
銅管ベンダーを使用する際に最も重要な概念が「送り寸法」です。送り寸法は別名「つかみしろ」とも呼ばれ、曲げ直前・直後のパイプの直線部分の長さを指します。この寸法を理解せずに設計を行うと、製作不可能な図面を作成してしまう可能性があります。
送り寸法が必要な理由は、パイプベンダーの構造的特性にあります。工具の特性上、必ず直線部分が必要となり、Rが連続的に変化する複雑な曲げは基本的に実現できません。そのため、設計段階で適切な送り寸法を確保することが製作可能性を左右する重要な要素となります。
🔧 送り寸法の目安(一般的な配管曲げ業者基準)
実際の製作現場では、使用するベンダーの種類(手動か自動か)によっても必要な送り寸法が変わってきます。設計者は現場の加工業者と事前に打ち合わせを行い、使用予定の工具に適した送り寸法を確認することが推奨されます。
チューブベンダーには、正確な寸法設定を行うための「Lマーク」と「Rマーク」が設けられています。これらのマークを正しく活用することで、設計通りの配管加工が可能になります。
Lマークの使用方法(前寸法設定)
Lマークは、ベンダーのフックより前方に指定寸法をとって90°曲げを行う場合に使用します。例えば、銅管の左端より50cm指定で前寸法をとって曲げる手順は以下の通りです。
Rマークの使用方法(後寸法設定)
Rマークは、ベンダーのホイールより後方に指定寸法をとって90°曲げを行う場合に使用します。銅管の右端より40cm指定で後寸法をとって曲げる場合。
📋 前寸法・後寸法選択の判断基準
この使い分けにより、複雑な配管レイアウトでも正確な寸法管理が可能となります。
銅管ベンダーの性能は、対応可能な管材質と曲げ半径によって決まります。適切な工具選択のため、管材質別の対応一覧を把握しておくことが重要です。
管材質別対応表
外径(mm) | 軟質銅管 | 軟粘質アルミ管 | ステンレス管 | 曲げ半径R |
---|---|---|---|---|
6mm | ○ | △ | 14mm | |
8mm | ○ | △ | 17mm | |
10mm | ○ | △ | 23mm | |
12mm | ○ | △ | 38mm |
肉厚制限について
チューブベンダーでは、管の外径だけでなく肉厚も重要な制限要素となります。
⚠️ 注意すべき材質特性
硬銅管や鉄鋼管は一般的なチューブベンダーでは加工が困難な場合があります。これらの材質を扱う場合は、油圧ベンダーなどの専用工具の使用を検討する必要があります。
管の硬度や粘性(靭性)により仕上がりに差が生じることがあるため、仕上がりにへこみや扁平が生じる場合は、より軟粘質の管での試行が推奨されます。
銅管ベンダーでは、0点を基準とした角度設定により、様々な曲げ角度に対応できます。実際の現場でよく使用される角度別の設定方法を詳しく解説します。
0点を使った角度設定方法
お客様の指定角度に曲げる場合の基本手順。
実践的な角度別設定例
📐 角度設定時の重要ポイント
複数角度を組み合わせた配管設計
実際の建築現場では、単一角度だけでなく複数の角度を組み合わせた配管設計が求められます。この場合、各曲げ位置間の送り寸法を慎重に計算し、全体のレイアウトとの整合性を確認することが重要です。
特に狭小スペースや複雑な設備配置の場合、3D CADを活用した事前シミュレーションにより、製作可能性を検証することが推奨されます。
銅管ベンダーを使用した配管設計では、製作段階でのトラブルを予防するための注意点があります25。実際の現場で発生しやすい問題とその対策方法について解説します。
よくある設計トラブル事例
配管設計の経験が浅い設計者が陥りやすいのが、「ヘビのような複雑な曲げを連続させた配管」の設計です。このような設計は理論上は可能に見えても、実際の製作では以下の問題が発生します。
🛠️ トラブル予防のための設計指針
品質管理のための検証項目
設計完了後は以下の項目を必ず検証します。
美しい配管設計の追求
技術的な要件を満たすだけでなく、美観も重要な要素です。「神は細部に宿る」という言葉通り、優れた機械は配管も美しく整理されています。設計者は組みやすく、メンテナンスしやすく、そして美しい配管設計を心がけることで、全体的な品質向上に貢献できます。
配管設計はまさに設計センスが問われる分野であり、技術的な正確性と美的感覚の両方を備えた設計が求められます。