

一般に検索される「薬事法 薬機法 違い」の結論は、薬事法と薬機法が“まったく別の法律”という意味で違うのではなく、旧称が薬事法で、改正を経て通称として薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と呼ばれるようになった、という整理が基本です。
この「名称変更」だけが一人歩きすると誤解が残りますが、実務上のポイントは、名称変更と同時期に制度面でも見直しが入り、医療機器の扱い方や安全対策の枠組みがより明確化された点にあります。
特にビジネス側(製造・販売・広告・Web運用)では「薬事法のつもりで古い解説を読んでいたら、現行運用(薬機法)とズレる」事故が起きやすいので、用語よりも“現行ルールの条文・通知”に当てる姿勢が重要です。
・参考:医薬品等の広告規制(条文の抜粋、誇大広告等、承認前広告の禁止、措置命令、課徴金制度の根拠がまとまっている)
厚生労働省|医薬品等の広告規制について
薬機法は、医薬品だけの法律ではなく、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品まで含めた「医薬品等」を広く対象にして、品質・有効性・安全性の確保と、保健衛生上のリスク低減を目的に規制する枠組みです。
この“対象の広さ”が、建築従事者にとっても無関係ではない理由です。たとえば現場の衛生・安全を支える製品の中には、医療機器に該当し得るもの(例:体温計、血圧計など家庭向けでも医療機器に入る類型)や、医薬部外品・化粧品として流通する衛生関連品が混在します。
そのため、施工会社の購買担当や安全衛生担当が「現場で使う製品を紹介する社内ブログ」「協力会社向け配布資料」「展示会の掲示」といった形で情報発信するとき、効能効果の言い方が広告規制の射程に入ることがあります。
薬機法の広告規制で押さえるべき核は、「虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」という原則と、「承認・認証を受けていない医薬品等の広告は禁止」という強い禁止です。
重要なのは、規制の主語が「何人も」になっている点で、メーカーや販売業者だけでなく、ブログ運営者・広告代理店・アフィリエイター・現場の広報担当なども“やり方次第で”当事者になり得ます。
さらに、厚労省の整理では、誇大広告等(第66条)だけでなく、承認前広告の禁止(第68条)や、違反広告に対する措置命令(第72条の5)など、行政が介入できる構造が明確に用意されています。
また、広告規制違反(誇大広告等)には課徴金制度が設けられており、一定の売上規模があると“炎上で終わらず、経営インパクトのある金額”に繋がる可能性がある点も、現場を抱える企業ほど現実的なリスクになります。
・参考:誇大広告等(第66条)、承認前広告の禁止(第68条)、措置命令(第72条の5)、課徴金(第75条の5の2)などの条文根拠
厚生労働省|医薬品等の広告規制について
薬機法の怖さは「違反したらダメ」だけでなく、違反後のルートが複線的である点です。行政からは、行為の中止や再発防止、公示などを命じる措置命令があり、さらに広告規制違反については課徴金納付命令という“金銭面の制裁”が制度として用意されています。
ここで見落とされがちなのが、企業が受ける損害は課徴金や行政処分だけではないことです。建築業のように元請・下請・協力会社が連携する業態では、コンプライアンス違反が「入札・指名」「協力会社選定」「取引継続可否」に波及し、現場運営そのものの信用コストを押し上げます。
つまり、薬機法は“医療や美容の会社だけの話”ではなく、「社内外に情報を出す会社」の統治の問題として扱ったほうが実務に合います。
検索上位の記事は「名称変更」「広告NG表現」「対象製品の区分」に寄りがちですが、建築従事者向けに一段深掘りするなら、“現場の表示物や配布物”が広告に化ける瞬間を押さえるのが効果的です。
たとえば、以下のようなものは社内では「注意喚起」「製品紹介」「作業手順」でも、外部の人が閲覧できる状態になった瞬間に「流布」と評価され得ます(Web掲載、SNS投稿、オープンな現場掲示、展示会配布など)。
✅ 現場の熱中症対策品や衛生関連品を「予防できる」「治る」「効く」と断定する掲示
✅ 協力会社に配る“推奨品リスト”に、未承認の効能効果のような文言が混じる資料
✅ 施工実績の紹介記事で、医療機器・衛生商材を過度に持ち上げる比較表(「他社の3倍」など根拠不明の優良誤認の形になりやすい)
ここでの実務上のコツは、言い回しを「機能・仕様・使用シーン」に寄せ、効能効果の断定や保証に見える表現を避けることです。たとえば「感染を防ぐ」ではなく「清拭に用いる」「衛生管理の手順で使用する」といった“用途の説明”に着地させると、現場の役にも立ち、リスクも下げやすいです。
もう一つの意外な盲点は、協力会社・代理店・現場担当が善意で作ったチラシやブログほど、法務レビューを通らずに公開されやすい点です。社内ルールとして「医薬品等に触れそうなコンテンツは公開前に一次チェック(広告規制観点)を通す」運用を決めるだけで、再発防止としての説明責任も立てやすくなります。