

1成分形シーリング材は、現場で主剤と硬化剤を練り混ぜる必要がなく、カートリッジ等からそのまま施工できる形態のシーリング材です。JIS A 5758では、1成分形シーリング材を「あらかじめ施工に供する状態に調製したシーリング材」と定義しており、製品形態としても「1成分形/2成分形」を明確に区分しています。さらにJIS A 5758では、主成分(例:シリコーン系など)・製品形態(1成分形など)・耐久性区分などの組合せで種類が整理され、材料選定の言語が共通化されています。
現場目線での利点は、「混練ミスによる硬化不良」「配合比のズレ」が原理的に起きないことです。2成分形は可使時間や混練の均一性が品質に直結しますが、1成分形はその手間がなく、作業者の熟練度差を吸収しやすい領域があります。一方で、1成分形は(特に湿気硬化タイプの場合)環境条件と断面寸法が硬化進行に影響しやすく、工程計画を読み違えると「触っては固いが内部が進んでいない」状態を作りやすい点は注意が必要です。
材料の呼び方も現場では混線しがちですが、「1成分形=全部同じ」ではありません。シリコーン系、変成シリコーン系など主成分が違えば、塗装適性や汚染リスク、被着体との相性が変わります。まずはJIS A 5758の区分と、メーカーが提示する適用部位(外装・内装、サッシ回り、ALC、屋根板金など)をセットで確認し、仕様書と現場の収まりに落とし込むのが安全です。
1成分形シーリング材の施工で、プライマーは「接着の下駄」ではなく「下地側のリスクをならす工程」です。実務では、コンクリート、モルタル、金物、アルミサッシ、塗装下地など被着体の表層状態がバラつくため、同じ材料でも接着挙動が安定しないことがあります。メーカーの施工手順では、プライマーを均一に塗布し、所定の乾燥時間を確保し、塗布後の有効時間内に充てんすることが重要事項として整理されています。
プライマー工程は、次の3点が崩れると途端に事故率が上がります。
特に冬期や日陰の納まりでは乾燥が遅れ、工程が押すと「乾燥待ちを短縮→剥離」になりやすいです。逆に夏場の強風・直射では、プライマー表面だけが先に荒れてしまい、充てんまでの時間が延びると密着の再現性が落ちます。現場での対策はシンプルで、テストピースや目立たない箇所で「当日条件での乾燥感」を確認してから面を進めること、そして塗布→充てんの作業分割を最小化することです。
また、ALCのような多孔質系は表面粉化や吸い込みが絡むため、プライマーの役割が相対的に大きくなります。業界団体の資料でも、目地底にボンドブレーカーやバックアップ材などを用いて二面接着とする点と合わせて、変成シリコーン系のシーリング材が望ましい旨が示されており、被着体特性と収まりを同時に見ているのが分かります。
シーリングの耐久性は材料性能だけでは決まりません。実際は「目地の形状」と「接着のさせ方」で、伸縮追従のストレスがまったく別物になります。基本は二面接着で、底面に接着させない収まりを作り、左右の被着体の動きに対してシーリング材が素直に伸び縮みできる状態にします。
二面接着を作る道具立ては、バックアップ材やボンドブレーカーです。施工手順の解説でも、目地深さに余裕がない場合は底部にボンドブレーカーを貼って二面接着を確保する、という整理がされており、ここは「材料の高級グレード」より優先順位が上がることすらあります。公共工事系の標準仕様書でも、ボンドブレーカーを用いて二面接着とする旨が明記され、動きが小さい部位は三面接着を許容する場合がある、という例外条件まで含めてルール化されています。
実務で三面接着が起きる典型は、次のようなパターンです。
三面接着になると、目地の動きが集中して「中央割れ」「端部剥離」を誘発しやすくなります。目地の見た目が綺麗でも、内部の接着状態は外から判断できないため、改修では撤去時に三面接着の痕跡が出て初めて原因が確定することもあります。だからこそ、新設でも改修でも、バックアップ材・ボンドブレーカーの扱いを“副資材”ではなく“主工程”として段取りに組み込むのが安全です。
1成分形シーリング材は、施工性が高い一方で、硬化は環境条件の影響を受けます。例えば湿気硬化タイプの1成分形シーリング材について、メーカーの資料では「空気中の湿気と反応して室温で硬化する」と説明されており、施工後の養生条件が品質を左右することが前提にあります。現場では「表面は触れるが内部が未硬化」「雨掛かりで表層が荒れる」「低温で硬化が遅延する」など、工程都合が不具合の引き金になりがちです。
施工手順としては、材料メーカーが提示する流れ(打合せ→準備→検査→バックアップ材→プライマー→充てん…)を、工程表に落としたうえで守るのが最短です。具体的には、充てん時にノズル角度と速度を意識して目地底まで押し込み、気泡を入れないことが重要だとされています。気泡は直後に見えなくても、後日「ピンホール」や「水みち」になり、漏水調査が難航する原因になります。
工程管理の実務ポイントは次の通りです。
1成分形は「扱いが簡単」な分、工程短縮の対象にされやすいのが落とし穴です。硬化不良は外観だけでは見抜けないことが多く、竣工後の雨で初めて顕在化することもあるため、品質記録(気温、下地状態、使用材料のロット、プライマー塗布時刻など)を簡易に残すだけでも、トラブル時の説明力が大きく変わります。
検索上位では「施工手順」「種類比較」が中心になりがちですが、現場のクレームで厄介なのがブリード汚染です。ブリード汚染は、シーリング材に含まれる可塑剤が表面へにじみ出てベタつきが生じ、そこに排気ガスや砂埃が付着して黒ずみ等の汚染が進む現象として整理されています。さらに塗装を絡めると、可塑剤の移行で塗膜が軟化し、ベタつきや汚染を増幅させることがある、と具体的なメカニズムまで解説されています。
この問題が“独自視点”として重要なのは、ブリード汚染が材料単体の良し悪しより「周辺仕様との組合せ」で起きやすい点です。つまり、シーリング材の選定時に「塗装する/しない」「弾性塗料の種類」「外壁材の色」「交通量(排気粉じん)」「雨だれライン」などを同時に見ないと、材料カタログ上は正しくても外観クレームが出ます。
対策は、施工前の段階で選択肢を潰すのが効果的です。
見落としがちなポイントとして、ブリード汚染は「施工直後の丁寧さ」だけでは抑えきれない場合があります。だからこそ、材料選定の会話を“接着するかどうか”から一段上げて、“汚れ方まで含めた長期外観”に拡張するのが、現場担当者の価値になります。
ブリード汚染のメカニズム解説(材料選定の注意点)
https://aponline.jp/feature/study/22933/
二面接着の考え方(ボンドブレーカー/バックアップ材の扱い)
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888823.pdf
1成分形の定義と区分(JIS A 5758)
https://kikakurui.com/a5/A5758-2016-01.html

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