玉掛けワイヤー規格基準選定計算方法

玉掛けワイヤー規格基準選定計算方法

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玉掛けワイヤー規格基準選定計算方法

玉掛けワイヤー規格の重要ポイント
📋
JIS規格G3525適合品

破断荷重が明確に定められた信頼性の高い規格品

⚖️
安全係数6倍以上

クレーン等安全規則第213条で定められた安全基準

🔍
定期点検と廃棄基準

目視点検による損傷チェックと使用禁止基準の判定

玉掛けワイヤー規格JIS G3525の基本仕様

玉掛け作業において使用するワイヤーロープは、JIS G3525規格に適合した製品を使用することが法的に定められています。この規格では、ワイヤーロープの材質や構成、破断荷重などが厳格に規定されています。
主要なJIS規格ワイヤーロープの種類:

  • 6×24構成(旧4号):24本の素線を撚った6本ストランド構成 🔧
  • 柔軟性に優れ、玉掛けスリング用として最適
  • 中心に繊維心が入り曲げやすい特性
  • 6×37構成(旧6号):37本の素線を撚った6本ストランド構成 ⚙️
  • 素線数が多く耐久性が高い
  • 玉掛けや巻上げ索に使用
  • 6×Fi(25)構成(旧14号)フィラー形25本よりストランド 💪
  • 素線同士が線接触し耐疲労性が高い
  • 曲げに強い特性を持つ

同じ線径でも構成によって破断荷重が異なります。例えば9mm径の場合、6×24A種で39.9kN、6×37A種で43.0kNと差が生じます。
JIS6×24A種の詳細な安全荷重表(日本クレーン協会)

玉掛けワイヤー規格安全係数6倍の根拠計算

クレーン等安全規則第213条により、玉掛け用ワイヤーロープの安全係数は6以上でなければなりません。この安全係数6倍という数値には、現場での様々なリスク要因が考慮されています。
安全係数の計算式:

安全係数 = 切断荷重(破断荷重) ÷ 最大使用荷重

制限使用荷重(安全荷重)の算出方法:

制限使用荷重 = 破断荷重 ÷ 安全係数(6)

実例計算 - 9mm径ワイヤー(6×24A種)の場合:

  • 破断荷重:39.9kN
  • 安全係数:6倍
  • 制限使用荷重:39.9÷6=6.65kN(約0.678t)

この安全係数6倍には以下の要因が含まれています。

  • 繰り返し荷重による疲労 📊
  • 温度変化による材質変化 🌡️
  • 曲げ変形による強度低下 📐
  • 経年劣化による性能低下 ⏰

玉掛けワイヤー規格多点吊り計算とモード係数

多点吊りの場合、吊り角度と本数により制限使用荷重が変化します。この計算にはモード係数を使用し、実際の現場条件に応じた安全荷重を算出します。
主要な吊り方とモード係数:

吊り方法 モード係数 備考
2本2点吊り 2.0 基本的な吊り方法
2本4点あだ巻き 3.0 荷重均等困難のため3本吊り扱い
3本3点吊り 2.5 バランス良好
4本4点吊り 2.5 荷重均等困難のため3本吊り扱い
2本4点半掛け 4.0 最も効率的

計算実例 - 4本4点吊り(吊り角度30°~60°):

  • 使用ワイヤー:9mm径(6×24A種)
  • 1本あたり基本荷重:0.678t
  • モード係数:2.5
  • 最大制限荷重:0.678t × 2.5 = 1.695t

吊り角度による影響: 🔺

  • 60°以下:標準係数適用
  • 60°超過:急激な張力増加
  • 45°推奨:最も安全な角度設定

目通し(絞り)がある場合は、さらに25%の強度低下を考慮する必要があります。

玉掛けワイヤー規格点検基準と使用禁止判定

ワイヤーロープは定期点検により安全性を確保し、損傷が基準を超えた場合は即座に使用を禁止する必要があります。
目視点検の重要チェック項目:

  • 素線の切断 ✂️
  • 1ピッチ間で素線の10%以上切断時使用禁止
  • 局所的な損傷でも安全性に影響
  • 摩耗による径の減少 📏
  • 公称径の7%以上減少で使用禁止
  • マイクロメーターによる正確な測定が必要
  • 腐食・錆の進行状況 🦠
  • 表面の変色や粉状の錆
  • 内部腐食の兆候確認
  • キンク・うねりの発生 〰️
  • 急激な曲げによる変形
  • 内部構造への損傷

アイ加工部の特別点検項目:

  • スリーブの圧縮状態確認
  • アイ部の開きや変形
  • 心線の飛び出し有無

使用禁止基準の数値:

損傷種類 使用禁止基準 測定方法
素線切断 1ピッチ間で10%以上 目視カウント
径減少 公称径の7%以上 マイクロメーター
腐食 著しい進行状態 目視・触診

現場では日常点検シートを活用し、系統的な記録管理を行うことが重要です。

 

厚生労働省発行のワイヤロープ点検ガイドライン(PDF)

玉掛けワイヤー規格適合製品の選定実践

現場での実際のワイヤー選定では、吊り荷重だけでなく作業環境や使用頻度も考慮した総合的な判断が必要です。適切な規格品選定により、作業効率と安全性の両立を実現できます。
選定手順の実践アプローチ: 🎯

  1. 荷重計算による基本選定
    • 吊り荷重×1.2(安全率考慮)
    • 吊り本数とモード係数の確認
    • 吊り角度の制約条件
  2. 作業環境に応じた仕様選択
    • 屋外作業:メッキ仕様(G種)推奨
    • 高頻度使用:6×37構成で耐久性重視
    • 狭小空間:6×24構成で柔軟性重視
  3. コスト効率と安全性のバランス
    • 1ランク上の径選択で安全マージン確保
    • 長期使用による償却効果考慮
    • メンテナンス頻度との関係性

実用的な径別適用目安:

  • 6mm〜8mm径 💼
  • 軽量荷物(0.5t未満)
  • 補助的な玉掛け作業
  • 携帯性重視の現場
  • 9mm〜12mm径 🏗️
  • 一般建築現場の主力径
  • 1〜3t程度の荷物に最適
  • 汎用性と強度のバランス良好
  • 14mm〜18mm径 🏭
  • 重量荷物(3t以上)
  • 長期間使用の固定設置
  • 産業設備の移設作業

簡易破断荷重計算式(現場での概算用)。

破断荷重(t)≒ ロープ径(mm)² ÷ 20

この計算式により、12mm径なら約7.2tの破断荷重となり、JIS規格値7.24tとほぼ一致します。youtube
購入時の確認必須事項:

  • JIS G3525規格適合マーク
  • 製造年月日と製造業者名
  • 破断荷重とロープ構成の明記
  • 品質保証書の添付有無

現場責任者は作業計画書作成時に、使用するワイヤーロープの規格と選定根拠を明確に記載し、作業員への周知徹底を図ることが重要です。