

記号の「右側」が通常状態とは限らない——左右が逆に記載された図面で誤作動を起こした現場が実際に存在します。
電磁弁の記号を初めて見た人が戸惑うのは、四角い箱が横に並び、その両脇に見慣れない線や図形がついているからです。しかしこの記号は、「ポート数」「ポジション数(位置数)」「ソレノイド」「バネ」という4つの要素に分解すると、驚くほど論理的に読めるようになります。
まず「ポート」とは、電磁弁に出入りする流体の接続口のことです。ポート数が多いほど、流体の流れを複雑に制御できます。次に「ポジション数」とは、電磁弁が持てる切替状態の数であり、記号中の四角い部屋(ボックス)の個数がそのままポジション数を表しています。ボックスが2個なら2ポジション、3個なら3ポジションです。つまりボックスの数を数えるだけで状態数がわかる、ということですね。
各ボックスの内側に描かれた矢印は、そのポジション(状態)における流体の流れる向きを示します。矢印が入口から出口へ向かっていれば「その経路は開いている」、Tの字(行き止まり記号)が描かれていれば「閉じている」と読みます。
ソレノイド(電磁石)は、ボックスの左右どちらかに斜線の入った長方形として描かれます。シングルソレノイドなら片側のみ、ダブルソレノイドなら両側に描かれます。バネはギザギザ線(波型)で表され、通電が切れたときにスプールを元の位置へ戻す役割を持っています。基本が原則です。
この4要素を頭に入れた上で記号を見ると、「ソレノイドが左にある→通電時は左のボックスが有効」「バネが右にある→非通電時は右のボックスが有効(これがノーマル状態)」という読み方ができます。4つの要素を一つずつ確認すれば大丈夫です。
| 構成要素 | 記号の特徴 | 意味 |
|---|---|---|
| ポート | ボックス下部の線 | 流体の接続口の数 |
| ポジション(位置数) | 四角いボックスの個数 | 切替できる状態の数 |
| ソレノイド | 斜線入り長方形 | 通電時に切替える電磁石 |
| バネ(スプリング) | ギザギザ線(波型) | 非通電時に元の位置へ戻す機構 |
参考:電磁弁の記号の構成や各機能の図解が詳しく解説されています。
【図解】電磁弁の記号の意味は?回路図での見分け方を解説 – planteng-tree.com
電磁弁の記号を正しく理解するうえで、ポートに付いたアルファベット記号を読み解くことは欠かせません。配管現場では、機器本体のポートにアルファベットしか記載されていないことがほとんどで、その場でポート記号の意味を知らなければ正しく配管できません。これは使えそうです。
代表的なポート記号の意味は以下の通りです。
注意が必要なのは、メーカーや規格によってポート記号の表記が異なる場合があることです。たとえばRポートをEXH(エキゾースト)と表記するメーカーもあれば、数字(1、2、3、4、5)で表記する製品もあります。日本アスコ株式会社の公式資料によると、5ポート弁では「1=供給、2・4=シリンダポート、3・5=排気ポート」という数字対応が標準的に使われています。
また、接続しないポートがある場合の処理にも注意が必要です。排気ポートや大気開放ポートにはサイレンサーを取り付け、それ以外の使用しないポートは異物混入防止のためにプラグで塞ぐのが原則です。排気ポートをプラグで塞ぐと、スプールが切り替わる際に空気の逃げ場がなくなり、切替不良が発生することがあります。プラグとサイレンサーの使い分けが条件です。
| ポート記号 | 呼び名 | 役割 |
|---|---|---|
| P | プレッシャー | 圧力・流体の供給口 |
| A / B | Aポート / Bポート | アクチュエータへの供給・戻り切替口 |
| R / EXH | リバース / エキゾースト | 排気・排出口 |
| X | パイロット | 外部パイロット圧の供給口 |
| PE | パイロットエキゾースト | パイロットエアーの排出口 |
| DR / Y | ドレン / Yポート | 油圧の内部漏れ回収口(微量) |
参考:ポート記号の一覧と、接続しないポートの処理方法が詳しくまとめられています。
電磁弁などの制御弁やエアー機器の記号の種類と意味 – 機械組立の部屋
電磁弁記号の中で、現場での誤解が特に多いのが「NC(ノーマルクローズ)」と「NO(ノーマルオープン)」の違いです。どちらも電磁弁の「ノーマル状態(非通電時)」がどちらかを表しており、この読み違えは建築設備の配管工事において深刻なトラブルを引き起こします。
記号上の見分け方は「バネ(ギザギザ線)に近い側のボックス」を見ることです。そのボックス内に流れを示す矢印があれば「常時開(NO)」、行き止まり記号(T字)があれば「常時閉(NC)」となります。つまりバネ側のボックスを確認すれば判断できる、ということですね。
停電時の動作を設計段階で想定する「フェールセーフ」の観点から、NCとNOの選定は非常に重要です。たとえばガス遮断弁や消火設備の制御弁には「停電時に必ず閉じる」NCタイプが使われます。一方、排気や排水系統のように「停電時も流れを止めてはならない」用途にはNOタイプが選ばれます。この選定を間違えると、停電時に意図しない弁の開閉が起き、水損事故や設備損傷に直結します。痛いですね。
また、記号の中に「三角形」が含まれている場合はパイロット式を表します。三角が白抜きなら空気圧パイロット、塗りつぶし(黒塗り)なら油圧パイロットです。さらに「外部パイロット式」では点線がボックスの外側に伸びているのに対し、「内部パイロット式」では点線が外に伸びていない形で表現されます。この点線の有無だけで外部・内部の判別ができます。
内部パイロット式は、電磁弁が扱う流体の圧力を利用してスプールを動かすため、最低動作圧力(一般的に0.15MPa程度)を下回る低圧条件では正常に動作しないことがあります。意外ですね。低圧配管や真空ラインへの転用を検討する際は、必ず直動式かどうかをカタログで確認することが必要です。
参考:NCとNOの記号の違い、パイロット式の種類についての解説があります。
建築設備や機械設備の図面でよく登場する電磁弁には、ポート数によって「2ポート弁」「3ポート弁」「5ポート弁」の3種類があります。それぞれの記号の見た目と用途の違いを正確に理解しておくことが、現場での配管ミスを防ぐ第一歩です。
2ポート弁(2方向電磁弁)は、Pポート(供給)とAポート(出口)の2つだけを持つシンプルな構造です。記号上では2つのポートを接続した2ポジションのボックスで描かれ、単純な流体のON/OFF制御に使われます。給水配管の自動止水弁など、建築設備ではもっとも多く使われます。
3ポート弁(3方向電磁弁)は、Pポート・Aポート・Rポートの3つを持ちます。単動シリンダの制御や流路切替に使われ、記号は3ポートを持つ2ポジションのボックスで表されます。「ユニバーサル型」と呼ばれる3ポート弁は、配管の接続方法を変えるだけでNC型にもNO型にも使えるため、誤接続が起きやすい機種でもあります。これだけ覚えておけばOKです。
5ポート弁(4方向5ポート弁)は、複動シリンダ(空気圧や油圧で伸縮する両方向のシリンダ)の制御に使われます。P・A・B・R1・R2の5ポートを持ち、通電状態と非通電状態でAポートとBポートへの流れが切り替わります。建築設備というよりも空調設備のダンパー駆動や防煙垂れ壁の開閉などに使われるケースがあります。
また、3ポジション弁(ボックスが3個)には「クローズドセンター(全ポート封止)」「エキゾーストセンター(A・B・R接続)」「プレッシャーセンター(P・A・B接続)」の3種類があり、中立位置(非通電時)での流路の違いで使い分けます。シリンダを中間位置で停止したいケースや、推力をフリーにしたい場合には3ポジション弁が必要です。結論は用途と動作要件に合わせた選定です。
参考:各ポート数の電磁弁記号の図解と、JIS規格に基づく記号の読み方が掲載されています。
電磁弁記号の読み間違いは、ベテランの施工者にも起こります。特に図面を短時間で確認しなければならない施工現場では、思い込みによる誤読が配管ミスや試運転トラブルへと発展するケースが少なくありません。ここでは、実際の現場で頻出する読み間違いとその防ぎ方をまとめます。
①「右側=ノーマル」とは限らない問題
電磁弁記号はJIS規格(JIS B 0125-1)では一般的にバネ側(ノーマル位置)を右側に描くのが慣習ですが、回路図の配置の都合上、左右が逆になっているケースが実際に存在します。確認なしに「右がノーマル」と決め打ちすると、接続が逆になります。図面に注記がないかを必ず確認することが条件です。
②ポート数の誤カウント
ボックス内の矢印の本数を「ポート数」と勘違いするケースがあります。正確には、ボックスの下辺(または上辺)から伸びている線の数がポート数です。矢印はあくまで「流れの方向」であり、ポート数ではありません。
③パイロット式を直動式と間違える
記号の中に三角形が見当たらないからといって直動式とは限りません。一部の回路図ではパイロット系統の記号が省略されている場合があります。カタログの型番で直動式かパイロット式かを確認するのが確実です。
④NC/NOの停電動作の確認不足
「電磁弁は通電で開く」と思い込んでいる施工者は多く、実際にはNO型(常時開)を使っている回路で停電時に意図せず弁が閉じてしまい、設備の損傷や水損事故につながった事例があります。NC/NOの確認は、機器選定の段階だけでなく、施工前の図面確認時にも必ず行うことが必須です。
現場でのチェックリストとして、以下を習慣化することが有効です。
手動操作機能(T字記号が付いた電磁弁)は、試運転・故障点検で特に役立ちます。停電状態でも手動でスプールを切り替えられるため、電源がない段階での動作確認が可能です。記号上でT字が付いているかどうかを事前に確認しておくと、現場作業の効率が上がります。これは使えそうです。
なお、電磁弁の記号はJIS B 0125-1(2007年版)が現行規格であり、旧規格(2001年版)で描かれた古い図面との記号の差異に気をつける必要があります。CKD株式会社の公開資料では、旧記号と新記号の対応一覧が確認できます。
参考:JIS規格に準拠した回路図記号の旧・新対応一覧が掲載されており、古い図面を読む際の参照に役立ちます。