
玉掛け作業において使用するワイヤーロープは、JIS G3525規格に適合した製品を使用することが法的に定められています。この規格では、ワイヤーロープの材質や構成、破断荷重などが厳格に規定されています。
主要なJIS規格ワイヤーロープの種類:
同じ線径でも構成によって破断荷重が異なります。例えば9mm径の場合、6×24A種で39.9kN、6×37A種で43.0kNと差が生じます。
JIS6×24A種の詳細な安全荷重表(日本クレーン協会)
クレーン等安全規則第213条により、玉掛け用ワイヤーロープの安全係数は6以上でなければなりません。この安全係数6倍という数値には、現場での様々なリスク要因が考慮されています。
安全係数の計算式:
安全係数 = 切断荷重(破断荷重) ÷ 最大使用荷重
制限使用荷重(安全荷重)の算出方法:
制限使用荷重 = 破断荷重 ÷ 安全係数(6)
実例計算 - 9mm径ワイヤー(6×24A種)の場合:
この安全係数6倍には以下の要因が含まれています。
多点吊りの場合、吊り角度と本数により制限使用荷重が変化します。この計算にはモード係数を使用し、実際の現場条件に応じた安全荷重を算出します。
主要な吊り方とモード係数:
吊り方法 | モード係数 | 備考 |
---|---|---|
2本2点吊り | 2.0 | 基本的な吊り方法 |
2本4点あだ巻き | 3.0 | 荷重均等困難のため3本吊り扱い |
3本3点吊り | 2.5 | バランス良好 |
4本4点吊り | 2.5 | 荷重均等困難のため3本吊り扱い |
2本4点半掛け | 4.0 | 最も効率的 |
計算実例 - 4本4点吊り(吊り角度30°~60°):
吊り角度による影響: 🔺
目通し(絞り)がある場合は、さらに25%の強度低下を考慮する必要があります。
ワイヤーロープは定期点検により安全性を確保し、損傷が基準を超えた場合は即座に使用を禁止する必要があります。
目視点検の重要チェック項目:
アイ加工部の特別点検項目:
使用禁止基準の数値:
損傷種類 | 使用禁止基準 | 測定方法 |
---|---|---|
素線切断 | 1ピッチ間で10%以上 | 目視カウント |
径減少 | 公称径の7%以上 | マイクロメーター |
腐食 | 著しい進行状態 | 目視・触診 |
現場では日常点検シートを活用し、系統的な記録管理を行うことが重要です。
現場での実際のワイヤー選定では、吊り荷重だけでなく作業環境や使用頻度も考慮した総合的な判断が必要です。適切な規格品選定により、作業効率と安全性の両立を実現できます。
選定手順の実践アプローチ: 🎯
実用的な径別適用目安:
簡易破断荷重計算式(現場での概算用)。
破断荷重(t)≒ ロープ径(mm)² ÷ 20
この計算式により、12mm径なら約7.2tの破断荷重となり、JIS規格値7.24tとほぼ一致します。youtube
購入時の確認必須事項: ✅
現場責任者は作業計画書作成時に、使用するワイヤーロープの規格と選定根拠を明確に記載し、作業員への周知徹底を図ることが重要です。