1液ウレタン接着剤と施工と下地とプライマー

1液ウレタン接着剤と施工と下地とプライマー

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1液ウレタン接着剤と施工

1液ウレタン接着剤:現場で最初に押さえる3点
硬化は「湿気」と「時間」

1液は空気中の水分などと反応して硬化する前提。温度・湿度・換気が品質に直結します。

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下地とプライマーが勝負

レイタンス・粉ふき・油分・水分が残ると、強度以前に密着が崩れます。必要な下地補強やプライマー選定が要です。

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SDSに沿った安全管理

皮膚感作・呼吸器感作などのリスクがあるため、保護具と換気、取り扱い手順の標準化が重要です。

1液ウレタン接着剤の特徴と湿気硬化の仕組み


1液ウレタン接着剤(1液型ポリウレタン系)は、基本的に「主剤1つ」で使えて、現場での配合ミスを避けやすい一方、硬化は空気中の水分や下地表面の吸着水分に依存します。
一液湿気硬化形のポリウレタン系は分子内にイソシアネート基(−NCO)を持ち、水分と反応して硬化が進み、最終的には三次元網目構造を作って強靭な層になります。硬化過程ではカルバミン酸ができ、分解してアミンを生じ、そのアミンがさらにイソシアネートと反応してウレア結合を形成する、という流れが説明されています。
この「湿気硬化」という性質が、1液ウレタン接着剤の扱いやすさと難しさの両方を生みます。


  • 乾燥し過ぎる現場(冬期の乾燥、強すぎる除湿、換気不足で局所的に乾きムラなど)では、硬化の立ち上がりや最終物性が想定とズレることがあります。
  • 逆に湿気が多すぎる・下地水分が多い状況では、界面のトラブル(膨れ、白化、密着不良の誘発)を疑うべきです。

「意外に見落とされがち」なのは、表面だけ乾いて見える下地でも、微細な空隙や粉体層(レイタンス等)が水分を抱え、接着層の反応や界面状態を乱す点です。湿気硬化は味方にも敵にもなるので、施工管理は“材料”より“環境と下地”が主戦場になります。


1液ウレタン接着剤の下地処理とプライマーの要点

現場トラブルの多くは、接着剤の性能不足ではなく「下地処理の不足」と「プライマーの省略・誤選定」で起こります。ウレタン系の改修キットなどでも、下地処理は接着力を決める重要工程であり、チョーキング・油脂・埃などは高圧洗浄等で除去しないと剥離や膨れの原因になる、と明確に注意喚起されています。
また、モルタル・コンクリート下地向けのウレタン防水用プライマーでは、成分が「1液湿気硬化型ウレタン樹脂」で、モルタル・コンクリートとの付着性に優れる、かつF☆☆☆☆規格であることが製品情報に示されています。ここから、同じ「ウレタン」でも、接着(張り付け)用途と下塗り(プライマー)用途が分かれ、役割が違う点が読み取れます。


下地処理〜プライマーの判断を、現場向けに短く整理すると以下です。


  • コンクリート・モルタルで「粉ふき/脆弱層/レイタンス」が疑わしい:プライマー以前に、研削・目荒らし・除去を優先(残すと“粉の上に接着”になる)。
  • 油分・離型剤・ワックスが疑わしい:溶剤拭きより、基本は適正洗浄と物理的除去(油は“界面の剥離材”になる)。
  • 吸い込みが激しい下地:プライマーで吸い込み止め(接着剤が下地に持っていかれると、塗布量不足と同じ結果になりやすい)。
  • 非吸水・緻密下地:プライマーの適合確認と、必要なら目荒らし(“濡れ性”が出ないと界面が育たない)。

参考:モルタル・コンクリート下地のウレタン防水用プライマーの成分(1液湿気硬化型ウレタン樹脂)とF☆☆☆☆について
日本特殊塗料:プルーフロンプライマーS

1液ウレタン接着剤の施工条件と塗布量の考え方

「1液だから簡単」と言われがちですが、施工の再現性は“塗布量・オープンタイム・圧着・養生”で決まります。床材分野では、床仕上げ材用接着剤のJIS(JIS A 5536)において、接着剤の剤形としてウレタン樹脂系が規定され、性能評価の考え方(試験条件や強さの扱い)が整理されています。つまり、現場でも「なんとなく強そう」ではなく、用途・下地・水中浸せき後の評価など、条件付きで性能を見る文化が前提です。
また、床用の一液性反応硬化形(ウレタン樹脂系)接着剤の製品情報では、ホルムアルデヒド放散等級としてF☆☆☆☆(5μg/m²・h以下)に対応する旨や、標準塗布量(例:0.33kg/m²)など、施工数量の基準が明示されています。塗布量が数字で提示されているのは、少なすぎると接着層が連続膜にならず、過多でも硬化や収まりに悪影響が出るためです。


実務で効くポイントは、次の“ズレ”を潰すことです。


  • 下地の吸い込みで、実質的に塗布量が減る(吸い込み止め・プライマーが効く領域)。
  • 気温が低いと粘度が上がり、塗り広がりが悪く「塗ったつもりで不足」になりやすい。
  • 圧着が弱いと、接着剤が界面に均一に回らず、点接着になって剥離に繋がる。
  • 硬化前に加熱や荷重が入ると、十分な硬化が得られない状態で性能を落とすことがある(床材の施工注意でも、硬化不足状態での加熱が突き上げ・膨れ・剥がれの原因になり得る趣旨が示されています)。

参考:一液性反応硬化形(ウレタン樹脂系)接着剤のF☆☆☆☆と標準塗布量の例(床材向け)
田島ルーフィング:一液性反応硬化形接着剤(ウレタン樹脂系溶剤形)

1液ウレタン接着剤の安全とSDS(皮膚感作・呼吸器感作)

建築現場では「臭い」だけが安全指標になりがちですが、1液ウレタン接着剤はSDS(安全データシート)を前提に管理すべき材料です。実際に、ウレタン一液型の床用ボンドのSDSでは、イソシアネートを含むため蒸気やミスト吸入で健康障害のおそれがあること、また「アレルギー性皮膚反応」「吸入するとアレルギー、ぜん息又は呼吸困難」などの危険有害性が記載されています。
さらに、別のSDSでもウレタン樹脂系一液形接着剤について、GHS分類として皮膚感作性(区分1)が示されています。つまり、短期の刺激だけではなく、繰り返し曝露で“感作(アレルギー化)”するリスクが現実的です。


現場での実装としては、次が効きます。


  • 保護具:耐薬品手袋、長袖、保護眼鏡、必要に応じて有機ガス用防毒マスク(ミストが出る作業は特に)。
  • 換気:冬場に締め切るほどリスクが上がるので、臭気が少なくても換気を固定ルール化。
  • 教育:新人に「一回かぶれたら体質化することがある」点を共有(怖がらせるのでなく、予防の優先度を上げる)。
  • 皮膚付着時:溶剤で拭き取るより、SDSに沿って洗浄(溶剤は皮膚バリアを壊しやすい)。

参考:ウレタン一液型ボンドのSDS(イソシアネート含有、皮膚感作・呼吸器感作の記載)
Panasonic:ウッディフロアボンド(ウレタン一液型)SDS

1液ウレタン接着剤の独自視点:撤去性と「後工程」を逆算する

検索上位の解説は「選び方」「施工手順」「下地処理」「安全」に寄りがちですが、建築従事者の実務では“将来の撤去・改修”まで含めて接着設計をすると、クレームが減ります。特に1液ウレタン接着剤は、硬化後に弾性と強靭さが出やすく、再剥離や除去が難航しやすい側面があります。
実際に、ウレタン接着剤の剥離・除去は「機械的剥離」「熱」などが語られ、化学溶剤は浸透性があっても、微細溝などで剥離生成物がゲル化して閉塞し、除去が不完全になるケースがあること、除去が不完全だと再接着やめっき工程で密着不良やブリスター原因になり得ることが指摘されています。ここで重要なのは、建築でも同じで「撤去残渣が次の接着不良を呼ぶ」連鎖が起きる点です。


そこで、最初の施工時点で“後工程”を逆算します。


  • 将来張替えが確実な場所(テナント、原状回復がある区画、設備更新が頻繁なライン):剥がしやすさ・下地保護を含めて仕様化(全面強固接着が最適とは限らない)。
  • 下地を傷めたくない面(既存防水層の上、薄塗り下地、軽量下地):プライマーや目荒らしの強さを「強ければ良い」で決めず、下地の許容を見て選定。
  • 部分補修が起きやすい部位(端部、見切り、動きの大きい取り合い):接着剤単体に頼らず、端部処理や納まりで負担を分散。

“意外な落とし穴”は、撤去時に熱をかけると周辺材(床材、下地、断熱材、塗膜)まで巻き込んで劣化させる点です。最初から「撤去時の方法」を想定しておくと、材料選定・塗布範囲・厚み・納まりが変わり、結果として現場の総コストが下がります。


参考:ウレタン接着剤の除去で「完全に除去することが困難」「除去不完全が密着不良やブリスター原因」になり得る点
長瀬産業グループ:ウレタン接着剤の剥がし方と除去方法




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