

電気計器と組み合わせて使う「トランス」は、一般の電力用変圧器ではなく、計測用に作られた計器用変成器(CT=変流器、VT=計器用変圧器)を指すことが多いです。
目的は単純で、高電圧・大電流を“計器が扱える範囲”の電圧・電流に落とし、しかも一定の精度で再現することです。
ここで重要なのは「安全に小さくする」だけでなく、「誤差のルール(確度階級など)を守り、取引用・保護用の用途に合う特性を選ぶ」点です。
建築設備の現場だと、受変電設備(キュービクル等)で、受電点の計器盤・計量器(電力量計)・保護継電器とセットで設計されます。
参考)https://www.denki.or.jp/wp-content/uploads/2025/05/suisyoutsuihoR7.5.pdf
このとき、CT・VT・VCT(VTとCTの一体形)という言い回しが混在しがちで、図面上の記号や端子表と現物銘板が一致しているかの突合が欠かせません。
参考)油入形電力需給用計器用変圧変流器(VCT)|変成器(VCT・…
また「計器用変成器」という語はJISでも、電気計器または測定装置と共に使用する電流・電圧の変成機器(変流器および計器用変圧器の総称)として整理されています。
参考)CT(変流器)・VT(計器用変成器)のワンポイントアドバイス…
CT・VTの性能を語るうえで頻出するのが、比誤差と位相角です。
比誤差は「変成比がどれだけズレるか」、位相角は「一次と二次の位相がどれだけズレるか」を表し、どちらも電力量(kWh)や力率計算に効いてきます。
要するに、同じ“電流値”に見えても、位相がズレれば有効電力の計算がズレ、取引用メータの結果がズレる余地が生まれます。
現場で盲点になりやすいのが「負担(VA)」です。計器用変成器は、二次側に接続される計器・リレー・配線の合計負担が想定範囲内であることを前提に精度が保証されます。
参考)標準計器用変圧器(高負担用)
例えば、盤の改修で計器を追加したり、配線を延長したりすると負担が増え、誤差が増える方向に働くことがあります。
「確度階級」と「定格負担(VA)」は、銘板・仕様書で必ずセットで確認し、設計と施工で“二次回路全体”を一つの測定系として扱うのが安全です。
参考リンク(規格の用語・分類の根拠:計器用変圧器の定義、接地形/非接地形、コンデンサ形などの分類)
JIS C 1731-2(計器用変圧器)解説ページ
VTには「接地形」「非接地形」などの区分があり、一次端子の一端を接地して使うか、線間に接続して使うかで整理されています。
さらに高電圧領域では、コンデンサ分圧を利用する「コンデンサ形計器用変圧器」という考え方も規格の用語として示されています。
この分類は、単なる呼び名ではなく、系統の接地方式・絶縁設計・雷サージ対策(避雷器で保護される前提の“保護地域用”など)と絡んでくるため、設計段階での整理が重要です。
建築設備側の実務で多いのは、高圧受電(6.6kV)で、計量(取引用)と保護を両立させる構成です。
このとき「取引用」と「保護用」を同一のVT/CTで兼用するのか、分けるのかで、確度階級・飽和特性・施工スペース・コストが変わります。
また油入形VTなどは絶縁媒体として絶縁油を使う製品もあり、設置条件や保守(漏油・火災リスク評価)を含めて機器方式を決めることになります。
参考)油入形非接地形計器用変圧器(VT)|変成器(VCT・CT・V…
計器用変成器の二次回路は「測定のため」だけでなく「事故を起こさないため」の配線でもあります。
特にCT二次は、通電中に二次回路を開放すると危険電圧が発生し得るため、端子台の扱い・短絡手順・チェック端子の構成が安全作業に直結します(現場教育で最優先にしたいポイントです)。
また、電力会社の受電設備規程・付録などでは、変成器二次配線(例:P2、1L、3L回路)に対して、チェックターミナルの電源側でD種接地を施す、といった具体の取り扱いが示されています。
この“チェックターミナルのどちら側で接地するか”は、施工者が自己流で決めると、点検作業性や事故時の挙動、測定ノイズの入り方にも影響し得ます。
さらに、柱上施設時の接地工事など、設置形態によって接地の要求が具体化されている記述もあるため、キュービクル内設置と同じ感覚で流用しないのが無難です。
参考)https://www.rikuden.co.jp/info/attach/kitei.pdf
加えて、業界団体の資料では、キュービクル関連の材料・規格の参照が更新されることもあるため、設計・検収時点で“最新版の参照規格”を確認しておくと手戻りを減らせます。
参考リンク(施工・保守に直結:二次配線の接地位置、柱上施設時の接地などの具体記述)
北陸電力 高圧受電設備規程付録(PDF)
検索上位の解説は「CT/VTとは」「結線はこう」「規格はこれ」が中心になりがちですが、現場でじわじわ効くのは“測定系としての静かな劣化”です。
たとえば、盤改修で二次配線ルートが変わり、配線長が伸びる→二次回路の抵抗が増える→負担(VA)が増える→比誤差・位相角の条件がズレる、という連鎖は、事故ではなく「検針差」「省エネ計測のズレ」として表面化しやすいです。
この手のズレは、設備管理の現場では“トランス(受電変圧器)の効率”や“計器の故障”に話がすり替わりやすいのですが、実際は計器用変成器と二次回路の条件変化が原因になっていることがあります。
また、取引用(需給用)の計器用変成器は、電力量計などと組み合わせて用いることを前提にした規格体系が別に存在します。
参考)JISC1736-1:2009 計器用変成器(電力需給用)−…
このため「一般計測用の感覚」で更新を進めると、確度階級や試験・検定の取り扱い(社内ルールや電力会社協議を含む)で想定外のやり直しが発生し得ます。
独自視点としては、改修工事の“最後の最後”で計器盤の見た目やスペース調整を優先し、二次配線が長くなる・束ね方が変わる・端子台が変わる、といった変更が入りやすいので、変更管理のチェックリストに「二次回路負担(VA)再確認」を入れるのが効果的です。