
ダクタイル鋳鉄管の継手は、主に「一般継手」と「耐震継手」に大別されます 。一般継手には抜け出し防止の構造がなく、地震時はゴム輪の摩擦力のみで抵抗します 。継手形式は、ボルトの有無によってメカニカル継手とプッシュオン継手に分類され、それぞれ異なる施工特性を持ちます 。
参考)https://www.jdpa.gr.jp/download/tebiki/tebiki.pdf
現在広く使用される継手形式として、K形(75~2,600mm)、T形(75~2,000mm)、NS形、GX形(75~250mm)があります 。これらの継手は、管内水圧に対する止水性能とともに、地盤変動に対する追従性を兼ね備えた設計となっています 。
参考)【継手の種類】を管種別にご紹介。細かい種類と使用法は?鋳鉄管…
日本の水道管材の約60%を占めるダクタイル鉄管において、継手の選定は工法、管路の重要度、耐震性、コストを総合的に検討して決定されます 。
参考)https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/09-84.pdf
メカニカル継手は、ボルト・ナットを用いて接合する形式で、K形とA形が代表的です 。K形継手はゴム輪を押輪とボルトで締め付けて接合し、高い水密性と可とう性を持ちます 。接合作業は単純で簡易的な一方、ボルト締め付け時のトルク管理が重要な要素となります 。
参考)一般継手
A形継手は台形状のゴム輪をボルト・ナットで締め付ける構造で、管の受口側と挿し口側に発生する面圧で止水します 。現在は製造されていませんが、ダクタイル鋳鉄管の中で最も古い時代から使用された歴史的な継手です 。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00578/2011/1-111_Kumaki.pdf
メカニカル継手の利点は、確実な接合と高い止水性能にありますが、施工時間の長さと継手の重量が課題とされています 。最小口径の75mmと100mmが一人で持ち運べる限界とされており、現場作業の効率性に影響を与えます 。
プッシュオン継手は、挿し口を受口に差し込むだけで接合が完了する形式で、T形継手が代表的です 。この接合方式では、ボルト作業が不要なため、施工時間の大幅な短縮が可能となります 。現場での作業効率を重視する工事において、プッシュオン継手の採用が増加しています 。
T形継手は可とう性と伸縮性を持ち、大口径(最大2,000mm)まで対応可能な設計となっています 。接合時は、ゴム輪の表面と管端部に専用滑剤を塗布し、適切な挿入深度まで押し込むことで接合が完了します 。
参考)https://www.city.kasaoka.okayama.jp/uploaded/attachment/32254.pdf
推進工法においては、ボルト・ナットを必要としないT形継手や、管の内面で接合できるU形・UF形・US形継手が適用されます 。これらの継手は、狭い作業空間での施工性を重視した設計となっています。
耐震継手は、離脱防止機構により管路を一体化し、地震時の抜け出しを防ぐ構造を持ちます 。NS形継手は実績のある耐震性能を持ち、呼び径450mmまでがプッシュオンタイプ、500~900mmがメカニカルタイプとなります 。この継手は軟弱地盤や基幹管路などの重要度の高い管路に適用されます 。
参考)耐震継手
GX形継手は、NS形の耐震性能をベースに施工性向上、長寿命化、コスト縮減を実現した新しい耐震管です 。TwinBulb構造のゴム輪採用により、挿入力がNS形の約1/3に軽減され、施工性が大幅に向上しています 。
参考)https://www.jwrc-net.or.jp/docs/publication-outreach/qa/09-59.pdf
耐震継手ダクタイル鉄管は、これまでの大地震で被害を出さず、高い耐震性を実証してきました 。鎖構造管路として機能し、大きな伸縮・可とう性と離脱防止機構により、地震動に対する優れた追従性を発揮します 。
参考)https://www.jdpa.gr.jp/download/catalog/dc_taishin.pdf
開削工法では、一般管路にK形、T形、U形を使用し、地盤条件と管路の重要度に応じて継手を選定します 。軟弱地盤や液状化の可能性がある地域では、耐震継手の採用が推奨されており、特にNS形やGX形が適用されます 。
推進工法においては、工法の特性に応じた継手選択が重要です 。さや管内推進工法では耐震継手使用時に伸縮代の確保が必要で、本管推進工法ではT形やU形・UF形・US形継手を使用します。既設管挿入工法では、管内での接合作業に適した継手形式の選定が求められます。
継手の選定基準として、口径、施工条件、耐震性要求、経済性を総合評価することが重要です 。建築業従事者は、これらの要素を踏まえた適切な継手選択により、工事品質の向上と施工効率の最適化を図ることができます。