STPT規格の基本知識と選定ポイント解説

STPT規格の基本知識と選定ポイント解説

記事内に広告を含む場合があります。

STPT規格の基本知識

STPT規格の概要
🔥
高温対応

350℃を超える高温環境での配管用炭素鋼管

📋
JIS G 3456

日本産業規格による厳格な品質基準

⚙️
3つのグレード

STPT370/410/480の特性別選択が可能

STPT規格のJIS G 3456による定義と適用範囲

STPT規格は、JIS G 3456:2019「高温配管用炭素鋼鋼管」として規定されている重要な日本産業規格です。この規格は、主に350℃を超える温度で使用する配管に用いる炭素鋼鋼管について詳細に定めており、高温環境下での安全性と信頼性を確保するための厳格な基準が設けられています。

 

STPT規格の適用範囲は以下の通りです。

  • 温度条件: 350℃を超える高温環境
  • 用途: 発電所、化学プラント、石油精製設備などの高温配管
  • 製造方法: 継目なし管または電気抵抗溶接管
  • 材質: Si キルド鋼(粗粒組織)を使用

この規格が制定された背景には、高温環境下で使用される配管の安全性確保と、国際的な品質基準への適合があります。特に、長時間の高温使用において発生する可能性がある黒鉛化による脆化現象についても、427℃以上での長時間使用時には特別な注意が必要とされています。

 

STPT370/410/480の化学成分と機械的性質

STPT規格には、STPT370、STPT410、STPT480の3つのグレードが存在し、それぞれ異なる化学成分と機械的性質を持っています。

 

化学成分の詳細

種類 C (%) Si (%) Mn (%) P (%) S (%)
STPT370 0.25以下 0.10~0.35 0.30~0.90 0.035以下 0.035以下
STPT410 0.30以下 0.10~0.35 0.30~1.00 0.035以下 0.035以下
STPT480 0.33以下 0.10~0.35 0.30~1.00 0.035以下 0.035以下

機械的性質の比較

種類 引張強さ (N/mm²) 降伏点/耐力 (N/mm²) 伸び (%)
STPT370 370以上 215以上 30以上(11号)
STPT410 410以上 245以上 25以上(11号)
STPT480 480以上 275以上 25以上(11号)

これらの数値は、管軸方向での試験結果に基づいており、管軸直角方向では若干異なる値が規定されています。特にSTPT480については、継目なし管のみの製造が規定されており、より高い強度要求に対応しています。

 

日本鋼管協会の技術資料では、これらの機械的性質の詳細な試験方法について解説されています。

 

https://www.jisf.or.jp/

STS規格との違いと使い分け方法

STPT規格とSTS規格は、どちらも高圧配管用の炭素鋼管ですが、使用温度と製造方法に重要な違いがあります。

 

主な違いの比較

  • 使用温度範囲
  • STS規格:350℃以下の高圧配管用
  • STPT規格:350℃を超える高温配管用
  • 製造方法
  • STS規格:Si-Alキルド鋼(整細粒組織)から継目なく製造
  • STPT規格:Siキルド鋼(粗粒組織)で継目なしまたは電気抵抗溶接
  • 適用JIS規格
  • STS規格:JIS G 3455
  • STPT規格:JIS G 3456

選定の判断基準

  1. 温度条件: 使用温度が350℃を境界として選択
  2. 圧力条件: STSは高圧環境により適している
  3. コスト要因: 一般的にSTSの方が製造コストが高い
  4. 在庫性: STSの方が汎用性が高く入手しやすい場合が多い

実際の配管設計では、運転条件の安全率を考慮して、境界温度付近では上位グレードの選択を推奨する場合があります。また、起動・停止時の温度変化も考慮要因となります。

 

STPT管の製造方法と品質管理

STPT管の製造は、高温環境での使用に耐える品質を確保するため、厳格な製造プロセスと品質管理が実施されています。

 

製造方法の詳細

  • 継目なし管製造
  • 熱間押出法または冷間引抜法
  • 均一な組織と優れた耐圧性能
  • STPT480は継目なし管のみ製造
  • 電気抵抗溶接管製造
  • 高周波溶接による継手部の均質化
  • 大径管の効率的な製造が可能
  • 溶接部の非破壊検査が必須

品質管理の要点

  1. 原材料管理 🔍
    • 化学成分の厳密な管理
    • 溶鋼の清浄度確保
    • キルド鋼の適切な脱酸処理
  2. 製造工程管理 ⚙️
    • 加熱温度の精密制御
    • 変形速度の最適化
    • 冷却条件の管理
  3. 熱処理管理 🔥
    • 正規化処理の実施
    • 組織の均質化
    • 残留応力の除去
  4. 検査・試験 📊
    • 機械的性質試験
    • 化学成分分析
    • 非破壊検査(超音波探傷等)

日本熱管工業などの専門メーカーでは、これらの工程を通じて高品質なSTPT管を供給しています。特に、細粒のキルド鋼を用いることで、高温環境での長期使用における組織安定性を確保しています。

 

高温配管設計におけるSTPT規格選定ポイント

高温配管システムの設計において、適切なSTTP規格の選定は、プラントの安全性と経済性を両立させる重要な要素です。

 

温度別選定ガイドライン 🌡️。

  • 350~400℃: STPT370が標準選択
  • 400~450℃: STPT410以上を推奨
  • 450℃以上: STPT480または合金鋼の検討

圧力条件との関係
高温配管では、温度上昇に伴い許容応力が低下するため、常温時の設計圧力だけでなく、使用温度での許容応力を考慮した肉厚計算が必要です。JIS B 8265(圧力容器の構造)に基づく設計手法が一般的に採用されています。

 

経済性を考慮した選定 💰。

  1. 初期コスト
    • 材料費:STPT370 < STPT410 < STPT480
    • 加工費:グレードによる大きな差は少ない
    • 溶接費:継手設計による影響が大きい
  2. ライフサイクルコスト
    • メンテナンス頻度
    • 交換周期
    • ダウンタイムコスト

特殊な考慮事項

  • 熱膨張対策: 高温時の配管伸縮を考慮した支持設計
  • 断熱設計: 外部への熱損失防止と作業安全性確保
  • 腐食環境: 高温での酸化や流体による腐食評価
  • 疲労設計: 温度サイクルによる熱疲労の考慮

実際の設計では、これらの要素を総合的に判断し、最適なSTTP規格を選定することが重要です。また、将来の運転条件変更の可能性も考慮して、適切な安全率を設定することが推奨されています。

 

石油化学工業協会の配管設計指針では、これらの選定基準について詳細なガイドラインが示されています。

 

https://www.jpca.or.jp/