合成界面活性剤泡消火薬剤の性能と施工基準

合成界面活性剤泡消火薬剤の性能と施工基準

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合成界面活性剤泡消火薬剤の基本特性と施工要点

合成界面活性剤泡消火薬剤の特徴
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炭化水素系界面活性剤が主成分

シャンプー原料と同じ成分で高い発泡性を実現

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優れた流動展開性

火災油面への迅速な展開で効果的な消火を実現

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環境配慮型製品の普及

PFOS・PFOA非含有で環境負荷を軽減

合成界面活性剤泡消火薬剤の組成と発泡性能

合成界面活性剤泡消火薬剤は、炭化水素系界面活性剤を主成分とする泡消火薬剤です。この主成分は、日常的に使用されているシャンプー等の原料と同じものであり、優れた起泡性(泡立ち)を持つことが特徴です。

 

薬剤の外観は淡黄色液体で、グリコールエーテル臭を呈します。組成には以下の成分が含まれています。

  • 炭化水素系界面活性剤(主成分)
  • 泡安定剤(グリコールエーテル類や高級アルコール)
  • 不凍剤(グリコール類)
  • 防錆剤

発泡性能の面では、発泡器の種類に応じて低発泡(6倍以上)から高発泡(500倍以上)まで、多様な消火泡を発生させることができます。この特性により、様々な火災現場に対応可能で、特に高発泡として使用することにより、LNG火災やラック倉庫火災などの消火に最適な効果を発揮します。

 

一方で、たん白泡消火薬剤と比較すると耐熱性に課題があります。高温環境下では薬剤の劣化が促進されるため、適切な温度管理での貯蔵が重要です。

 

合成界面活性剤泡消火薬剤の流動展開性と消火効果

合成界面活性剤泡消火薬剤の最大の特徴は、優れた流動展開性です。この特性により、火災油面を素早く流動・展開して速やかに消火することが可能です。

 

流動展開性の優位性は以下の点で確認されています。

  • 迅速な燃焼面被覆:泡の流動展開が早く、速やかに燃焼面を被覆
  • 流出油火災への効果:初期消火や流出油火災に特に有効
  • 多様な発泡装置対応:いろいろな発泡装置や装置に対応可能

消火効果の面では、液体可燃物火災(B火災)だけでなく、一般火災(A火災)にも対応できることが大きな特徴です。木材やその他の固体可燃物に対する付着性・湿潤性にも優れており、住宅火災、森林火災、タイヤ火災などのクラスA火災に対して非常に有効です。

 

特に注目すべきは、強力な浸透性、湿潤性を有している点です。これにより、従来の泡消火薬剤では効果が限定的だった固体可燃物への浸透が可能となり、より確実な消火が実現されます。

 

最近の技術開発では、高温・高煙濃度の火災環境下における高い発泡性能と消火性能を実現した製品も登場しており、従来はPFAS含有の水成膜泡消火薬剤が必要だった用途でも、環境配慮型の合成界面活性剤泡消火薬剤での対応が可能になっています。

 

合成界面活性剤泡消火薬剤の国家検定規格と基準

合成界面活性剤泡消火薬剤は、「泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年12月9日自治省令第26号)」に基づく国家検定に合格した製品が市場に流通しています。

 

規格省令における分類では、合成界面活性剤泡消火薬剤は「合成界面活性剤を基材とする泡消火薬剤」として定義され、「高発泡使用に適する」との特記事項が付与されています。

 

国家検定の主要な評価項目。

  • 発泡性能試験:規定倍率での発泡能力の確認
  • 流動展開性試験:油面への展開速度の測定
  • 消火性能試験:実火災での消火時間の評価
  • 安定性試験:長期保存での性能維持の確認

型式承認を受けた製品は、型式番号「泡第○○~○号」が付与され、使用温度範囲や使用濃度も明確に規定されています。例えば、一般的な製品では使用温度範囲が-10℃~+30℃、使用濃度が3%または6%となっています。

 

規格適合性の確認ポイント。

  • 型式承認番号の確認
  • 使用温度範囲の遵守
  • 適正な希釈濃度での使用
  • 定期的な性状確認の実施

施工業者としては、これらの規格要件を満たした製品の選定と、適切な施工・維持管理体制の構築が不可欠です。

 

消防機器の技術基準に関する詳細情報
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento117_21_houkokusyo.pdf

合成界面活性剤泡消火薬剤のPFOS・PFOA非含有特性

近年、環境への配慮から、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)を含有しない合成界面活性剤泡消火薬剤の開発・普及が進んでいます。

 

PFOS・PFOAは「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」で第一種特定化学物質として規制されており、環境中での分解が困難で長期間残留することが問題視されています。

 

環境配慮型製品の特徴。

  • PFOS・PFOA完全非含有:規制化学物質を一切使用しない
  • その他フッ素系界面活性剤も非含有:より徹底した環境配慮
  • 天然系界面活性剤の採用:生分解性に優れた原料の使用
  • 重金属等有害物質非含有:総合的な環境負荷軽減

これらの環境配慮型製品でも、従来のPFAS含有製品と同等の消火性能を実現しています。特に、高温・高煙濃度の火災環境下における高い発泡性能と消火性能の確保は、従来の合成界面活性剤泡消火薬剤では困難とされていましたが、最新の技術開発により実現されています。

 

施工業者にとっては、以下の観点から環境配慮型製品の採用メリットがあります。

  • 法規制対応:将来的な規制強化への対応
  • 企業イメージ向上:環境配慮企業としてのアピール
  • 廃棄処理コスト軽減:生分解性による処理費用削減
  • 作業安全性向上:有害物質削減による作業環境改善

環境配慮型泡消火薬剤の最新情報
https://www.nohmi.co.jp/information/k/2024/umdatf00000011rv-att/datuhussoawasyoukayakuzai.pdf

合成界面活性剤泡消火薬剤の施工時の注意点と維持管理

合成界面活性剤泡消火薬剤の施工・維持管理において、施工業者が留意すべき重要なポイントがあります。適切な施工により、薬剤の性能を最大限に発揮し、長期間の安全確保が可能となります。

 

貯蔵環境の管理
温度管理は最も重要な要素の一つです。高温環境下では薬剤の劣化が促進されるため、以下の点に注意が必要です。

  • 使用温度範囲の厳守:-10℃~+30℃の範囲内での貯蔵
  • 直射日光の回避:紫外線による劣化防止
  • 温度変化の最小化:急激な温度変動による品質低下防止

薬剤の混合・希釈管理
合成界面活性剤泡消火薬剤は、使用時に水や海水で希釈して使用します。施工時の注意点。

  • 型式の異なる薬剤との混合回避:性能低下や予期しない反応の防止
  • 水質の確認:淡水、海水、硬水いずれでも使用可能だが、異物混入の防止が重要
  • 適正濃度の維持:3%または6%の規定濃度での希釈

配管・発泡装置の適合性確認
合成界面活性剤泡消火薬剤は様々な発泡装置に対応していますが、施工時には以下の確認が必要です。

  • 発泡倍率の適合性:低発泡から高発泡まで対応可能な装置の選定
  • 配管材質の適合性:薬剤成分との化学的適合性の確認
  • 流動性の考慮:優れた流動展開性を活かす配管設計

定期点検・性状確認の体制構築
長期間の性能維持のため、定期的な点検体制の構築が不可欠です。

  • サンプリング実施:定期的な薬剤性状の確認
  • 外観・臭気の確認:淡黄色液体、グリコールエーテル臭の正常性確認
  • 発泡性能試験:実際の発泡能力の定期確認
  • 記録管理:点検結果の適切な記録・保管

廃棄処理への配慮
使用済み薬剤や泡水溶液は適切な処理が必要です。

  • 産業廃棄物としての処理:法令に従った適正処理
  • 環境配慮型製品の優位性:生分解性に優れた製品の選択メリット
  • 処理コストの考慮:ライフサイクルコストでの製品評価

これらの注意点を適切に管理することで、合成界面活性剤泡消火薬剤の優れた消火性能を長期間にわたって維持でき、安全で効果的な消火システムの構築が可能となります。