

ウレタンシンナーは「ウレタン樹脂を溶かす/希釈する」ために、エステル類やケトン類を中心に、助剤として芳香族炭化水素類が配合されることが多いタイプのシンナーです。
実際のSDS例では、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メトキシブチルアセテート、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸ブチルなどが“成分と含有量”として列挙されます。
この「何が入っているか」の違いが、そのまま“溶け方(溶解力)”“乾燥の出方”“臭気の強さ”“健康リスク”“法規制の該当”に直結します。
現場でまず押さえるべきポイントは、同じ「ウレタンシンナー」でもメーカー・品番で中身が別物になり得ることです。
特にトルエン・キシレンは、溶解力の強さと引き換えに中枢神経系への有害性が問題になりやすく、乱用問題の背景から毒劇法の劇物指定・販売規制につながった経緯もあります。
一方で「トルエン・キシレン非含有」をうたう製品群もあり、同じ用途(希釈・洗浄)でも“成分設計でリスクを下げる”方向の製品が流通しています。
SDSで成分を確認する最短ルートは、第3項「組成、成分情報」です。
ここには成分名・CAS番号・含有量(Wt%)が載り、たとえばSDS例ではトルエン55%など、かなり高い割合で入っているケースも確認できます。
「たぶん一般的なシンナーだから大丈夫」ではなく、品番ごとに含有率が異なる前提で読み取るのが安全です。
また、同じSDS内で第2項にGHS分類(引火性液体、急性毒性、発がん性、生殖毒性など)がまとめられています。
参考)https://www2.panasonic.biz/jp/sumai/law/safety-data/pdf/te_RETAN_PG_thinner_standard_0.pdf
このGHS分類は、成分情報とセットで“何がどれだけ入っているから、その危険有害性が付くのか”を理解する助けになります。
さらに第8項には管理濃度や許容濃度(例:トルエン20ppm、キシレン50ppm等)が載り、換気やマスク選定の根拠として使えます。
参考:成分と含有量(第3項)、GHS分類(第2項)、許容濃度(第8項)まで一通り確認できるSDS例
https://www2.panasonic.biz/jp/sumai/law/safety-data/pdf/te_RETAN_PG_thinner_standard_0.pdf
ウレタンシンナーに含まれ得る有機溶剤は、有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)、消防法など複数の枠で規制対象になり得ます。
SDS例でも、適用法令として「消防法:危険物第4類引火性液体 第1石油類」「有機溶剤中毒予防規則(第2種有機溶剤等)」などが明記されています。
つまり“現場の安全対策”だけでなく、“保管・運搬・表示・廃棄”までルールが連動するので、製品ラベルよりSDSの法令欄を信用した方が判断が速いです。
実務で事故が起きやすいのは、引火性(蒸気滞留→爆発)と、吸入ばく露(頭痛・めまい・急性中毒)です。
SDSは「屋外または換気の良い場所でのみ使用」「防爆型の機器を使用」「静電気放電の予防」「容器・受器の接地」といった具体的な予防策まで書いています。
塗装・清掃での“ちょい拭き”でも、密閉空間・床面に蒸気がたまる条件が揃うと危険側に一気に寄るため、換気設計を軽視しないのが基本です。
SDSは保護具を「有機ガス用防毒マスク」「保護手袋」「保護メガネ」など、カテゴリ指定で要求するのが一般的です。
さらに設備対策として「局所排気」「蒸気が滞留しない排気」「防爆型設備」「接地(静電気対策)」まで踏み込んでいます。
“臭いが弱い=安全”ではなく、臭気と毒性は一致しないことがあるため、作業前にSDSの第8項(ばく露防止)と第2項(危険有害性)をセットで見るのが確実です。
皮膚トラブルは「溶剤で落とせば早い」が最悪手になりがちです。
SDS例でも、皮膚に付着した場合は“大量の水と石鹸等で洗い落とし、溶剤・シンナーは使用しない”と明確に書かれています。
これは溶剤で再脱脂して皮膚バリアを壊し、吸収や炎症を助長するリスクを避けるためで、現場教育で意外と抜けやすいポイントです。
ウレタン塗装のトラブルで、成分起因なのに“気温・腕・乾燥不足”扱いされやすいのが硬化不良です。
シンナーは用途別に成分設計が異なり、樹脂との相性が悪いと「うまく溶けない」だけでなく、反応系(硬化)に悪さをする方向にも働き得ます。
実務では「同じ“シンナー”でも別物」という前提に立ち、塗料メーカー指定の希釈剤(専用ウレタンシンナー)を優先し、代替するならSDSの成分と注意事項まで読んでから判断するのが安全です。
また、洗浄工程で使ったシンナーが残留していると、次工程の塗膜形成に影響が出ることがあります。
一方で“乾燥すれば溶剤成分は残留しない”という整理もあり、問題は「乾いたつもり」になっている半乾き・換気不足・低温で揮発が遅いケースに集中します。
独自視点としては、SDSの沸点・引火点など物性を見て「今の現場温度と換気で本当に抜けるか」を逆算し、待ち時間・送風・局所排気の手当まで作業計画に組み込むのが、品質トラブルの予防策として効きます。
| 確認したいこと | SDSで見る場所 | 現場の判断ポイント |
|---|---|---|
| 主な成分(例:トルエン、MIBK、酢酸ブチル等) | 第3項 組成・成分情報 | 同名製品でも配合が違う前提で、含有量まで確認する。 |
| 健康影響(吸入、皮膚刺激、臓器影響など) | 第2項 危険有害性の要約 / 第11項 有害性情報 | “刺激が弱い”体感に頼らず、分類と注意書きを優先する。 |
| 換気・保護具(マスク、手袋、メガネ) | 第8項 ばく露防止及び保護措置 | 有機ガス用防毒マスク、溶剤が浸透しない手袋など要求を満たす。 |
| 火災・静電気・防爆 | 第7項 取扱い及び保管 / 第5項 火災時の措置 | 接地、防爆機器、火花防止工具などを作業条件に落とす。 |
| 法令(消防法、有機則、特化則など) | 第15項 適用法令 | 保管・運搬・廃棄も含め、社内ルールと整合させる。 |