チタン酸バリウム密度と物性の建築利用

チタン酸バリウム密度と物性の建築利用

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チタン酸バリウム密度と物性

この記事で分かること
📊
密度の基本値

チタン酸バリウムの標準密度6.02 g/cm³と測定方法

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結晶構造と特性

ペロブスカイト型構造による高誘電率の発現メカニズム

🏗️
建築への応用可能性

断熱材やセンサー分野での実用化に向けた技術開発

チタン酸バリウムの密度とかさ比重の測定値

 

チタン酸バリウム(BaTiO3)の密度は6.02 g/cm³が標準値として広く知られています。この値は、チタン酸バリウムが結晶化した状態での理論密度であり、材料の緻密性を評価する重要な指標となります。実際の製品では、焼結条件や粉体の粒度分布によって密度が若干変動し、5.8~6.0 g/cm³の範囲に収まることが一般的です。
参考)酸化物結晶-BaTiO3|有限会社クリスタルベース

かさ比重(bulk density)は、粉体状態のチタン酸バリウムにおける見かけの密度を示し、粒子間の空隙を含んだ値として測定されます。粉末の充填状態や粒子形状により大きく変化するため、製造プロセスの管理において重要なパラメータとなっています。特に積層セラミックコンデンサの製造では、均一な充填密度が製品品質に直結するため、粒度分布の制御が厳密に行われます。
参考)チタン酸バリウムの物性値(セラミックスの基礎)|セラミックス…

密度測定には、アルキメデス法やヘリウムピクノメータ法が用いられ、真密度と見かけ密度の差から材料の気孔率を算出できます。建築材料として応用する際には、この気孔率が断熱性能や機械的強度に影響を与えるため、用途に応じた最適な密度設計が求められます。

チタン酸バリウムのペロブスカイト型結晶構造

チタン酸バリウムは、ペロブスカイト型結晶構造(ABO3型)を持つ代表的な強誘電体材料です。この構造では、バリウムイオン(Ba²⁺)が立方体の頂点に、チタンイオン(Ti⁴⁺)が中心に、酸素イオン(O²⁻)が面心位置に配置され、三次元的な規則配列を形成しています。
参考)チタン酸バリウム (BaTiO3) の特性と加工方法

室温では正方晶系の結晶構造をとり、格子定数比c/a(正方晶性度)が1.005~1.010程度の値を示します。この正方晶性度は、材料の誘電特性や圧電特性に直接影響を及ぼすため、製造工程での厳密な制御が必要です。温度変化により、正方晶(室温)から立方晶(約120℃以上)、さらに高温では六方晶へと相転移する特性を持ち、この転移温度(キュリー温度)付近で誘電率が最大値を示します。
参考)チタン酸バリウム(Barium Titanate, BaTi…

結晶構造の安定性は、Ba/Tiモル比によっても変化し、わずかにバリウム過剰な組成(Ba/Ti=1.01~1.05)では、粒成長が抑制されて微細な粒子が得られます。この特性を利用して、ナノサイズのチタン酸バリウム粒子を合成する技術が開発されており、より高性能な電子部品の実現に貢献しています。
参考)https://patents.google.com/patent/JP5140925B2/ja

チタン酸バリウムの物性データベース(株式会社KDAセラミックスファクトリー)
チタン酸バリウムの結晶構造と基本物性について体系的にまとめられた技術資料です。

チタン酸バリウムの誘電率と融点の関係

チタン酸バリウムの最大の特徴は、非常に高い誘電率を示すことです。室温での誘電率はεa(a軸方向)が3700、εc(c軸方向)が135(unclamped状態)に達し、一般的なセラミックスやポリマー材料の誘電率が10未満であるのと比較して、桁違いに高い値を持ちます。​
融点は約1600~1625℃とされており、高温環境での使用にも耐えうる熱的安定性を備えています。ただし、キュリー温度(約120℃)を超えると正方晶から立方晶への相転移が起こり、誘電特性が大きく変化するため、電子部品としての使用温度範囲は通常85℃以下に制限されます。
参考)BaTiO3 チタン酸バリウム

近年では、より高温で使用可能なコンデンサ材料として、二チタン酸バリウム(BaTi2O5)が注目されており、470℃という高いキュリー温度を持つことから、次世代の高温対応材料として研究が進められています。建築分野では、このような高温特性を活かした断熱材や耐火材料への応用が検討されており、チタン酸バリウムウィスカーを含む複合材料の開発も行われています。
参考)https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_251022.html

チタン酸バリウムの粒度分布と比表面積管理

チタン酸バリウム粉末の品質を左右する重要な因子として、粒度分布と比表面積があります。積層セラミックコンデンサの製造では、シャープな粒度分布と均一な粒子形状が求められ、D50(50%径)とD95(95%径)の比率であるD95/D50の値が1.5~2.0程度に制御されます。
参考)https://www.todakogyo.co.jp/product/img/Barium_titanate-Flyer.pdf

BET比表面積は、粉末の反応性や焼結特性を評価する指標であり、典型的には8~12 m²/gの範囲で管理されます。比表面積が大きいほど粒子が微細であることを示し、低温での焼結が可能になる反面、凝集しやすくなるため、分散剤の選択や混合条件の最適化が重要です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2007/0/2007_0_17/_pdf/-char/en

製造プロセスでは、炭酸バリウムと酸化チタンを原料として、固相反応法や水熱合成法により合成されます。混合工程では、ボールミルや遊星ボールミルを用いて、目標とする比表面積に到達するまで粉砕・混合が行われ、その後1000℃以上での熱処理により結晶化が完了します。粒度分布の制御技術は、建築用セラミックスの品質向上にも応用可能であり、高強度・高密度なセラミック部材の製造に貢献しています。
参考)https://www.hosokawamicron.co.jp/jp/files/items/28432/File/No__68_03.pdf

戸田工業のチタン酸バリウム製造技術
湿式合成法による高品質チタン酸バリウムの製造プロセスと品質管理について詳しく解説されています。

チタン酸バリウム密度を活かした建築材料への応用

チタン酸バリウムの高密度特性と優れた電気的特性は、建築分野でも新たな応用可能性を生み出しています。特に注目されるのが、断熱材への応用です。チタン酸バリウムを含む複合材料は、従来のフロン系断熱材に代わるノンフロン系断熱材として研究が進められており、環境負荷の低減と高い断熱性能の両立が期待されています。
参考)https://www.nedo.go.jp/content/100095189.pdf

センサー技術の分野では、チタン酸バリウムの圧電特性を利用した構造ヘルスモニタリングシステムへの応用が検討されています。建築物の振動や応力をリアルタイムで検知できるセンサーを構造材に組み込むことで、地震や経年劣化による損傷を早期に発見し、予防保全に役立てることが可能になります。​
さらに意外な応用として、チタン酸バリウムセッターへのセラミックコーティング技術があります。高温焼成時の反応防止層として機能し、精密セラミック部品の製造品質向上に寄与しています。このような表面処理技術は、建築用タイルや衛生陶器の製造プロセスにも応用可能であり、製品の歩留まり向上とコスト削減につながる技術として注目されています。
参考)https://mono.ipros.com/product/detail/2000801670/

チタン酸バリウムの密度6.02 g/cm³という物性値は、材料設計の基礎データとして重要であり、複合材料の配合設計や構造計算において不可欠な情報です。今後、ナノテクノロジーとの融合により、さらに高性能な建築材料への進化が期待されます。
参考)https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20211119_02web_Ti.pdf

 

 


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