特性インピーダンスとインピーダンス違いを分布定数回路と伝送線路で理解

特性インピーダンスとインピーダンス違いを分布定数回路と伝送線路で理解

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特性インピーダンスとインピーダンスの違い

この記事で理解できること
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特性インピーダンスとは

伝送線路上の電圧と電流の比を表す物理量で、線路構造により決まる固有の値です

インピーダンスとの違い

一般的なインピーダンスは回路要素の特性、特性インピーダンスは伝送媒体の特性を示します

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実務への影響

不整合により反射が発生し、信号品質の劣化やEMIノイズの原因となります

特性インピーダンスの基本定義

 

 

 

特性インピーダンスとは、電磁波や電気信号が伝わる媒体における電圧と電流の比を表す物理量です。別名では「固有インピーダンス」とも呼ばれ、単位はΩ(オーム)で表されます。この値は伝送媒体の形状や材質によって決まり、真空中では約377Ω、同軸ケーブルでは50Ω、マイクロストリップラインでは75Ωなどが一般的です。高周波信号が同軸ケーブルを伝わる際の電圧と電流の比(見かけ上の抵抗値)を表現するものですが、実際にテスターで測定しても50Ωという結果は得られません。
参考)https://emc-noise.com/2024-02-10-172313/

特性インピーダンスと一般的なインピーダンスの違い

特性インピーダンスは伝送媒体における電圧と電流の比を表す物理量であるのに対し、一般的なインピーダンスは電気回路における電圧と電流の比を表す物理量です。特性インピーダンスは伝送媒体の種類や形状によって決まりますが、インピーダンスは電気回路の構成要素によって決まります。集中定数回路において一般的に使われる抵抗という概念とは、まったく異なる点に注意が必要です。実際に、特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルの端と端をテスターで測定しても、50Ωという結果は得られません。
参考)https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1003/03/news112.html

特性インピーダンスが生まれる分布定数回路の仕組み

特性インピーダンスは分布定数回路において必要となる考え方で、伝送線路上における信号の電圧と電流の比をとったものです。分布定数回路とは、線路上に回路素子が均一分布していることを想定した回路で、該当回路が扱う波長λが回路形状に対して十分大きいとみなせない場合に考慮する必要があります。伝送線路には、電流が形成する磁界によってインダクタンスが、電位差が形成する電界によってキャパシタンスが分布します。分布定数回路においては、コイルとコンデンサの合成インピーダンスによって伝送線路に流れる電流が決まり、これがあたかも伝送線路ごとに特有のインピーダンスを持っていると捉えられるために特性インピーダンスと呼ばれています。
参考)https://engineer-climb.com/tline-basic/
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特性インピーダンスの計算式と決定要因

伝送線路の特性インピーダンスZ₀は、線路に分布するインダクタンスLとキャパシタンスCから計算されます。無損失の場合、特性インピーダンスは√(L/C)というシンプルな式で計算されます。同軸ケーブルの特性インピーダンスは、中心導体の直径と外部導体の内径、および絶縁体の比誘電率を用いて計算されます。この特性インピーダンスはコイルのインダクタンスやコンデンサーのキャパシタンスによってその大きさが変化するため、伝送線路の形状や構成によって調整することが可能です。プリント基板の場合、配線幅が太い場合には特性インピーダンスは小さくなります。
参考)https://www.waka-product.com/highfrequency-category/%E7%89%B9%E6%80%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9/
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特性インピーダンス不整合が信号品質に与える影響

特性インピーダンスが一致していない場合、信号は反射し、伝送線の終端に到達する前に信号が減衰したり、歪んだりする可能性があります。反射係数Γは、(Z_L-Z₀)/(Z_L+Z₀)で計算され、例えば伝送路の特性インピーダンスが50Ωで負荷インピーダンスが100Ωの場合、反射係数は0.333となり、入射波の33.3%が反射します。インピーダンスの不整合があると波形が歪み、オーバーシュートやアンダーシュートにより入力側デバイスに過電圧が掛かったり、閾値を跨ぐリンギングや閾値付近に段付きが発生し、デバイスの故障や伝送エラーの原因となる可能性があります。リンギングの振幅や周波数が高いとEMIノイズの原因にもなります。
参考)https://simulation-pcb.com/column/582/

50Ωと75Ωの特性インピーダンスが使われる理由

同軸ケーブルで75Ωがポピュラーな理由は、1960年代に用いられていた代表的なアンテナの出力インピーダンスに合わせたためです。50Ωの同軸ケーブルについては、ポリエチレン(比誘電率2.2)を絶縁層に用いた同軸ケーブルにおいて、表皮効果による損失を最少に抑える特性インピーダンスが51.1Ωだからです。当時のラジオ技術者は、覚えやすいように端数を切って50Ωという値を使っていたと言われています。プリント基板の上でLSIの間を接続する配線(伝送線路)では、特性インピーダンスに50Ωという値を採用するのが一般的です。50Ωは主に無線機等の電力の伝送用、75Ωは主にテレビ受像機等の映像・音声信号伝送用となります。
参考)https://www.to-conne.co.jp/about-connector-cable.html

インピーダンス整合の重要性と実装方法

インピーダンス整合とは、信号源、伝送線路、負荷のインピーダンスを全て一致させる考え方です。これにより、システム全体の反射を最小限に抑え、反射により戻ってしまうエネルギーを減らし、最大電力伝送を実現できます。例えば、伝送線路の特性インピーダンスをその構造や材料を調整することで50Ωに合わせるとすると、終端部に接続する抵抗(終端抵抗)の値を同様の50Ωに設定しなければなりません。こうした作業を「インピーダンス整合をとる」と呼びます。整合が不十分な場合、信号反射による波形の歪みが発生し、デジタル回路ではビットエラーの原因となり、アナログ回路では信号対雑音比(S/N比)の劣化をもたらします。
参考)https://www.oki-otc.jp/column/2024-001/2024-001.html

集中定数回路と分布定数回路の考え方の違い

集中定数回路とは、抵抗やインダクタ、キャパシタといった回路要素が一箇所に集められているもので、部品の空間的な広がりを考えなくてよい回路です。これらの要素は通常、回路図上では一点に凝縮して描かれ、その計算や分析は比較的簡単で、低周波応用に適しています。一方、分布定数回路は、回路要素が物理的に分散している、あるいは要素の影響が距離に依存するような状況をモデル化します。分布定数回路の場合、素子間を接続する線路も回路特性に影響を与え、線路上の位置による位相差によって、電圧、電流の大きさが変わることを考慮して設計を行う必要があります。該当回路が扱う波長λが、回路形状に対して相対的に十分大きい場合は集中定数回路とみなすことができます。
参考)https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/basic/107541/

特性インピーダンスの実測と最適化手法

特性インピーダンスを測定するには、インピーダンス測定器を使用します。代表的な測定器には、抵抗、インダクタンス、コンデンサのインピーダンスを測定できるLCRメータや、周波数帯域におけるインピーダンスを測定できるネットワークアナライザがあります。プリント基板設計においては、トレース幅、誘電体厚さ、比誘電率などのパラメータを調整することで特性インピーダンスを最適化します。高速デジタルシステムの正常で安定した動作のためには、主要信号線の特性インピーダンス制御が重要となります。特性インピーダンスの変化する箇所があるとそこで信号が反射し、それによって信号の位相が変化します。youtube​
参考)https://www.zuken.co.jp/club_Z/z/SI/Zo/Zo_090528.html?printstate=true

特性インピーダンスを考慮した伝送線路設計のポイント

伝送線路設計では、信号が波として伝搬していくことを考慮する必要があります。伝搬する電圧と電流の関係が特性インピーダンスです。信号が効率よく伝送されるためには、信号源(送信側)と受信機(受信側)のインピーダンスが、同軸ケーブルの特性インピーダンスと一致していることが重要です。一致しないと信号の一部が反射されて、信号の品質が劣化します。高速通信するデバイスにおいては、入力インピーダンスを低くする例が多く見られます。負荷側に電流が多く流れるため電力を多く消費しますが、外来ノイズに強く安定した伝送を行う事ができます。
参考)https://www.p-ban.com/technical/guideline/Imp/Imp_1.html

特性インピーダンスの基本概念と分布定数回路における意味を詳しく解説しています(マクニカ)
伝送線路と特性インピーダンスの基礎知識を図解で分かりやすく説明しています(Engineer Climb)
プリント基板設計におけるインピーダンス整合の重要性と実装方法について詳細に解説しています(OKI OTC)
特性インピーダンスの計算公式と信号伝送における役割を具体的に紹介しています(EMC・ノイズ対策.com)

 

 

 

 


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