銅管ベンダー曲げ寸法一覧と送り寸法設計ガイド

銅管ベンダー曲げ寸法一覧と送り寸法設計ガイド

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銅管ベンダー曲げ寸法一覧

銅管ベンダー曲げ寸法の基礎知識
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基本サイズと曲げ半径

各銅管サイズに対応した標準的な曲げ半径と工具選定の基準

送り寸法の計算

つかみしろの適切な設定方法と実務での応用テクニック

🔧
工具選定と品質管理

ベンダー選択のポイントと施工時のトラブル回避策

銅管ベンダー基本サイズと曲げ半径一覧

銅管ベンダーによる配管加工において、最も基本となるのがサイズごとの曲げ半径の把握です。建築用銅管と冷媒用銅管では規格が異なるため、正確な寸法管理が施工品質に直結します。

 

建築用銅管(給湯用)の標準曲げ半径

  • 1/4"(外径9.52mm):曲げ半径 23.5mm
  • 3/8"(外径12.7mm):曲げ半径 28mm
  • 1/2"(外径15.88mm):曲げ半径 34mm
  • 5/8"(外径19.05mm):曲げ半径 37.5mm
  • 3/4"(外径22.22mm):曲げ半径 38.1mm

冷媒用銅管の曲げ半径

  • 1/4"(外径6.35mm):曲げ半径 17.5mm
  • 3/8"(外径9.52mm):曲げ半径 17.5mm
  • 1/2"(外径12.7mm):曲げ半径 28.6mm
  • 5/8"(外径15.88mm):曲げ半径 38.1mm

これらの数値は工具メーカーによって若干の差異がありますが、一般的な手動ベンダーでの標準値として広く使用されています。

 

曲げ半径が小さすぎると管の内部が潰れやすくなり、大きすぎると設計スペースに収まらない問題が生じます。特に空調設備の配管では、限られた天井裏スペースでの施工が多いため、適切な曲げ半径の選択が重要になります。

 

肉厚による制約も考慮が必要です。軟質銅管の場合、6mm管で最大肉厚1.2mm、10mm管で1.4mm、12mm管で1.4mmが一般的な加工限界となります。これを超える肉厚の管材では、油圧ベンダーの使用を検討する必要があります。

 

銅管ベンダー送り寸法(つかみしろ)の計算方法

送り寸法、通称「つかみしろ」は、曲げ直前・直後のパイプの直線部分の長さを指します。この寸法が不適切だと、ベンダーのフックやホイールが管を適切に把持できず、加工精度が著しく低下します。

 

手動ベンダーの標準送り寸法

  • 6mm管:前後各50mm以上
  • 8mm管:前後各60mm以上
  • 10mm管:前後各70mm以上
  • 12mm管:前後各80mm以上
  • 15mm管:前後各100mm以上

これらの数値は配管曲げ業者との実務経験から導き出された実用的な目安値です。ただし、使用するベンダーの型式や自動・手動の違いによって必要な送り寸法は変動するため、事前の確認が欠かせません。

 

LマークとRマークの使い分け
チューブベンダーには、正確な位置決めのためのマーキングシステムが装備されています。

 

  • Lマーク:ベンダーのフックより前方に指定寸法をとる場合に使用
  • Rマーク:ベンダーのホイールより後方に指定寸法をとる場合に使用

例えば、銅管の左端より50cmの位置で90°曲げを行う場合、前寸法50cmを測定してマークを付け、そのマークをベンダーシューのLマークに合わせて曲げ作業を実施します。

 

実務での計算例
管径12.7mmの銅管で、端部から200mmの位置で90°曲げを行う場合。

  • 必要な送り寸法:80mm(12mm管の標準値)
  • 実際の加工可能性:200mm > 80mmのため加工可能
  • マーキング位置:端部から200mm地点にマーク

このような事前計算により、図面段階で製作可能性を判断できます。

 

銅管ベンダー工具選定と使用上の注意点

銅管ベンダーの選定は、加工する管径、材質、求められる精度、作業頻度によって決定されます。適切な工具選択は作業効率と仕上がり品質の両方に大きく影響するため、慎重な検討が必要です。

 

工具タイプ別の特徴
手動チューブベンダー

  • 対応管径:6mm~12mm(一般的な範囲)
  • 曲げ角度:最大180°
  • 精度:±2°程度
  • 価格帯:10,000円~50,000円

油圧ベンダー

  • 対応管径:6mm~28mm(拡張可能)
  • 曲げ角度:最大180°
  • 精度:±1°程度
  • 価格帯:50,000円~200,000円

電動ベンダー

  • 対応管径:6mm~42mm
  • 曲げ角度:最大180°
  • 精度:±0.5°程度
  • 価格帯:200,000円~500,000円

材質による制約も重要な選定要因です。軟質銅管、硬銅管、ステンレス管、アルミ管では、同じ外径でも必要な加工力が大きく異なります。例えば、ステンレス管の場合は銅管の約1.5倍の力が必要となり、手動ベンダーでは限界があることも多いです。

 

使用時の重要な注意点

  • 管の支持方法:曲げ加工中は管全体を適切に支持し、不要な応力集中を避ける
  • 加工速度:急激な曲げは管の変形や亀裂の原因となるため、ゆっくりとした操作を心がける
  • 温度管理:冬季の屋外作業では管材が硬化するため、可能であれば室温での加工を推奨

作業環境による影響も見逃せません。狭小な天井裏での作業では、ベンダーの操作スペースが制限されるため、コンパクトな工具の選択や予備曲げの活用が有効です。

 

銅管ベンダー施工時の品質管理とトラブル対策

銅管ベンダーを使用した配管工事において、品質管理は施工の成否を左右する重要な要素です。特に空調設備や給湯設備では、わずかな加工不良が系統全体の性能低下を招く可能性があります。

 

主要な品質チェックポイント
寸法精度の確認

  • 曲げ角度の測定:デジタル角度計を使用し、±1°以内の精度を確保
  • 送り寸法の検証:設計値との整合性を各曲げ部で確認
  • 全長寸法の測定:累積誤差を防止するため、全体寸法を最終チェック

外観品質の評価

  • 扁平率の測定:管径の変化率が5%以内であることを確認
  • 表面傷の有無:亜鉛メッキ層の損傷は腐食の原因となるため重要
  • 曲げ部の滑らかさ:急激な曲率変化は流体抵抗の増加要因

よくあるトラブルと対策
管の扁平化
原因:曲げ半径が小さすぎる、送り寸法不足、加工速度が速すぎる
対策:適切な曲げ半径の選択、十分な送り寸法の確保、ゆっくりとした操作
表面の傷つき
原因:ベンダーシューの汚れ、管表面の異物、工具の摩耗
対策:定期的な工具清掃、管材の清拭、消耗部品の交換
角度精度の不良
原因:工具の較正不備、作業者の技量不足、測定器具の精度
対策:定期的な工具較正、技能訓練の実施、高精度測定器の使用
記録管理も品質保証の重要な要素です。各配管の加工データ(曲げ角度、寸法、使用工具、作業者)を記録し、問題発生時のトレーサビリティを確保することが推奨されます。

 

大規模プロジェクトでは、加工前のサンプル製作と承認プロセスを設けることで、量産時の品質安定化を図ることができます。

 

銅管ベンダー設計における効率化のコツ

銅管ベンダーを使用した配管設計では、製作性を考慮した設計が工期短縮とコスト削減に直結します。設計段階での工夫により、現場での手戻りを最小限に抑制できます。

 

設計効率化の実践テクニック
標準曲げ半径の活用
多くの設計者が見落としがちなのが、工具の標準仕様に合わせた設計です。特殊な曲げ半径を指定すると専用工具が必要となり、コストと工期の増加要因となります。可能な限り、一般的なベンダーの標準曲げ半径(23.5mm、28mm、34mm、38.1mm)を採用することが重要です。

 

連続曲げの制約理解
Rが連続的に変化する複雑な曲げは、一般的なベンダーでは対応困難です。このような形状が必要な場合は、複数の直線部と曲げ部の組み合わせで近似するか、プレハブ加工品の採用を検討します。

 

配管ルートの最適化
配管経路の計画時には、以下の点を考慮することで加工効率が向上します。

  • 曲げ方向の統一:同一平面内での曲げを基本とし、立体的な曲げを最小限に抑制
  • 送り寸法の確保:設計段階で各曲げ部の前後に十分な直線部を確保
  • アクセス性の考慮:ベンダー工具の操作スペースを設計に織り込む

プレハブ化の積極活用
複雑な配管形状は、工場でのプレハブ加工を積極的に活用することで、現場作業の簡素化と品質安定化を実現できます。特に以下のような場合にプレハブ化が有効です。

  • 連続する複数の曲げ部を含む配管
  • 高精度が要求される計測機器周辺の配管
  • 狭小部での施工が予想される配管

設計チェックリスト
効率的な銅管ベンダー設計のために、以下のチェックリストを活用することを推奨します。

  • 曲げ半径は標準値(23.5、28、34、38.1mm)を使用しているか
  • 各曲げ部の送り寸法は管径に応じた最小値以上か
  • 連続曲げの箇所はないか
  • ベンダー操作に必要なスペースは確保されているか
  • プレハブ化可能な部分はないか

これらの設計配慮により、製作コストの20~30%削減と工期の15~20%短縮が期待できます。特に大規模な空調設備プロジェクトでは、これらの効果が顕著に現れます。

 

最終的に、美しい配管設計は機能性と製作性の両立から生まれます。「神は細部に宿る」という言葉通り、パイプ一つの設計にも妥協せず、総合的な品質向上を目指すことが重要です。