

フタル酸ジブチル(DBP)はフタル酸エステル系可塑剤の一種で、塗料・接着剤・合成皮革・塩化ビニル樹脂などを柔らかくする目的で広く使われてきました。[4][14]
国内の建築分野では、PVC系床材・壁紙・天井材や電線被覆、シーリング材などに含まれる可塑剤の一部としてDBPが使用されてきた経緯があります。[6][5]
フタル酸エステル類は、ポリ塩化ビニル(PVC)の軟質化に非常に適している一方で、内分泌かく乱作用などの懸念から各種規制の対象となりました。
参考)可塑剤をめぐる最近の動向|安全性|塩ビ工業・環境協会(VEC…
DBPも他の代表的フタル酸エステル(DEHP、BBP、DIBPなど)とともに、EUのREACH規則やRoHS指令、日本の食品衛生法・PRTR制度などで有害性評価・管理が進められています。
参考)【欧州】REACH規則:フタル酸規制改正
住宅室内では、玩具や育児用品だけでなく、床材・壁紙など建材に含まれるフタル酸エステル類が室内空気への発生源になり得ると指摘されています。
参考)https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/4f/phthalates.html
一方で、日本では玩具や食品接触材料に比べて、住宅の建材や内装材そのものに対してはDBPを直接規制する仕組みがまだ整っていないという点が、建築従事者にとって意外なポイントです。
建築実務の感覚では「シックハウス対策=ホルムアルデヒド」というイメージが強いものの、厚生労働省はDBPについても室内空気中指針値0.22 mg/m³(0.02 ppm)を設定し、シックハウスとの関連性を注視しています。
参考)https://www.prtr.env.go.jp/factsheet/factsheet/pdf/fc00354.pdf
つまり、法令上はホルムアルデヒドほどの直接的規制はないものの、指針値越えを避けるべき化学物質として位置づけられているため、建材選定や仕様書作成で意識する価値があります。
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[16][15][4]
可塑剤業界では、DEHPやDBPなど従来型フタル酸エステルから、フタル酸フリー可塑剤やTOTMなどの高分子可塑剤への切り替えが進んでおり、建材製品でも「非フタル酸」「フタル酸エステル不使用」などの表示が増えつつあります。
参考)https://www.knights.jp/PDF/P-00189.pdf
ただし、既存ストック建物や輸入品の一部には依然としてDBPを含む材料が残っている可能性があり、新築だけでなく改修・解体時のリスクも意識しておく必要があります。
参考)https://www.nite.go.jp/data/000010054.pdf
EU RoHS指令では、電気・電子機器中の特定有害物質として4種のフタル酸エステル(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が追加され、均質材料中0.1wt%を超えて含有することが禁止されています。[8][20][21][7]
対象は家電やIT機器だけでなく、照明器具や制御盤など建物に組み込まれる電気・電子機器全般であるため、建築設備の調達でもRoHS適合品を前提とするのが事実上の標準になっています。[22][23]
一方、EU REACH規則の附属書XVII(Entry 51)では、上記4物質の合計が「成形品中の可塑化材料の重量の0.1%以上」となる場合、その成形品の上市が制限されています。
参考)フタル酸エステルの4物質(DEHP、DBP、BBP 、DIB…
RoHS指令対象の電気・電子機器についてはREACH Entry 51が適用除外とされており、二重規制にならないよう調整されている点はあまり知られていません。
参考)RoHS指令に準拠したグリーン調達基準による調達は、REAC…
| 規制 | 対象 | フタル酸ジブチルの上限 |
|---|---|---|
| EU RoHS指令 | 電気・電子機器の均質材料 | DBP単独で0.1wt%以下 |
| EU REACH規則 附属書XVII Entry 51 | 全ての成形品の可塑化材料 | DEHP・DBP・BBP・DIBPの合計0.1wt%以下 |
日本からEU向けに建材や建築関連製品(PVC床材、壁紙付きパネル、配線部材など)を輸出する場合、電気・電子機器でなくてもREACH Entry 51に基づく4フタル酸合計0.1wt%規制を満たす必要があります。
参考)可塑剤の規制動向について
特にPVCテープやケーブル被覆など、可塑剤を多く含む部材はリスクが高く、TSCAなど米国規制も含めて複数法令への同時対応を求められるケースが増えています。
参考)RoHS指令とREACH規則について
実務では「RoHS対応=REACHも自動的にOK」と誤解されがちですが、REACHではSVHCリスト収載や成形品中0.1wt%超の届出義務など、別軸の要求事項が存在します。
参考)Q656.REACH規則とRoHS指令の関係性について
chemSHERPAなどの情報伝達スキームを活用し、サプライヤからフタル酸エステル類の含有情報を系統的に収集し、建物全体としてコンプライアンスを確認することが重要です。
参考)https://home.jeita.or.jp/eps/pdf/eu201608092.pdf
日本では、食品衛生法や関連通知により、食品用器具・容器包装に使用される合成樹脂中のフタル酸エステル類が厳しく管理されており、DBPを原料とする樹脂も評価対象となっています。[26][14]
また、食品衛生法施行規則の改正により、指定おもちゃの可塑化材料部分においてDBPなど複数のフタル酸エステルが0.1%を超えて含有することが禁止されています。[9][27]
興味深いのは、玩具や育児用品ではフタル酸エステルの種類・上限値が明確に規定されている一方で、住宅の建材や内装材に対しては同等レベルの法的上限値が設けられていないという点です。
参考)器具・容器包装おもちゃ
愛知県衛生研究所の情報でも、玩具や育児用品への使用は規制されているが、住宅建材・内装材への使用については規制が行われていないと明記されており、建築従事者にとっては意外なギャップと言えます。
ただし、保育施設や児童施設など子どもが長時間滞在する建物では、玩具・おもちゃだけでなく、床材・壁仕上げも「食品衛生法・ST基準適合可塑剤」や「非フタル酸エステル」製品を選定する設計方針がとられるケースが増えています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi/64/4/64_145/_pdf
その背景には、PVC製おもちゃの可塑剤調査で、食品衛生法やST基準適合表示の有無によるフタル酸エステル使用状況の違いが報告されていることがあり、建材選定にも同様の考え方を伸ばす動きがあるためです。
[28][29]
[30][29]
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また、食品工場や厨房の床・壁など食品に近接する建築部位では、食品衛生法の精神を踏まえ、DBPなどのフタル酸エステルを含まない床仕上げ材・コーキング材を採用することでリスクを下げる取り組みも見られます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000718941.pdf
このように、建材そのものは直接規制されていなくても、用途や利用者属性によって「事実上の規制水準」が変わる点を理解しておくと、仕様提案の説得力が高まります。
参考)おもちゃ(及び金属アクセサリー)の規格試験 - 一般財団法人…
おもちゃと食品衛生法によるフタル酸エステル規制の詳細なQ&Aを確認したい場合はこちらが参考になります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/101111-1_1.pdf
厚生労働省「フタル酸エステルの規格基準の取扱いに関するQ&A」
DBPはPRTR制度の対象物質であり、SDS(安全データシート)ではGHS分類やPRTR該当情報、法規制情報などを含めて提供することが求められています。[31][32][4]
実際のSDSでは、DBPの生殖毒性・環境影響・消防法上の危険物区分などが記載されており、建材や塗料を採用する際にはこれらの欄を確認することで、法令リスクと健康リスクの両方を把握できます。[33][32][31]
現場でDBP含有の有無を確認する手段としては、まずサプライヤからの「不使用証明書」やchemSHERPAデータ、SDSを入手し、フタル酸エステルの記載をチェックするのが基本です。
それでも不明な場合や、輸出案件で確実な証拠が求められる場合には、第三者機関による分析を利用し、IEC 62321-8に準拠したPy-GC/MSや抽出GC/MSによる4フタル酸分析を実施する方法があります。
参考)RoHS指令対応 電子機器材料中の有害物質分析
[12][11]
[11][12]
[11][18]
厚生労働省のDBP濃度基準値・測定方法資料では、試薬のラベルやSDSを事前に確認し、ドラフト内作業や適切な個人防護具の使用によってばく露を低減することが推奨されています。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/noudo/84-74-2.pdf
分析室向けの指針ではありますが、これを建設現場・工場での塗装・接着作業に応用し、換気計画や保護具選定の目安にすることも可能です。
SDSに基づく情報管理のポイントを体系的に学びたい場合は、可塑剤業界団体の規制動向資料が参考になります。
可塑剤工業会「可塑剤の規制動向について」
DBPを含む塗料や接着剤は、施工時だけでなく、経年後の解体・リノベーション時にも作業者や周辺環境への排出源となる可能性があります。[4]
環境省のPRTRデータでは、DBPが塗料使用や工事現場から大気・土壌へ排出されていることが示されており、建築物のライフサイクル全体での管理が必要であることを示唆しています。[4]
フタル酸エステルのリスク評価資料では、床材や内装材の廃材が解体・リフォーム時に大量に発生し、埋立処分されている実態が報告されており、DEHPの事例ながら類似用途のDBPにも同様の課題があると考えられます。
また、災害廃棄物処理や被災家屋の大量解体時には、多数の有害物質のばく露クラス評価が行われており、フタル酸エステル類もばく露管理の対象候補として検討されています。
参考)エラー
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[19][4]
[34][10]
意外な点として、DBPはシックハウスとの関連が疑われているにもかかわらず、アスベストのように解体工事の届出や特別教育を義務付けるような専用規制は現時点で設けられていません。
参考)https://jtccm.or.jp/sites/default/files/books_pdf/2007/Vol43,No5,2007.pdf
そのため、法令の要求水準だけでなく、PRTR情報や室内空気指針値を踏まえて、事業者側が自主的にばく露低減策を講じることが、今後のESG・サステナビリティの観点からも重要になっていきます。
参考)https://www.env.go.jp/content/900529138.pdf
解体・リノベにおける化学物質ばく露管理の考え方を学ぶには、環境省や労働安全衛生分野のリスク評価資料が有用です。
環境省「フタル酸ジブチル(PRTRファクトシート)」

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