STPY400配管用アーク溶接炭素鋼鋼管の規格特徴

STPY400配管用アーク溶接炭素鋼鋼管の規格特徴

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STPY400配管用アーク溶接炭素鋼鋼管の規格特徴

STPY400の重要なポイント
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JIS G3457準拠の配管用鋼管

アーク溶接により製造される大径配管用炭素鋼鋼管

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500A以上の大径サイズ対応

外径406.4mm~2,150mmの広範囲をカバー

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低圧配管への適用

蒸気、水、ガス、空気などの比較的低圧配管に最適

STPY400の基本規格と定義

STPY400は「配管用アーク溶接炭素鋼鋼管」として、JIS G3457に規定されている重要な配管材料です。STは「Steel Tube」、PYは「Pipe Yousetsu(溶接)」を意味し、400は最低引張強さ400N/mm²を表しています。

 

この鋼管は500A以上の大径配管に使用され、使用圧力の比較的低い蒸気、水、ガス、空気などの配管システムに適用されます。製造方法はアーク溶接によるもので、鉄板鋼板)を丸めて継目を溶接することでパイプ形状に成形されています。

 

STPY400の適用範囲は以下のような特徴があります。

  • 外径範囲:406.4mm~2,150mm
  • 使用圧力:比較的低圧環境
  • 適用流体:蒸気、水、ガス、空気
  • 製造方法:アーク溶接(スパイラル溶接含む)

SGPやSTPGなどの小径配管との大きな違いは、500A以上の大径サイズに特化している点です。これにより、プラント配管や上下水道、工業用配管システムなどで重要な役割を果たしています。

 

STPY400の化学成分と機械的性質

STPY400の化学成分は厳格に規定されており、配管の安全性と耐久性を確保しています。主要な化学成分の規定値は以下の通りです。
化学成分(%)

  • 炭素(C):0.040以下
  • ケイ素(Si):0.040以下
  • マンガン(Mn):0.25以下
  • リン(P):規定値内
  • 硫黄(S):規定値内

これらの化学成分の制限により、溶接性と加工性が向上し、配管施工時の作業効率が向上します。特に炭素含有量を低く抑えることで、溶接割れのリスクを最小限に抑えています。

 

機械的性質

  • 引張強さ:400N/mm²以上
  • 降伏点又は耐力:225N/mm²以上
  • 伸び(5号試験片横方向):18%以上

厚さによる伸び値の違いも規定されており、厚さ8mm未満の管では以下のような基準があります。

  • 7mmを超え8mm未満:18%
  • 6mmを超え7mm以下:16%
  • 5mmを超え6mm以下:15%

水圧試験では、管は2.5MPaの水圧を5秒間以上保持し、漏れがないことが要求されます。これにより配管システムの信頼性が確保されています。

 

STPY400の寸法規格と製造方法

STPY400の寸法規格は、他の配管用鋼管とは異なる特徴的な表示方法を採用しています。最も注目すべき点は、厚さの表示にスケジュール番号ではなく、ミリメートル単位を使用していることです。

 

寸法表示の特徴

  • 外径:実測値で表示(例:406.4mm、508.0mm)
  • 厚さ:ミリメートル単位(6.0mm、7.9mm、9.5mmなど)
  • 呼び径:A(アルファベット)で表示

実際の製造寸法範囲は406.4mm~2,150mmと幅広く、スパイラル鋼管としても製造されています。主要なサイズ例として以下があります。
標準的な寸法例

  • 350A(外径355.6mm):厚さ6.0mm、6.4mm、7.9mm
  • 400A(外径406.4mm):厚さ6.0mm、6.4mm、7.9mm、9.5mm
  • 500A(外径508.0mm):厚さ6.0mm、6.4mm、7.9mm、9.5mm
  • 600A(外径609.6mm):厚さ6.0mm、6.4mm、7.9mm、9.5mm

許容差についても厳格に規定されており、外径の許容差は±0.5%(測定は周長による)、厚さについては呼び径450A以下では+15/-12.5%、450Aを超えるものでは+15/-10%となっています。

 

製造方法であるアーク溶接は、直縫い溶接とスパイラル溶接の両方が採用されており、用途や要求仕様に応じて選択されます。

 

STPY400の識別とステンシル管理

配管の正確な識別は、安全で高品質な施工において極めて重要な要素です。STPY400の識別については、他の配管用鋼管と区別するための特別な方法が確立されています。

 

識別色による分類
配管材料の識別において、STPY400はSGPと同様に特別な識別色が規定されていません。これは以下の理由によるものです。

  • SGP & STPY:識別色なし(-表示)
  • STPG370:緑色(5G5.5/6)
  • STS370:白色(N9.5)
  • その他の材料:それぞれ固有の色

ステンシル情報の重要性
配管表面に直接マーキングされるステンシル情報は、STPY400の「名札」として機能します。ステンシルには以下の情報が含まれています。

  • 材質規格(STPY400)
  • サイズ(外径と厚さ)
  • 製造業者情報
  • 製造ロット番号

ミルシートとの関係
ミルシートは配管の「履歴書」として、品質保証の重要な文書です。特にJFEスチールなどの製造業者では、STPY400とSTK400の両方の規格が記載される場合があります。これは同一素材で異なる溶接方法(アーク溶接と電気抵抗溶接)に対応するためです。

 

管理上の注意点

  • ステンシルを最後まで残すよう努める
  • ステンシルが消失する場合は、配管自体に情報を記入
  • 色分けマーキングラインで識別を補助
  • 切断時は残材への識別塗装を実施

STPY400と他鋼管規格との比較分析

STPY400を正しく理解するためには、他の配管用鋼管規格との比較が不可欠です。各規格の特徴と適用範囲を明確に把握することで、最適な材料選択が可能になります。

 

主要配管用鋼管の分類
カーボンスチール系

  • SGP:一般配管用炭素鋼鋼管(小径、低圧用)
  • STPG:圧力配管用炭素鋼鋼管(中圧用)
  • STS:高圧配管用炭素鋼鋼管(高圧用)
  • STPT:高温配管用炭素鋼鋼管(高温用)
  • STPY:配管用アーク溶接炭素鋼鋼管(大径、低圧用)
  • STPL:低温配管用炭素鋼鋼管(低温用)

STPY400の位置付け
STPY400は500A以上の大径配管において、比較的低圧の用途に特化した規格です。この特徴により、以下のような独自の優位性があります。

  • コスト効率性:低圧用途のため肉厚を抑制可能
  • 施工性:アーク溶接により大径でも高品質な接合が可能
  • 適用範囲:上下水道、プラント配管、空調設備など幅広い用途

他規格との技術的差異

規格 適用径 圧力範囲 主な用途
SGP ~500A 低圧 一般配管
STPG ~650A 中圧 圧力配管
STPY400 500A~ 低圧 大径低圧配管

選定時の考慮要素
STPY400を選定する際は、以下の要素を総合的に評価する必要があります。

  • 使用圧力:2.5MPa以下の低圧用途
  • 配管径:500A以上の大径配管
  • 流体種類:蒸気、水、ガス、空気
  • 設置環境:常温環境での使用
  • 経済性:材料費と施工費のバランス

近年では環境配慮の観点から、耐食性能や長期耐久性も重要な選定要因となっており、STPY400の化学成分や製造品質の向上が続いています。特に大規模インフラ整備や工業プラント建設において、その重要性は増大しています。