
アルミパイプの規格選定において、標準寸法表の理解は不可欠です。JIS規格では、外径と肉厚の組み合わせが細かく規定されており、これらの組み合わせを把握することで効率的な材料選定が可能になります。
JIS H4080では、アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管の標準寸法が定められています。例えば、外径15mmの場合、肉厚は1.0mm、1.2mm、1.6mmの組み合わせが標準として設定されています。一方、外径200mmでは、肉厚1.2mmから50mmまでの幅広い選択肢があります。
重要なのは、表に○印があるものが必ずしも市場に流通しているとは限らない点です。実際の調達時には、材料メーカーや商社での在庫状況を確認する必要があります。特に特殊寸法や少量使用の場合は、代替寸法での検討も重要になってきます。
材料業者の公開情報によると、A5052の引抜管では外径20-150mmの範囲で、肉厚2-8mmの組み合わせが一般的に流通しています。これらの標準寸法を把握しておくことで、設計段階での材料選定がスムーズになります。
アルミパイプの材質選定では、合金番号による分類と各々の特性を理解することが重要です。JIS規格では、1000番台から7000番台まで系統的に分類されており、それぞれ異なる特性を持っています。
1000番台(純アルミニウム系)
3000番台(Al-Mn系)
5000番台(Al-Mg系)
6000番台(Al-Mg-Si系)
合金選定では、使用環境の腐食性、必要強度、加工方法を総合的に検討する必要があります。特に5083は海水環境での使用に適しており、化学プラントでは1050や5052が多用されています。
アルミパイプの外径と肉厚の組み合わせは、用途に応じた強度設計と経済性を両立させる重要な要素です。適切な組み合わせの選定により、過剰設計を避けながら必要な機械的性質を確保できます。
小径パイプの活用分野
外径6-30mmの小径パイプは、精密機器や制御系統で使用されます。例えば、外径10mmで肉厚1.0mmの組み合わせは、空圧配管や計測機器の配線保護に適しています。肉厚を1.6mmに変更することで、より高い内圧に対応可能になります。
中径パイプの設計指針
外径50-100mmの中径パイプでは、構造用途での使用が一般的です。A5052材で外径60mm、肉厚3mmの組み合わせは、機械フレームや支持構造に多用されています。同じ外径でも肉厚を5mmに変更することで、より高い荷重に対応できます。
大径パイプの特殊用途
外径150mm以上の大径パイプは、主に建築構造や大型装置で使用されます。外径300mmで肉厚20mmの組み合わせは、高圧容器や大型配管システムに適用されています。
肉厚選定では、使用圧力、外部荷重、座屈強度を考慮した計算が必要です。特に薄肉パイプでは座屈現象に注意が必要で、外径に対する肉厚比(D/t比)を適切に設定することが重要になります。
アルミパイプの製造方法である押出加工と引抜加工は、それぞれ異なる特性と適用範囲を持っており、用途に応じた選定が重要です。
押出管の特徴と適用範囲
押出管は、加熱したビレットを金型から押し出して製造します。この方法では比較的大径で厚肉のパイプ製造が可能で、外径50mm以上、肉厚4mm以上の製品が一般的です。
押出管では、製造時の温度履歴により結晶組織が均一になりやすく、機械的性質のばらつきが少ないという利点があります。特にA5056押出管では、断面積300cm²以下で引張強さ245N/mm²以上を確保できます。
引抜管の精密性と特徴
引抜管は、押出管やビレットを冷間で引き抜き加工して製造します。この方法では高精度な寸法精度と優れた表面品質が得られ、小径・薄肉製品に適しています。
引抜加工では加工硬化により強度が向上し、例えば3003材のH14調質では引張強さが135N/mm²まで向上します。この特性を活用することで、軽量化と強度確保を両立できます。
用途別の使い分け基準
製造方法の選定では、必要な寸法精度、表面品質、機械的性質を総合的に判断します。精密機器用途では引抜管、構造用途では押出管が一般的に選択されています。
アルミパイプの規格選定では、JIS規格適合性の確認と受入検査項目の設定が品質確保の要となります。特に安全性が要求される用途では、材料証明書と検査成績書の確認が不可欠です。
材料証明書の確認項目
JIS規格適合材料では、以下の項目が材料証明書に明記されています。
例えば、5052材H34調質では引張強さ235N/mm²以上、耐力175N/mm²以上が規格値として定められています。これらの値が材料証明書で確認できない場合は、受入検査での確認が必要になります。
寸法検査の実施方法
アルミパイプの寸法検査では、外径と肉厚の測定が基本となります。外径測定にはマイクロメータまたはπテープを使用し、肉厚測定には超音波厚さ計や切断面での測定を行います。
測定箇所は、パイプ長さに対して最低3点(両端部と中央部)で実施し、各測定点で90度回転させた4点測定を行います。この方法により、製造時の偏肉や楕円度を確認できます。
表面品質の評価基準
アルミパイプの表面品質は、用途に応じて評価基準を設定します。一般構造用では目視検査で十分ですが、食品機械用途では表面粗さの測定も必要になります。
材料メーカーでは品質管理システムISO9001の認証取得が一般的であり、トレーサビリティの確保も重要な管理項目となっています。ロット番号による材料履歴の追跡により、問題発生時の原因究明と対策が可能になります。
受入検査で不適合が発見された場合の処置手順も事前に定めておく必要があります。軽微な寸法不良の場合は使用可否の判定、重大な材質不良の場合は全数返品等の基準を明確にしておくことで、品質トラブルの拡大を防止できます。