
建築業の現場で使用される単相3線式配線は、100Vと200Vの両方を使用できる効率的な配線方式です。この方式では中性線(N相)と呼ばれる真ん中の線が重要な役割を果たしています。中性線は2本の電圧線(100V×2)の間に配置され、電圧のバランスを保つ働きをします。
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しかし、中性線が何らかの原因で欠相状態になると、回路の負荷状況により電圧が不平衡となり、負荷機器に過電圧が加わります。この異常電圧により、100V用の電気機器が焼損したり絶縁劣化を起こしたりする可能性があります。特に負荷(a)と負荷(b)の抵抗値(バランス)によって、どちらかの側に異常な高電圧がかかるため、高い電圧側の100V用負荷機器が損傷するリスクが高まります。
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建設現場では配線の接続不良、中性線の断線、接触箇所の劣化などが異常電圧の主な発生原因となります。工事の不備やアクシデントによる電気回路の短絡(ショート)も、過電流を発生させる要因として注意が必要です。
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現在販売されている住宅分電盤や建築現場で使用される主幹ブレーカーには、単相3線中性線欠相保護機能が標準装備されています。この保護機能は、中性線欠相により発生した過電圧を分圧回路とカスタムICで検出し、遮断器の引外し用トリップコイルを働かせる仕組みです。
ブレーカーには主に3つの種類があり、それぞれ異なる保護機能を持っています。アンペアブレーカーは契約アンペアを超える電気が流れた際に遮断し、漏電ブレーカーは漏電を検出して回路を遮断します。安全ブレーカーは同じコンセントや配線で大きな電流が流れた場合や電気配線がショートした際に作動します。
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内線規程では、単相3線式電路に施設する遮断器は、中性線欠相保護機能付のものとすることが定められており、これは法的にも求められる安全対策となっています。過電流が発生すると自動で電気回路を遮断し、高熱による機器の故障や火災を防ぐことができます。
参考)ブレーカータップ|サンワサプライ株式会社
異常電圧が発生すると、電気機器には定格電圧を超える電圧が印加され、様々な悪影響が現れます。電圧耐量の小さい負荷機器では絶縁劣化や焼損に至る場合があり、特に精密な電子機器や制御装置は深刻なダメージを受ける可能性があります。
参考)302 Found
過電流の発生原因は主に2種類に分けられます。1つは間違った配線や故障により短絡(ショート)してしまった場合で、もう1つは過負荷により許容以上の電流が流れる場合です。電線には流すことができる電流の大きさが規格されており、過電流により電線の許容電流を上回った電流が生じ続けると、銅線が過熱し被覆が溶け、発火や火災といったさらに大きな被害につながる危険があります。
参考)制御盤の過電流と過電圧 — 発生原因と対策
建設現場では多数の工作機械の使用により過電流が発生しやすく、工事の不備やアクシデントによる電気回路の短絡(ショート)にも注意が必要です。一度限度を超える熱が加えられた銅線は抵抗値が大きくなり、続けて使用するとその箇所は熱を持ちやすくなるため、電線を交換する必要があります。
建築業の現場において異常電圧を防ぐためには、定期的な配線点検と適切な設備管理が不可欠です。電気工事の現場では事前点検作業が必要不可欠であり、ブレーカーや電源の状態確認、現場において電源試運転中の機器の把握、電源ボックスの蓋の確認などが挙げられます。
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安全対策のポイントとして、まず配線の接続箇所を定期的に確認し、接触不良がないかチェックすることが重要です。中性線の接続箇所の接触が悪くなると、電圧が不安定となり異常電圧が発生するおそれがあるためです。工事のミスを防ぐことはもちろん、作業前には整備と細かい点検を必ず行うようにしましょう。
建設現場では、作業中のメンバー同士の声かけや注意喚起も忘れてはならない安全対策の一つです。電動工具を使用する場合には工具や施工場所に損傷がないかどうかなど、作業前の確認を徹底することで、スタッフ皆が安心して作業できることにつながり、万一トラブルが発生した場合にも事故を最小限に食い止めることができます。
参考リンク:中性線欠相保護機能の詳細について
パナソニック公式サイト - ブレーカーの欠相保護
建設現場での異常電圧トラブルを未然に防ぐためには、施工段階からの徹底した品質管理が求められます。まず配線工事では、中性線の接続を確実に行い、締め付けトルクを規定値で管理することが基本となります。接続端子の緩みは異常電圧発生の最大の要因となるため、施工後の確認作業を怠らないようにしましょう。
現場での具体的な実践ポイントとして、以下のような対策が有効です。
施工時のチェック項目
定期点検の実施内容
電気設備のトラブルは突然発生するものではなく、多くの場合、初期の微小な異常が徐々に拡大していきます。建設現場では仮設電源を使用する期間も長いため、仮設分電盤の管理にも十分注意を払う必要があります。雨水の浸入や粉塵の付着により接続部の劣化が早まることもあるため、防水・防塵対策も重要な要素となります。
異常電圧の兆候として、照明のちらつきや電気機器の誤動作が見られた場合は、すぐに専門技術者による点検を実施しましょう。早期発見・早期対応が、重大な機器損傷や火災事故を防ぐ最も効果的な方法です。また、現場作業員への安全教育を定期的に実施し、異常を感じたらすぐに報告する体制を整えることも、安全な現場運営には欠かせません。
参考リンク:電気設備のトラブル事例と対策について
日本電設工業協会 - 電気設備におけるトラブルと対策