配向性ストランドボードの特徴と用途一覧

配向性ストランドボードの特徴と用途一覧

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配向性ストランドボードの特徴と用途

配向性ストランドボードの基本情報
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木質材料の一種

木材を薄い削片状にして乾燥させ、接着剤と共に高温・高圧でプレスして作られる構造用パネル

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主な用途

住宅の壁・床・屋根の下地材、内装材、家具など幅広く活用されている

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特徴

面内せん断力に強く、合板より安価で環境に優しい木質ボード

配向性ストランドボードの基本構造と製造方法

配向性ストランドボード(OSB: Oriented Strand Board)は、木材を薄く削った長方形の木片(ストランド)を特定の方向に配向させて積層し、接着剤で熱圧成形した木質ボードです。日本農林規格(JAS)では「構造用パネル」として分類されています。

 

OSBの製造工程は以下のようになっています。

  1. 原木の準備: アスペンやポプラなどの広葉樹、スプルースやパインなどの針葉樹を使用
  2. ストランド化: 原木を幅13~19mm、長さ70~130mm、厚さ0.6~0.7mmの短冊状に切削
  3. 乾燥処理: 切削された木片を適切な含水率まで乾燥
  4. 接着剤の塗布: フェノール樹脂イソシアネート系樹脂などの接着剤を塗布
  5. 配向・積層: 表層と芯層で繊維方向が直交するように配向させて積層
  6. 熱圧成形: 高温・高圧下でプレスして板状に成形
  7. 裁断・仕上げ: 必要なサイズに裁断し、エッジシール処理などを施す

OSBの特徴的な点は、ストランドを特定の方向に配向させることで強度を高めている点です。表層は長手方向に、芯層はそれと直交する方向に配向させることで、合板のような強度特性を持たせています。通常3層から5層の構造になっており、この配向構造によって面内せん断力に対する強度が高くなっています。

 

製造過程での原木の利用効率は約90%と非常に高く、環境に配慮した建材として注目されています。また、生産に関わるエネルギーの約70%はバイオマスエネルギーが使用されており、環境負荷の低減に貢献しています。

 

配向性ストランドボードと合板の違いと選び方

配向性ストランドボード(OSB)と合板は、どちらも木質系の構造用面材として使用されますが、製造方法や特性に大きな違いがあります。適材適所で選ぶことが重要です。

 

製造方法の違い

  • OSB: 木材を短冊状の削片(ストランド)にして配向させて積層
  • 合板: 丸太から薄く剥いた単板(ベニヤ)を繊維方向が直交するように積層

特性の比較

特性 OSB 合板
価格 安価 比較的高価
面内せん断強度 高い(合板の2~3倍) 標準
耐湿性 やや劣る(特に端部) 比較的優れている
釘保持力 やや劣る 優れている
寸法安定性 湿気による膨張あり 比較的安定
環境負荷 低い(小径木使用可) やや高い(大径木使用)
表面の均一性 独特の模様あり 比較的均一

選び方のポイント

  1. 用途に応じた選択:
    • 壁の構造用面材:OSBの面内せん断強度の高さが有利
    • 床下地材:合板の方が釘保持力や耐湿性で優れている場合も
    • 屋外や湿気の多い場所:合板または防水処理されたOSB
  2. コスト面の考慮:
    • 予算が限られている場合はOSBが経済的
    • 長期的な耐久性を重視する場合は合板も検討
  3. 環境への配慮:
    • 環境負荷を低減したい場合はOSBが有利
    • 持続可能な森林管理認証を受けた製品を選ぶ
  4. 仕上げ方法:
    • 表面を露出させる場合は、OSBの独特の模様を活かすか、合板の均一な表面を活かすか

OSBは「OSB合板」と誤って呼ばれることがありますが、製造方法も性質も異なるため、この呼称は避けるべきです。特に湿気による膨張特性が合板とは異なるため、使用する際には注意が必要です。

 

配向性ストランドボードの規格と種類一覧

配向性ストランドボード(OSB)には、様々な規格や種類があります。日本で流通しているOSBの主な規格と種類を詳しく見ていきましょう。

 

JAS規格(日本農林規格)
日本では1987年に制定されたJAS0360: 2019「構造用パネル」としてOSBが規格化されています。JAS規格のOSBは以下のように区分されています。

  1. 特類: 構造用途に最適な高強度タイプ
  2. 1類: 一般的な構造用途に使用
  3. 2類: 準構造用途に使用

厚さによる分類
OSBは様々な厚さで製造されており、用途に応じて選択します。

  • 9mm: 壁下地用として一般的
  • 11mm: 床下地用として使用
  • 12mm: 床下地や屋根下地に使用
  • 15mm以上: 高い強度が必要な床下地などに使用

サイズによる分類
標準的なサイズは以下の通りです。

  • 910mm×1820mm: 日本の建築モジュールに合わせたサイズ
  • 910mm×2440mm(3×8): 北米規格の一般的なサイズ
  • 1220mm×2440mm(4×8): 北米規格の大判サイズ

表面処理による分類

  • サンダー処理あり: 表面を研磨して平滑に仕上げたタイプ
  • サンダー処理なし: 表面処理を行わないタイプ
  • エッジシール処理: 木口面からの水分侵入を防ぐ処理を施したタイプ

接着剤による分類

  • フェノール樹脂接着剤使用: 耐水性に優れたタイプ
  • イソシアネート系樹脂接着剤使用: ホルムアルデヒドを含まないタイプ(F☆☆☆☆)

ホルムアルデヒド放散量による区分

  • F☆☆☆☆: 最も放散量の少ないクラス
  • F☆☆☆: 次に放散量の少ないクラス
  • F☆☆: 放散量が中程度のクラス

特殊タイプのOSB

  • 防水OSB: 特殊な防水処理を施したタイプ
  • 難燃OSB: 難燃処理を施したタイプ
  • 装飾用OSB: 内装仕上げ材として使用するためのタイプ

日本に輸入されるカナダ産OSBパネルは全てJAS認定を取得しており、APAエンジニアード・ウッド協会(APA)の性能基準に合格したスタンプが押されています。製品選定の際には、これらの規格や種類を確認し、用途に適したものを選ぶことが重要です。

 

配向性ストランドボードの主な用途と施工例

配向性ストランドボード(OSB)は、その特性を活かして様々な用途に使用されています。ここでは主な用途と実際の施工例を紹介します。

 

構造用途

  1. 壁の構造用面材
    • 在来軸組工法の大壁・真壁の下地材
    • 枠組壁工法(2×4工法)の壁パネル
    • 面内せん断力に強いため、耐力壁として優れた性能を発揮
  2. 床の下地材
    • 一般住宅の床下地
    • 集合住宅の床下地(遮音性能と組み合わせて使用)
    • 厚さ12mm以上のものが多く使用される
  3. 屋根の下地材
    • 勾配屋根の野地板
    • 防水シートの下地材
    • 厚さ9mm~12mmのものが使用される
  4. I型梁のウェブ材
    • 木造建築の床梁や屋根梁のウェブ部分
    • 面内せん断性能の高さを活かした使用法
  5. SIP(構造用断熱パネル)
    • OSBで断熱材を挟んだサンドイッチパネル
    • 高気密・高断熱住宅の壁や屋根に使用

内装・仕上げ用途

  1. 内装仕上げ材
    • カフェやショップの壁面装飾
    • 天井の意匠的な仕上げ
    • 独特の木目模様を活かしたデザイン
  2. 家具・什器
    • 棚板や収納ボックス
    • テーブルや椅子
    • 店舗什器やディスプレイ

その他の用途

  1. コンクリート型枠
    • 一時的な型枠として使用
    • 合板より安価で経済的
  2. 梱包材・輸送用資材
    • 大型機器の梱包
    • 輸送用パレット
  3. 仮設工事用材料
    • 仮囲い
    • 作業床

施工例と注意点

  • 在来軸組工法での施工例

    OSB(9mm厚)を壁下地として使用し、CN50釘を75/150mm間隔で留め付けることで、壁倍率4.1を確保した耐力壁の実例があります。

     

  • 枠組壁工法での施工例

    OSB(9mm厚)を壁パネルとして使用し、CN50釘を50/100mm間隔で留め付けることで、壁倍率4.7を実現した事例があります。

     

  • 内装仕上げでの施工例

    サンダー処理されたOSBを壁面に貼り、クリア塗装を施すことで、木の温かみを活かした内装デザインを実現した飲食店の事例があります。

     

施工時の注意点としては、OSBは湿気に弱いため、特に木口面からの水分侵入に注意が必要です。エッジシール処理されたものを選ぶか、現場でシーリング処理を行うことが推奨されます。また、釘の保持力が合板よりやや劣るため、留め付け間隔を適切に設定することも重要です。

 

配向性ストランドボードの環境性能と将来性

配向性ストランドボード(OSB)は、その製造方法や原材料の特性から、環境に配慮した建材として注目されています。ここではOSBの環境性能と将来性について詳しく見ていきましょう。

 

環境性能の高さ

  1. 資源の有効活用
    • 小径木や曲がった木材も原料として使用可能
    • 従来は製材に適さなかった木材を有効活用
    • 原木の利用効率が約90%と非常に高い
  2. 持続可能な森林資源の活用
    • 成長の早いアスペンやポプラなどを主原料に使用
    • 40~70年で伐採可能な樹種を使用
    • 持続可能な森林経営による原料調達
  3. 製造過程でのエネルギー効率
    • 製造過程で発生する廃材や樹皮を燃料として再利用
    • バイオマスエネルギー比率が約70%
    • 化石燃料への依存度が低い
  4. 炭素固定効果
    • 木材中の炭素を製品として長期間固定
    • 建築物のライフサイクルを通じたCO₂削減に貢献

環境認証と規格
現在、環境に配慮したOSBには以下のような認証や規格があります。

  • FSC認証: 森林管理協議会による持続可能な森林管理認証
  • PEFC認証: 森林認証プログラムによる認証
  • カーボンフットプリント表示: 製品のライフサイクルを通じたCO₂排出量の表示
  • F☆☆☆☆: ホルムアルデヒド放散量が最も少ないクラスの認証

OSBの将来性と今後の展開

  1. 技術革新による性能向上
    • 耐湿性を高めた新世代OSBの開発
    • より環境負荷の少ない接着剤の開発
    • 防火性能を向上させた製品の開発
  2. 用途の拡大
    • 中高層木造建築への活用拡大
    • 非住宅建築物への利用拡大
    • デザイン性を活かした内装材としての活用
  3. 国内生産の可能性
    • 現在は主に輸入に依存しているが、国内での生産体制の整備
    • 国産材を活用したOSB生産の検討
    • 地域の森林資源を活用した小規模生産の可能性
  4. 環境配慮型建築材料としての地位確立
    • カーボンニュートラル建築への貢献
    • 木造建築の普及に伴う需要拡大
    • 循環型社会構築への貢献

特に注目すべき点として、近年では従来のOSBの弱点であった耐湿性を改善した新タイプのOSBが開発されています。これにより、より幅広い用途での活用が期待されています。また、デジタルファブリケーション技術の発展により、OSBを使った複雑な形状の部材製作も可能になりつつあり、デザイン面での可能性も広がっています。

 

環境問題への意識の高まりと木造建築の普及に伴い、OSBの需要は今後も拡大していくと予測されています。特に日本では、2010年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行以降、公共建築物での木材利用が促進されており、OSBを含む木質建材の需要増加が見込まれています。

 

日本木材総合情報センター - 木材利用促進に関する情報
OSBは環境性能の高さと経済性を兼ね備えた建材として、今後の持続可能な建築において重要な役割を果たすことが期待されています。