
STPY400は「配管用アーク溶接炭素鋼鋼管」として、JIS G3457に規定されている重要な配管材料です。STは「Steel Tube」、PYは「Pipe Yousetsu(溶接)」を意味し、400は最低引張強さ400N/mm²を表しています。
この鋼管は500A以上の大径配管に使用され、使用圧力の比較的低い蒸気、水、ガス、空気などの配管システムに適用されます。製造方法はアーク溶接によるもので、鉄板(鋼板)を丸めて継目を溶接することでパイプ形状に成形されています。
STPY400の適用範囲は以下のような特徴があります。
SGPやSTPGなどの小径配管との大きな違いは、500A以上の大径サイズに特化している点です。これにより、プラント配管や上下水道、工業用配管システムなどで重要な役割を果たしています。
STPY400の化学成分は厳格に規定されており、配管の安全性と耐久性を確保しています。主要な化学成分の規定値は以下の通りです。
化学成分(%)
これらの化学成分の制限により、溶接性と加工性が向上し、配管施工時の作業効率が向上します。特に炭素含有量を低く抑えることで、溶接割れのリスクを最小限に抑えています。
機械的性質
厚さによる伸び値の違いも規定されており、厚さ8mm未満の管では以下のような基準があります。
水圧試験では、管は2.5MPaの水圧を5秒間以上保持し、漏れがないことが要求されます。これにより配管システムの信頼性が確保されています。
STPY400の寸法規格は、他の配管用鋼管とは異なる特徴的な表示方法を採用しています。最も注目すべき点は、厚さの表示にスケジュール番号ではなく、ミリメートル単位を使用していることです。
寸法表示の特徴
実際の製造寸法範囲は406.4mm~2,150mmと幅広く、スパイラル鋼管としても製造されています。主要なサイズ例として以下があります。
標準的な寸法例
許容差についても厳格に規定されており、外径の許容差は±0.5%(測定は周長による)、厚さについては呼び径450A以下では+15/-12.5%、450Aを超えるものでは+15/-10%となっています。
製造方法であるアーク溶接は、直縫い溶接とスパイラル溶接の両方が採用されており、用途や要求仕様に応じて選択されます。
配管の正確な識別は、安全で高品質な施工において極めて重要な要素です。STPY400の識別については、他の配管用鋼管と区別するための特別な方法が確立されています。
識別色による分類
配管材料の識別において、STPY400はSGPと同様に特別な識別色が規定されていません。これは以下の理由によるものです。
ステンシル情報の重要性
配管表面に直接マーキングされるステンシル情報は、STPY400の「名札」として機能します。ステンシルには以下の情報が含まれています。
ミルシートとの関係
ミルシートは配管の「履歴書」として、品質保証の重要な文書です。特にJFEスチールなどの製造業者では、STPY400とSTK400の両方の規格が記載される場合があります。これは同一素材で異なる溶接方法(アーク溶接と電気抵抗溶接)に対応するためです。
管理上の注意点
STPY400を正しく理解するためには、他の配管用鋼管規格との比較が不可欠です。各規格の特徴と適用範囲を明確に把握することで、最適な材料選択が可能になります。
主要配管用鋼管の分類
カーボンスチール系
STPY400の位置付け
STPY400は500A以上の大径配管において、比較的低圧の用途に特化した規格です。この特徴により、以下のような独自の優位性があります。
他規格との技術的差異
規格 | 適用径 | 圧力範囲 | 主な用途 |
---|---|---|---|
SGP | ~500A | 低圧 | 一般配管 |
STPG | ~650A | 中圧 | 圧力配管 |
STPY400 | 500A~ | 低圧 | 大径低圧配管 |
選定時の考慮要素
STPY400を選定する際は、以下の要素を総合的に評価する必要があります。
近年では環境配慮の観点から、耐食性能や長期耐久性も重要な選定要因となっており、STPY400の化学成分や製造品質の向上が続いています。特に大規模インフラ整備や工業プラント建設において、その重要性は増大しています。