

高強度無収縮グラウト材は、ベースプレート下や機械基礎、アンカーボルト周りなど「狭い間隙へ確実に充填し、荷重を伝える」用途で使われます。高流動型では、材齢28日で圧縮強度60N/mm2以上をうたう製品もあり、プレミックスで現場品質を安定させる設計が一般的です。
また「無収縮」「ノンブリーディング」を狙うため、酸化カルシウム系膨張材などを用いて拘束条件下でも部材との一体化を高める考え方が示されています。
ここで注意したいのは、“流動性が高い=どんな隙間でも勝手に入る”ではない点です。流動性が高い材料ほど、型枠の漏れ・隙間・目地の未処理があると、そこから逃げて「必要部に圧が掛からない」状態になりやすいです。材料性能のカタログ値が高いほど、施工側の段取り(止水・シール・注入口/エア抜き)が品質を支配します。
意外と見落とされがちなのが「パッド用」と「グラウト用」の思想の違いです。パッド用途は“成形性”を優先し流動性を抑えた設計もあり、同じ“無収縮”でも狙いが異なります。現場で「昔使った無収縮モルタルの感覚」で水を増やすと、分離・強度低下・沈下の遠因になり得るため、用途区分と仕様書の水量をまず固定してください。
施工の基本フローは、(1)下地清掃・目荒らし、(2)型枠組立とシール、(3)注入口・エア抜き、(4)練混ぜ、(5)注入・充填、(6)養生、という考え方が分かりやすいです。特に型枠は、注入圧で壊れたり開いたりしない剛性が必要で、同時に「漏らさない」ことが充填品質を決めます。
注入は「片側から連続して」行うのが原則で、途中で止めない段取り(材料供給・練りの回転・人員配置)が要点です。片側から押していくことで、空気の逃げ場(エア抜き方向)を作り、巻込み空気や未充填を減らせます。
注入方法は、流し込み、ホッパー、自重圧工法、ポンプ圧入など現場条件で選びますが、どの方法でも「片押し」「連続」「漏れゼロ」を守れないと性能は出ません。
実務で効く小技として、型枠の“漏れそうな場所”を先に列挙してチェックリスト化すると手戻りが減ります。例えば、ベースプレート外周、アンカーボルト周り、段差部、既設躯体のジャンカ・巣穴、配管貫通部などは漏れの常連です。ここをシール材で処理し、注入口/エア抜き位置を「材料が流れる道」として計画するだけで、同じ材料でも充填の再現性が上がります。
型枠・注入口・片押しの考え方(施工段取りの参考)。
デンカ プレタスコン|施工手順・連続注入(片押し)など段取りの要点
高強度無収縮グラウト材の施工で、トラブルの温床になりやすいのが「練混ぜ温度」と「可使時間」です。資料では、練り混ぜ温度を5〜35℃の範囲とし、夏季は冷却した練混ぜ水を使い練上がり温度をできるだけ30℃以下にする、といった注意が示されています。
温度が上がるほど反応は進みやすく、現場感覚としては「急に重くなる」「急に流れなくなる」方向に振れやすいので、同じ水量・同じ撹拌時間でも性状が変わります。
練混ぜは、指定の撹拌時間・回転数・ミキサの能力を守るのが前提です。ハンドミキサーを使う場合の回転数条件や、羽根の材質(アルミ製を避ける注意など)が明記される仕様もあるため、道具側の“いつものやり方”がそのまま通用するとは限りません。
ここでのポイントは「水量を現場調整で増やして流す」ではなく、「温度と練り条件を管理して、指定水量の範囲で狙いの流動性を出す」に切り替えることです。高強度を狙うほど、水の一手間がそのまま強度・沈下・ブリーディングの差になります。
温度管理の根拠(練混ぜ温度5〜35℃など)。
セメント系無収縮材プレミックスタイプ:練混ぜ温度・回転数・注意事項
無収縮グラウト材でも、施工条件によってはプラスチック収縮ひび割れが発生する可能性がある、と注意喚起されることがあります。特に、乾燥風・高温・直射日光・吸水の大きい下地条件が重なると、表面が急激に乾き「固まる前に縮む」現象が起きやすくなります。
このため、事前にシート養生などの処置方法を検討する、という記載がある資料もあります。
養生の実務ポイントは「硬化後の強度」だけでなく、「硬化中の水分移動」をコントロールすることです。具体的には、
といった“当たり前”が、結果としてひび割れ・付着不良・空隙の減少に直結します。
意外な落とし穴は、冬期の「凍結」よりも、昼夜温度差で表層だけが先に乾き、内部との収縮差で微細ひび割れが出るケースです。高強度系はセメント量・反応の立ち上がりが速い設計が多く、表層の管理が雑だと、表面欠陥が残って仕上げ・防錆・非破壊検査の段階で問題化します。
養生・ひび割れ注意(シート養生検討など)。
セメント系無収縮グラウト材:施工条件での収縮ひび割れ注意と養生の考え方
検索上位の一般解説では「流動性」「強度」「施工手順」に話題が集中しがちですが、現場の再現性を左右する“道具と化学反応の相性”も無視できません。仕様書の中には、ハンドミキサーの羽根について「アルミ製の羽根は異常膨張の原因となる」ため避ける、といった具体的注意が記載される例があります。こうした注意は、材料側の膨張材や反応系と、金属由来の影響(反応促進・不純物混入など)を嫌う設計思想が背景にあり、守るほどトラブルが減ります。
もう一つの独自ポイントは「規格・評価基準に沿った品質管理」を現場でどう落とすかです。公共建築協会の評価基準では、無収縮グラウト材に対して材齢3日・28日の圧縮強度や、材齢7日で収縮しないこと、付着強度などが整理されています。発注者・監理者と“同じ言葉”で会話するために、製品カタログの強度値だけでなく、評価基準が要求する項目(試験齢、基準値、養生条件)を事前に照合しておくと、試験計画・立会・書類がスムーズです。
現場での品質管理を一段上げる実務例。
評価基準(強度・無収縮性などの要求値の確認に有用)。
公共建築協会:無収縮グラウト材の品質性能評価基準(材齢3日・28日強度など)
無収縮高強度グラウト材 グラウト2(25kg) 5袋セット エレホン化成工業