

座屈計算 公式で最も基本になるのは、弾性座屈(オイラー座屈)の考え方です。代表形として、座屈荷重は \(P_{cr}=\left(\frac{n\pi}{K\ell}\right)^2EI\) のように、有効座屈長さ(Kℓ)と曲げ剛性EIで表されます(nは座屈モードの次数で、通常はn=1を用います)。
ここで重要なのは、座屈が「圧縮応力が材料強度に達したから壊れる」ではなく、部材の曲げ変形が不安定化して急に横に逃げる現象だという点です。だからこそ、同じ断面積でも断面二次モーメントIが小さい軸(弱軸)回りで先に座屈しやすく、EIがそのまま耐性の指標になります。
参考)コラム:【プラント】部材設計と座屈(鋼構造設計規準/許容応力…
実務の計算では、式そのものよりも、EIの入力値を「どの軸回りで評価するか」「Eをどの材料値として採用するか(規準・告示・メーカー値)」が結果に直結します。特に軽量材や材料規定が別建ての材料(例:アルミ)では、許容応力度や基準強度とあわせてEの扱いを設計根拠として揃える必要があります。
参考)構造力学(応用)第15回
ポイント:オイラー式は「長柱(弾性座屈支配)」の世界で強い一方、短柱寄りでは非弾性座屈(降伏や残留応力の影響)が前に出てくるため、許容応力度表や規準式へ自然に接続できるよう、次の「細長比」を必ずセットで理解します。
座屈計算 公式の難所は、ほぼ例外なく「有効座屈長さ」です。一般に有効座屈長はKℓで表し、端部条件(固定・ピン・自由など)によってKが変わるため、同じ実長ℓでも座屈荷重が大きく動きます。
端部条件の典型値は学習資料でも整理されており、例えば両端ピンで lk=1.0l、一端ピン他端固定で lk=0.7l、両端固定で lk=0.5l、一端自由他端固定で lk=2.0l のように示されます。これらは「どれくらい回転・変位が拘束されるか」を、等価な長さに置き換えているイメージです。
参考)【構造力学の基礎】オイラー座屈【第18回】
ここでの実務的なコツは、Kを“支持条件の名前”で決めず、拘束を与える要素を分解して判断することです。例えば、梁・床の水平構面、接合部の回転剛性、ブレースの有無、柱脚の詳細(露出・根巻・埋込)などで、同じ「固定」に見えても回転拘束の実態が異なります。
参考)鉄骨造の建築で考慮すべき座屈長の計算
さらに、部材が座屈する方向は1方向とは限りません。強軸と弱軸で別々にK(座屈長)を設定し、より厳しい(細長比が大きい)側でチェックする、という考え方が設計上の基本動作になります。
座屈計算 公式を設計に落とすとき、「細長比」が橋渡しになります。細長比は一般に \( \lambda = \frac{K\ell}{r}\)(rは断面二次半径、資料によってiやkの記号も使われます)として整理され、座屈長さが長い・断面が細いほどλが大きくなり、座屈しやすくなります。
断面二次半径は、断面二次モーメントIと断面積Aから r=I/A として定義され、同じ断面積でもIが大きい(曲がりにくい)形ほどrが大きくなり、細長比は小さくできます。
参考)【今月のまめ知識 第30回】座屈について::NIC アルファ…
また、許容応力度設計の系では、細長比がある境界を超えると弾性座屈(オイラー的な扱い)に寄せ、境界以下では非弾性座屈の式(あるいは規準の許容圧縮応力度の式・表)で評価する、という整理がされています。細長比λと限界細長比Λの大小で扱いが分かれる、という説明は設計実務の理解に有効です。
ここで意外と見落とされるのが「弱軸側のr」を必ず拾うことです。断面性能表の見た目で強軸側を使ってしまうと、計算上は“強い柱”に見えても、実際は弱軸座屈が支配して危険側の判断になります。
座屈計算 公式を実際に回すと、単位と入力の整合が品質を決めます。オイラー系では \(P_{cr}\) が \(\mathrm{N}\) で出るように、Eを \(\mathrm{N/mm^2}\)、Iを \(\mathrm{mm^4}\)、有効座屈長さを \(\mathrm{mm}\) に揃えるのが安全です(mとmmの混在が最頻出ミスです)。
チェック手順は、暗算で可能な「傾向確認」を必ず挟むのが現場向きです。例えば、Kℓが2倍なら座屈荷重は1/4になる(長さの二乗に反比例)、Iが2倍なら座屈荷重も2倍になる、という感覚的な整合を見ます。
参考)https://d-engineer.com/zairiki/zakutu.html
計算例の作り方としては、まず端部条件からKを仮定し、有効座屈長さKℓを決め、次に断面性能から弱軸側IとA(→r)を確認し、細長比で「オイラーを使ってよい領域か」を判断する流れが安定します。端部条件のKは標準値を“仮置き”し、後から詳細(柱脚ディテールやブレース条件)で更新しても設計判断が崩れにくいです。
表として、現場のセルフチェック項目をまとめます。
| チェック項目 | 見るべきもの | ミスの症状 |
|---|---|---|
| 端部条件 | K(有効座屈長さ係数) | 座屈荷重が過大(安全側に見える) |
| 座屈方向 | 強軸・弱軸のI、r | 弱軸座屈を見落とす |
| 単位系 | E:N/mm2、I:mm4、L:mm | 桁が10^6〜10^12で崩れる |
| 適用範囲 | 細長比λと弾性/非弾性の切替 | 短柱にオイラーを当てて不整合 |
最後に、式の適用以前の「形」の確認として、初期不整(元たわみ)や偏心、接合部の遊びがあると、理論式の座屈荷重よりかなり低い荷重で横変形が始まることがあります。オイラー式は“理想柱”の臨界値なので、実務では余裕度(安全率・許容応力度)で吸収する設計思想とセットで理解すると事故が減ります。
座屈計算 公式は、単に「P=π²EI/L²」を暗記して終わりではありません。日本の告示(例:アルミニウム合金材に関する国土交通省告示第409号の資料)では、座屈を“細長比だけ”でなく、材料の基準強度Fとヤング係数Eを含む「一般化有効細長比」\(\lambda_c\) の形で整理している点が、設計実務の理解に意外と効きます。
資料中では、λc を λc=(ikl)π2EF の形で定義し(記号は資料内表記)、ここでklが有効座屈長さ、iが最小断面二次半径、Fが基準強度、Eがヤング係数として説明されています。つまり「同じ形状でも材料が変われば座屈評価のスケールが変わる」ことを、規定側の式がはっきり言語化しています。
この整理は、鋼材の感覚で「Eは同じだし、形状だけ見ればいい」と思いがちな場面で特に役立ちます。材料ごとにFやE、さらには溶接による軟化域の扱いが設計体系として用意されているため、座屈を“公式の暗記”ではなく“材料規定+部材安定”として一体で扱えるようになります。
また、告示409の資料には曲げ材の横座屈に関して、有効座屈長さ係数(例:0.55、0.75といった値)の扱いが明記され、支持条件や補剛条件とリンクしていることが読み取れます。圧縮材だけでなく、横座屈や補剛間隔を含めて「どの長さが効いているか」を設計者が説明できる状態にしておくと、審査・レビューでも強いです。
以下は、本文の理解を深めるための参考リンクです(権威性のある一次資料として、特に“定義”の確認に使えます)。
告示409の本文(許容応力度・座屈・一般化有効細長比の定義を確認できる)。
国土交通省告示第409号(資料)PDF
有効座屈長さ係数Kと座屈荷重式の関係(端部条件とKの考え方を図で追える)。
構造力学(応用) 有効座屈長と座屈荷重