

1液ウレタン接着剤(1液型ポリウレタン系)は、基本的に「主剤1つ」で使えて、現場での配合ミスを避けやすい一方、硬化は空気中の水分や下地表面の吸着水分に依存します。
一液湿気硬化形のポリウレタン系は分子内にイソシアネート基(−NCO)を持ち、水分と反応して硬化が進み、最終的には三次元網目構造を作って強靭な層になります。硬化過程ではカルバミン酸ができ、分解してアミンを生じ、そのアミンがさらにイソシアネートと反応してウレア結合を形成する、という流れが説明されています。
この「湿気硬化」という性質が、1液ウレタン接着剤の扱いやすさと難しさの両方を生みます。
「意外に見落とされがち」なのは、表面だけ乾いて見える下地でも、微細な空隙や粉体層(レイタンス等)が水分を抱え、接着層の反応や界面状態を乱す点です。湿気硬化は味方にも敵にもなるので、施工管理は“材料”より“環境と下地”が主戦場になります。
現場トラブルの多くは、接着剤の性能不足ではなく「下地処理の不足」と「プライマーの省略・誤選定」で起こります。ウレタン系の改修キットなどでも、下地処理は接着力を決める重要工程であり、チョーキング・油脂・埃などは高圧洗浄等で除去しないと剥離や膨れの原因になる、と明確に注意喚起されています。
また、モルタル・コンクリート下地向けのウレタン防水用プライマーでは、成分が「1液湿気硬化型ウレタン樹脂」で、モルタル・コンクリートとの付着性に優れる、かつF☆☆☆☆規格であることが製品情報に示されています。ここから、同じ「ウレタン」でも、接着(張り付け)用途と下塗り(プライマー)用途が分かれ、役割が違う点が読み取れます。
下地処理〜プライマーの判断を、現場向けに短く整理すると以下です。
参考:モルタル・コンクリート下地のウレタン防水用プライマーの成分(1液湿気硬化型ウレタン樹脂)とF☆☆☆☆について
日本特殊塗料:プルーフロンプライマーS
「1液だから簡単」と言われがちですが、施工の再現性は“塗布量・オープンタイム・圧着・養生”で決まります。床材分野では、床仕上げ材用接着剤のJIS(JIS A 5536)において、接着剤の剤形としてウレタン樹脂系が規定され、性能評価の考え方(試験条件や強さの扱い)が整理されています。つまり、現場でも「なんとなく強そう」ではなく、用途・下地・水中浸せき後の評価など、条件付きで性能を見る文化が前提です。
また、床用の一液性反応硬化形(ウレタン樹脂系)接着剤の製品情報では、ホルムアルデヒド放散等級としてF☆☆☆☆(5μg/m²・h以下)に対応する旨や、標準塗布量(例:0.33kg/m²)など、施工数量の基準が明示されています。塗布量が数字で提示されているのは、少なすぎると接着層が連続膜にならず、過多でも硬化や収まりに悪影響が出るためです。
実務で効くポイントは、次の“ズレ”を潰すことです。
参考:一液性反応硬化形(ウレタン樹脂系)接着剤のF☆☆☆☆と標準塗布量の例(床材向け)
田島ルーフィング:一液性反応硬化形接着剤(ウレタン樹脂系溶剤形)
建築現場では「臭い」だけが安全指標になりがちですが、1液ウレタン接着剤はSDS(安全データシート)を前提に管理すべき材料です。実際に、ウレタン一液型の床用ボンドのSDSでは、イソシアネートを含むため蒸気やミスト吸入で健康障害のおそれがあること、また「アレルギー性皮膚反応」「吸入するとアレルギー、ぜん息又は呼吸困難」などの危険有害性が記載されています。
さらに、別のSDSでもウレタン樹脂系一液形接着剤について、GHS分類として皮膚感作性(区分1)が示されています。つまり、短期の刺激だけではなく、繰り返し曝露で“感作(アレルギー化)”するリスクが現実的です。
現場での実装としては、次が効きます。
参考:ウレタン一液型ボンドのSDS(イソシアネート含有、皮膚感作・呼吸器感作の記載)
Panasonic:ウッディフロアボンド(ウレタン一液型)SDS
検索上位の解説は「選び方」「施工手順」「下地処理」「安全」に寄りがちですが、建築従事者の実務では“将来の撤去・改修”まで含めて接着設計をすると、クレームが減ります。特に1液ウレタン接着剤は、硬化後に弾性と強靭さが出やすく、再剥離や除去が難航しやすい側面があります。
実際に、ウレタン接着剤の剥離・除去は「機械的剥離」「熱」などが語られ、化学溶剤は浸透性があっても、微細溝などで剥離生成物がゲル化して閉塞し、除去が不完全になるケースがあること、除去が不完全だと再接着やめっき工程で密着不良やブリスター原因になり得ることが指摘されています。ここで重要なのは、建築でも同じで「撤去残渣が次の接着不良を呼ぶ」連鎖が起きる点です。
そこで、最初の施工時点で“後工程”を逆算します。
“意外な落とし穴”は、撤去時に熱をかけると周辺材(床材、下地、断熱材、塗膜)まで巻き込んで劣化させる点です。最初から「撤去時の方法」を想定しておくと、材料選定・塗布範囲・厚み・納まりが変わり、結果として現場の総コストが下がります。
参考:ウレタン接着剤の除去で「完全に除去することが困難」「除去不完全が密着不良やブリスター原因」になり得る点
長瀬産業グループ:ウレタン接着剤の剥がし方と除去方法