるなど、規制基準を遵守する配慮が求められます。
意外と知られていないのが、低振動型圧縮機など環境大臣が指定する低騒音型の機械を使用することで、特定施設の指定から除外される場合があることです。設備投資の際には、こうした低騒音型機械の導入を検討することで、届出義務を回避できる可能性があります。また、既存施設でも騒音対策として防音壁の設置や機械の配置変更、定期的なメンテナンスによる異常音の防止などが効果的です。
環境省の騒音規制法に関する手続案内ページでは、届出様式や詳細な手続き方法が確認できます。
東京都環境局の特定施設一覧ページでは、最新の規制内容や施行令改正情報が掲載されており、実務の参考になります。