
STPT規格は、JIS G 3456:2019「高温配管用炭素鋼鋼管」として規定されている重要な日本産業規格です。この規格は、主に350℃を超える温度で使用する配管に用いる炭素鋼鋼管について詳細に定めており、高温環境下での安全性と信頼性を確保するための厳格な基準が設けられています。
STPT規格の適用範囲は以下の通りです。
この規格が制定された背景には、高温環境下で使用される配管の安全性確保と、国際的な品質基準への適合があります。特に、長時間の高温使用において発生する可能性がある黒鉛化による脆化現象についても、427℃以上での長時間使用時には特別な注意が必要とされています。
STPT規格には、STPT370、STPT410、STPT480の3つのグレードが存在し、それぞれ異なる化学成分と機械的性質を持っています。
化学成分の詳細。
種類 | C (%) | Si (%) | Mn (%) | P (%) | S (%) |
---|---|---|---|---|---|
STPT370 | 0.25以下 | 0.10~0.35 | 0.30~0.90 | 0.035以下 | 0.035以下 |
STPT410 | 0.30以下 | 0.10~0.35 | 0.30~1.00 | 0.035以下 | 0.035以下 |
STPT480 | 0.33以下 | 0.10~0.35 | 0.30~1.00 | 0.035以下 | 0.035以下 |
機械的性質の比較。
種類 | 引張強さ (N/mm²) | 降伏点/耐力 (N/mm²) | 伸び (%) |
---|---|---|---|
STPT370 | 370以上 | 215以上 | 30以上(11号) |
STPT410 | 410以上 | 245以上 | 25以上(11号) |
STPT480 | 480以上 | 275以上 | 25以上(11号) |
これらの数値は、管軸方向での試験結果に基づいており、管軸直角方向では若干異なる値が規定されています。特にSTPT480については、継目なし管のみの製造が規定されており、より高い強度要求に対応しています。
日本鋼管協会の技術資料では、これらの機械的性質の詳細な試験方法について解説されています。
STPT規格とSTS規格は、どちらも高圧配管用の炭素鋼管ですが、使用温度と製造方法に重要な違いがあります。
主な違いの比較。
選定の判断基準。
実際の配管設計では、運転条件の安全率を考慮して、境界温度付近では上位グレードの選択を推奨する場合があります。また、起動・停止時の温度変化も考慮要因となります。
STPT管の製造は、高温環境での使用に耐える品質を確保するため、厳格な製造プロセスと品質管理が実施されています。
製造方法の詳細。
品質管理の要点。
日本熱管工業などの専門メーカーでは、これらの工程を通じて高品質なSTPT管を供給しています。特に、細粒のキルド鋼を用いることで、高温環境での長期使用における組織安定性を確保しています。
高温配管システムの設計において、適切なSTTP規格の選定は、プラントの安全性と経済性を両立させる重要な要素です。
温度別選定ガイドライン 🌡️。
圧力条件との関係。
高温配管では、温度上昇に伴い許容応力が低下するため、常温時の設計圧力だけでなく、使用温度での許容応力を考慮した肉厚計算が必要です。JIS B 8265(圧力容器の構造)に基づく設計手法が一般的に採用されています。
経済性を考慮した選定 💰。
特殊な考慮事項。
実際の設計では、これらの要素を総合的に判断し、最適なSTTP規格を選定することが重要です。また、将来の運転条件変更の可能性も考慮して、適切な安全率を設定することが推奨されています。
石油化学工業協会の配管設計指針では、これらの選定基準について詳細なガイドラインが示されています。