絶縁油種類と特徴:不動産の変圧器選びに

絶縁油種類と特徴:不動産の変圧器選びに

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絶縁油種類と特徴

絶縁油の主な分類
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鉱物油系(1種)

原油を精製した炭化水素が主成分で、変圧器や遮断器に最も広く使用される標準的な絶縁油です

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合成油系(2~6種)

アルキルベンゼン、ポリブテン、シリコーン油など化学合成された高性能絶縁油で、特殊用途向けです

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混合油(7種)

鉱物油と合成油を混合した絶縁油で、両者の特性を併せ持つバランス型として利用されます

絶縁油種類の基本分類と規格

 

絶縁油はJIS C 2320-2010において主成分によって7種類に分類されています。1種は鉱油を主成分とする絶縁油で、油入変圧器や油遮断器で広く使用される最も一般的なタイプです。1種の中でも用途に応じて1号から4号までの細分類があり、2号が一般地の変圧器に、3号が寒冷地を除く用途に、4号が大容量高圧変圧器に使用されます。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B6%E7%B8%81%E6%B2%B9

合成油系には2種のアルキルベンゼン、3種のポリブテン、4種のアルキルナフタレン、5種のアルキルジフェニルアルカン、6種のシリコーン油が含まれます。これらの合成油は主にコンデンサーやケーブル、特殊な変圧器など特定の用途向けに開発されています。7種は1種の鉱油と2種のアルキルベンゼンを混合した混合絶縁油で、コンデンサーやケーブル、変圧器に使用されます。
参考)https://www.eneos.co.jp/binran/part02/chapter02/section06.html

不動産施設の受変電設備では、一般的に1種2号の鉱物油が標準として採用されており、絶縁性能と冷却効果の両面で高い性能が求められます。
参考)https://electric-facilities.jp/denki7/se/009.html

絶縁油種類別の変圧器用途と選定基準

変圧器に使用される絶縁油は、絶縁と冷却という二つの重要な役割を果たします。鉱物油系の1種2号絶縁油は、厳選された原油から高度な品質管理のもとで製造され、絶縁破壊電圧が高く酸化安定性に優れているという特徴があります。大容量変圧器では隔膜式により大気と遮断されているため油の酸化劣化が起こりにくく、熱安定性や電気特性が重視されます。
参考)https://www.snyk.co.jp/pages/53/detail=1/b_id=368/r_id=14/

一方、小型変圧器は大気と接触する開放形が多いことから、良好な酸化安定性が特に求められます。合成油であるシリコーン油(6種)は油入変圧器で使用され、難燃性や高い熱安定性という独自の特性を持ちますが、鉱物油と比較してコストが高いという課題があります。​
選定時には設置環境、容量、電圧レベル、メンテナンス性、コスト面を総合的に考慮する必要があります。流動帯電現象が懸念される大容量変圧器では、ベンゾトリアゾールなどの流動帯電抑制剤が添加されることもあります。​

絶縁油種類とコンデンサー・ケーブル用途の違い

コンデンサー油は電力用コンデンサーに使用される絶縁油で、変圧器油とは異なる特性が求められます。コンデンサーは薄葉誘電体とアルミ箔電極の組み合わせを鉄製容器に収納し絶縁油を含浸する構造であり、ガス吸収性、電気特性、安定性に優れていることが重要です。電力用コンデンサーの高性能化に伴い、アルキルジフェニルアルカンなどの合成油が主に使用されています。
参考)https://nissin.jp/technical/technicalreport/pdf/2017-148/2017-148-13.pdf

ケーブル油は油入電力ケーブルに使用され、主にアルキルベンゼン(分岐鎖形、直鎖形)が採用されています。分解ガスを発生する放電が起きにくいこと、発生したガスを吸収しやすいことが重要な選定基準となります。近年は生分解性の観点から、分岐鎖形から直鎖形のアルキルベンゼンへの移行が進んでいます。​
コンデンサーやケーブルでは変圧器よりも厳しい電気的ストレスがかかるため、より高度な電気特性と長期安定性が要求されます。​

絶縁油劣化の原因とメンテナンス管理

絶縁油の主成分である炭化水素化合物は、酸素や熱、金属の影響により時間とともに酸化劣化して劣化生成物を形成します。劣化生成物は導電性を持つため絶縁油の電気絶縁特性の低下を招き、変圧器全体の絶縁抵抗を低下させます。劣化生成物は親水性も持ち、大気中の水分を油中に取り込むことで絶縁破壊電圧を低下させる二重の悪影響があります。
参考)https://www.tdsnet.co.jp/technical/absolute-oil

変圧器運転時の温度変化により外気との呼吸作用が行われ、気密不良や油漏れがあると酸素や水分が取り込まれます。油中の酸素と水分が鉄分に接触した状態で運転温度が加わると酸化が促進され、酸価(酸性有機物質の総量)が増大します。酸価が進展すると絶縁油と金属やコイル絶縁物が化合してスラッジが生成され、冷却効果の低下や温度上昇、絶縁物の熱劣化加速につながります。
参考)https://www.jeea.or.jp/course/contents/07201/

定期的な絶縁油分析試験により絶縁破壊電圧、酸価、水分含有量、tanδなどを測定し、劣化状態を把握することが重要です。
参考)https://www.kyokuto.co.jp/insulatingOilTest.html

絶縁油種類選定における不動産管理の実務ポイント

不動産施設の電気設備管理において、絶縁油の適切な選定と管理は設備寿命と安全性に直結します。新設時には施設の電力需要、設置環境(屋内・屋外、寒冷地など)、将来の拡張性を考慮した容量選定を行います。一般的な商業ビルやオフィスビルでは鉱物油系の1種2号絶縁油を使用した変圧器が標準的ですが、防災上の理由から難燃性が求められる場合はシリコーン油の採用も検討されます。
参考)https://www.daihen.co.jp/technologygeeks/cat01/cat01_01/209/

メンテナンス計画では、運転開始から3年後に初回の絶縁油分析を実施し、以降は5年ごとの定期分析が推奨されます。分析結果に基づき絶縁油の交換時期を判断しますが、交換費用は絶縁油20万円程度、工事・撤去・処分費25万円程度で合計45万円前後が目安となります。古い設備ではPCB(ポリ塩化ビフェニル)含有調査も必須です。
参考)https://jeea.or.jp/course/contents/07203/

油入変圧器は絶縁油の漏れ確認、油劣化防止装置の呼吸口点検、油面計などの付属部品の点検も重要な管理項目です。
参考)https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/parts/q13.html

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