

絶縁耐力試験(耐電圧試験)は、電気機器や電路の「絶縁部分」が、規定された電圧を規定された時間だけ印加しても絶縁破壊を起こさないかを確認する試験です。
ここでいう絶縁破壊は、絶縁物が耐えきれずに急激に電流が増えたり、放電・短絡に至って安全性が失われる状態を指し、試験はその“余裕度”を実務的に検証します。
建築設備の文脈では、受変電設備更新、改修後の据付確認、ケーブル敷設替え、キュービクルや盤内の改造などで「施工で絶縁が傷んでいないか」を説明責任として示す場面が多いはずです。
参考)高圧受電設備の更新時に欠かせない「絶縁耐力試験」とは?
さらに、工場でJIS/JEC等に基づく耐電圧試験に合格している機器は、技術基準に必要な絶縁性能を満たすと考えられる一方、輸送・現地組立の影響があり得るため、現地での最終確認の考え方が整理されています。
現場で誤解されやすい点として、「絶縁抵抗測定=OKだから耐電圧もOK」とは限りません。
参考)6.6kv高圧ケーブルの耐圧試験で直流電圧での試験はケーブル…
絶縁抵抗は雰囲気条件(湿度、表面汚損)に強く影響され、測定条件の記録がない測定値は意味を持ちにくい、という厳しい指摘もあるため、耐電圧とセットで位置づけるのが安全側です。
耐電圧試験は「規定時間の印加」が基本で、一般的な電気製品の品質・安全確認として実施される、という整理がされています。
また、規定としては1分間印加が基本とされる一方、実務では「1分値の1.2倍を1秒」などの短時間方式が用いられる場合がある、という実務寄りの説明もあります。
一方で、電路・送変電設備などの世界では、現地据付状態での最終確認として「常規対地電圧を10分間印加」する考え方が示されており、10分という時間は従来からの実績に基づく、とされています。
ここでいう常規対地電圧は、通常運転で主回路と大地の間に加わる電圧であり、10分印加で絶縁性能に影響がないことを確認する、という位置づけです。
つまり現場の整理としては、次のように“試験の文脈”を分けると説明しやすくなります。
また、現場で「なぜ交流試験は大掛かりになるのか?」を説明するには、充電電流(静電容量による電流)の存在が重要です。
絶縁物は電気回路的にコンデンサのように振る舞い、交流印加では周波数と静電容量に応じて充電電流が流れるため、設備が大きいほど必要容量が増えやすい、という背景があります。
交流と直流の大きな違いは、「交流は充電電流が流れやすく、設備規模によって試験電源が大型化しやすい」点です。
このため長距離の高圧・特別高圧ケーブル等では、交流での実施が困難な場合に直流試験を選べる趣旨が説明されている資料もあります(直流のほうが比較的簡単に実施し得る、という方向性)。
加えて、絶縁用保護具などの耐電圧試験の世界では、充電電流の測定自体に意味があり、電撃安全上の観点(人体の感知電流・離脱電流など)や、材料の等価回路(CとRの並列)としての評価指標にもなり得る、と整理されています。
実務に落とすなら、「遮断電流設定(リーク上限)をどこに置くか」「充電電流が大きい対象での誤判定をどう避けるか」を、事前に仕様・対象物の特性で説明できるようにしておくのが有効です。
また、交流印加では電圧上昇速度(昇圧の仕方)も安全と再現性に直結します。
例えばJIS T 8010では、規定試験電圧に達するまで約1000V/秒で昇圧する、など昇圧プロファイルの考え方が示されており、現場手順を標準化するヒントになります。
耐電圧試験は「準備→試験→結果確認→記録→片付け」という工程で管理するのが基本で、計測器メーカーの簡易手順でも流れが明示されています。
また、測定・判定の再現性を上げるには、温度・湿度・試験電圧・試験時間などを試験成績書に記録する、という規格の要求が参考になります。
実務での手順は、最低限次の粒度まで“作業標準”に落とすと、施工品質と説明責任が安定します。
安全面では、試験そのものが高電圧を扱うため「人が触れる可能性のある金属部」「二次回路」など、印加箇所の考え方が整理された資料が役に立ちます。
参考)絶縁抵抗と絶縁耐力
また、絶縁抵抗測定が雰囲気条件に左右されるという話は、耐電圧試験でも「汚損・湿度・沿面」の影響として実務上は無視できないため、清掃や乾燥、表面状態の確認まで含めて段取りするのが事故防止に繋がります。
参考:計測器の基礎として、耐電圧(耐圧)試験の位置づけや試験箇所の例がまとまっている(設計・検査の説明に使える)
https://www.smfl-r.co.jp/measure/solutions/recommend/the_basics/withstand_voltage_test/
参考:電路の絶縁耐力の確認方法(常規対地電圧10分など、現地確認の考え方がまとまっている)
https://www.jesc.gr.jp/jesc-assent/pdf1/jesc_e7001_2021e.pdf
検索上位の一般解説では「電圧・時間・交流/直流」が中心になりがちですが、建築の現場管理では“沿面(表面を伝う距離)”の発想が意外に効きます。
なぜなら、絶縁のトラブルは材料の厚み方向(貫通)だけでなく、表面の汚れや水分で「沿面放電」として起こることがあり、これは施工環境(粉じん、結露、雨天)に強く依存するからです。
JIS T 8010では、耐電圧試験における沿面距離の考え方や、散水後に気中試験を行う適用(建設用防護管に適用)といった“水分を与えた状態での評価”が示されています。
また、試験室の標準状態(温度・湿度)に触れた上で、供試品を試験前に一定時間室内に置く、散水試験ではIPコードの散水方法に沿う、といった段取りが書かれており、現場の「雨の翌日に測ったら値が変だった」を説明するヒントになります。
建築従事者向けに噛み砕くと、次のチェック観点を“試験前点検”に入れるだけで、不合格時の切り分けが速くなります。
最後に、耐電圧試験の結果を「合否」だけで終わらせず、温湿度・表面状態・昇圧条件・電流挙動までセットで残すと、翌年の点検や上司説明で説得力が段違いに上がります。