エタノール アルコール 違いと建築業での用途や特徴

エタノール アルコール 違いと建築業での用途や特徴

記事内に広告を含む場合があります。

エタノール アルコール 違い

この記事で分かること
🔬
アルコールとエタノールの関係

アルコールは化合物の総称で、エタノールはその一種であることを理解できます

⚠️
各種アルコールの特性と安全性

メタノール、イソプロパノールなど、種類ごとの用途と危険性が分かります

🏗️
建築現場での活用方法

脱脂洗浄や消毒など、実務に役立つ使用方法と保管ルールを習得できます

エタノールとアルコールの基本的な関係性

アルコールとは、炭化水素の水素原子がヒドロキシ基(-OH)に置き換わった物質の総称です。エタノールは、このアルコールという大きなグループに属する一種であり、エチルアルコールや酒精とも呼ばれています。
参考)https://www.chinoshiosya.com/news/feature/type-and-difference-of-ethanol/

アルコールをケーキに例えるなら、ケーキが大分類(アルコール)で、モンブランやチョコレートケーキが小分類(エタノール、メタノールなど)に該当します。一般的な会話で「アルコール」と言う場合、多くはエタノールを指していることが多く、消毒用アルコールの「アルコール」も実際にはエタノールのことを意味しています。
参考)https://www.alcohol.jp/general/qa/qa001.html

国際化学命名法では「エタノール」が正式名称ですが、「エチルアルコール」は慣用名として広く使われており、日本語では「酒精」という名称もあります。成分的には、お酒として飲むアルコールと全く同じ物質です。
参考)http://www.jaist.ac.jp/~tujimoto/hasshin/shouriken/Yakuhin2.html

エタノールの種類と濃度による分類

市販されているエタノールは、濃度によって主に3つのタイプに分類されます。無水エタノールは濃度99.5%以上で、エタノールは濃度95%、消毒用エタノールは濃度80%前後となっています。
参考)https://halmek.co.jp/qa/1566

消毒や殺菌に最も適しているのは、濃度80%前後の消毒用エタノールです。適度な水分がアルコール分子による微生物の破壊を助けるほか、皮膚に浸透する速度や蒸発までの時間も適しているためです。これ以上の濃度になると、エタノールがすぐに蒸発してしまうため、消毒効果は低下してしまいます。​
製造方法による分類では、合成エタノールと発酵エタノールに分けられます。合成エタノールはエチレンを原料に化学的に合成され、インク、塗料、接着剤、化粧品などの工業用に使用されます。一方、発酵エタノールはサトウキビやトウモロコシ、米など天然の原料を発酵させて作り、食品の防腐剤、調味料、酒など飲料や食品を中心に広範に使用されます。
参考)https://www.sankyo-chem.com/news/post-583/

エタノール以外の主なアルコール類の特徴

アルコール類には、エタノール以外にも様々な種類が存在します。メタノール(メチルアルコール)は炭素が1つのアルコールで、化学薬品製造の中間原料や溶媒、工業用の洗浄剤、塗料のシンナーとして使用されます。
参考)https://connect.nissha.com/gassensor/blog/ethanol/

しかし、メタノールには強い毒性があります。体内に取り込まれるとホルムアルデヒドに分解され、さらに蟻酸という有毒物質に変化します。この蟻酸によって、めまい、腹痛、吐き気、視力障害、呼吸困難、意識障害などの症状が現れ、少量の誤飲であっても死に至ることがあります。そのため、メタノールは消毒用には使われません。
参考)https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?blockId=75475amp;dbMode=article

イソプロパノール(イソプロピルアルコール)は炭素が3つのアルコールで、消毒薬として使われます。消毒用エタノールと同等の効果がありますが、ロタウイルスやアデノウイルスには効果が弱く、毒性や脱脂作用は消毒用エタノールより強いという特徴があります。有害性や環境負荷が小さいことから、塗料やインクの溶剤としてトルエンキシレンに代わって使われることもあります。
参考)https://johokiko.co.jp/chemmaga/pov_012/point_of_view/

エタノールの物理的・化学的性質

エタノールは無色透明で揮発性のある液体で、特有の芳香を持っています。水や他のアルコール及びその他の有機化合物とよく混和する性質があり、よく燃える性質も持っています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB

その分子は、油になじみやすいエチル基(CH₃CH₂-)と水になじみやすいヒドロキシ基(-OH)が結合した構造を持つため、水と自由な割合で混和することが可能です。同時に、様々な有機溶媒とも比較的自由な割合で混和できるため、様々な物質を溶解させる能力を持つ有機溶媒の一種として数えられます。​
エタノールは酸化によってアセトアルデヒドに化学変化し、さらに酸化されると酢酸になります。空気中で完全燃焼すると、二酸化炭素と水を生じます。水とエタノールの混合液を蒸留する場合、エタノール96%、水4%の共沸混合物となるため、蒸留によって得られるエタノールの最高濃度は96%となります。​

建築業におけるエタノール・アルコールの活用場面

建築現場では、エタノールやアルコール類が脱脂洗浄や消毒など様々な用途で使用されています。脱脂処理は、表面に付着した油脂や汚れを除去し、塗料が被塗物としっかり密着するための基盤を作る重要な作業です。
参考)https://ncc-nice.com/ncc-coating/knowledge/measures/importance/

イソプロピルアルコール(IPA)やエタノールは、比較的安全性が高く、速乾性に優れているため、脱脂剤として使用されます。臭気が少なく、常温乾燥可能というメリットがありますが、強い油汚れやシリコン系離型剤には不十分という側面もあります。
参考)https://tclb.co.jp/column/dassi-choice/

エタノールを高濃度に含有した洗浄剤は、ほこりや塵、皮脂などの洗浄に優れており、金属・樹脂加工後の仕上げやガラス製試験器具の洗浄などに使用できます。従来のアルコール系溶剤(メタノール・IPA等)を使用した洗浄剤と比較して安全性が高いことが特徴です。
参考)https://www.sankyo-chem.com/washing/

小面積や部分的な脱脂にはスプレー洗浄が便利で、速乾性の溶剤が向いています。大量の部品をまとめて処理する際には浸漬洗浄が有効です。​

危険物としてのアルコール類の法規制

消毒用アルコールは、アルコールの濃度が60%以上(重量%)の製品が消防法上の危険物に該当します。危険物に該当する消毒用アルコールは、消防法では「第四類・アルコール類」に分類され、貯蔵・取扱いする数量に応じて許可申請または届出が必要となります。
参考)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/arukouru.html

具体的には、80L未満の場合は届出・許可申請の必要はありませんが、80L以上400L未満では届出が必要です。400L以上を貯蔵または取り扱う場合には許可申請が必要となります。
参考)https://unithouse.wssl.co.jp/blog/2024/05/17/alcohol/

エタノールは、その純度や生成方法、性質によって、飲用、医薬用、および工業用に分類され、それぞれ適用される法令が異なります。工業用はアルコール事業法(経済産業省)、飲用は酒税法(財務省)、医薬用は薬事法(厚生労働省)が所管しています。
参考)https://www.kaken-tech.co.jp/trouble/alcohol_ethanol-2/

工業用アルコールには、一般アルコール、特定アルコール、変性アルコールの3種類があり、それぞれ用途や規制が異なります。一般アルコールは安価ですが経済産業省の事前許可と記帳・報告が必要で、特定アルコールは自由に使用できますが加算額を含むため高価です。変性アルコールは、酒類への不正使用を防止するため添加剤を加えた混合溶剤で、基本的にエタノール分は90%以下となっています。​

建築現場でのアルコールチェック義務化への対応

2022年4月の道路交通法施行規則の改正により、建設業を含む一定数の白ナンバー車を使用している事業所に対してアルコールチェックが義務化されました。2023年12月1日からは、アルコール検知器を使用したチェックが義務化されています。
参考)https://hitorioyakata.or.jp/blog/107

建設業の従事者は、請け負った仕事によって仕事場、つまり現場が異なることが多いため、車の使用率は他の業種・職種と比較して多くなります。現場間の移動や資材の運搬に使用され、直行直帰の従業員が運転するケースも多く、遠隔地でのアルコールチェック実施や記録管理は大きな課題となっています。
参考)https://alcoms.jp/column/19382

対象となるのは、乗車定員が11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上保有する事業所です。アルコールチェックでは、運転者の酒気帯びの有無を目視等で確認し、その内容を記録しなければなりません。2023年12月以降は、アルコール検知器を用いた確認が必須となっています。​
建設現場では、従来は昼休憩に飲酒するケースも見られましたが、現在では安全管理の観点から厳しく管理されています。アルコールチェック義務を怠った場合には罰則が科される可能性があり、適切な管理体制の構築が求められています。
参考)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14294972099

エタノールの安全な取り扱いと保管方法

エタノールは揮発性が高く、引火しやすい性質を持つため、取り扱いには十分な注意が必要です。保管場所は直射日光を避け、火気のない冷暗所を選ぶことが基本となります。
参考)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/chozou.html

危険物に該当する消毒用アルコール(濃度60%以上)を80L以上保管する場合は、消防署への申請や届出が必要です。保管する場所についても、関係法令により様々な制約が設けられています。令和2年11月5日からは、消毒用アルコールの貯蔵について一定の条件を満たせば、火災予防条例で定めている位置・構造・設備の一部を緩和することができるようになりました。
参考)https://www.119.city.hikari.lg.jp/untitled6111144.html

使用時には、必ず換気を十分に行い、静電気の発生を防ぐための対策も重要です。スプレー洗浄を行う際は、霧状になったエタノールが広範囲に飛散するため、周囲に火気がないことを確認してから作業を開始します。​
また、メタノールなど毒性の強いアルコール類を誤って使用しないよう、容器の表示を必ず確認することが重要です。工業用アルコールと飲用アルコールを混同しないよう、明確に区分して保管する必要があります。
参考)https://www.sankyo-chem.com/news/post-849/

保護具の装着も忘れてはなりません。長時間の使用では、手袋やゴーグル、必要に応じて防毒マスクを着用することで、皮膚への刺激や蒸気の吸入を防ぐことができます。使用後は容器をしっかりと密閉し、残った溶剤が蒸発しないよう管理します。
参考)https://www.sankyo-chem.com/news/post-931/

東京消防庁「消毒用アルコールは正しく取扱いましょう!」- 消毒用アルコールの火災危険性と保管方法について詳しく解説されています
健栄製薬「無水エタノールと消毒用エタノール、どこが違うの?」- エタノールの種類と濃度の違い、それぞれの用途について分かりやすく説明されています
三協化学「メタノールとは?エタノールとの違いや毒性などを中心に解説」- メタノールの危険性とエタノールとの違いについて詳細に記載されています