阪神淡路大震災の被害が大きかった理由と軟弱地盤液状化

阪神淡路大震災の被害が大きかった理由と軟弱地盤液状化

記事内に広告を含む場合があります。

阪神淡路大震災の被害が大きかった理由

📊 被害拡大の主要因
🏠
旧耐震基準の建物が多数

昭和56年以前の建物に被害が集中。死者の約8割が建物倒壊による圧死・窒息死でした。

🌆
都市直下型地震の特性

震源が浅く人口密集地を直撃。約350万人が居住する大都市圏で発生しました。

🔥
同時多発火災の発生

約290件の火災が同時発生。断水と道路閉塞により消火活動が困難となりました。

阪神淡路大震災における旧耐震基準建物の倒壊被害

 

阪神淡路大震災で最も深刻だったのは、建物倒壊による人的被害でした。地震発生当日に亡くなった方の死因の約9割が、建物の下敷きになったことによる圧迫死であったことが判明しています。当日以降に亡くなった方々を含めても、死因が「家屋、家具類等の倒壊による圧迫死と思われるもの」が全体の約8割を占めていました。
参考)https://www.tokiwa-system.com/column/column-213/

被害が特に集中したのは、1981年(昭和56年)以前に建てられた旧耐震基準の建物でした。震災後の調査によれば、被災した木造家屋の実に98%が旧耐震基準で建てられていたことが明らかになっています。神戸大学大学院の調査では、神戸市内の死者で住所が特定できた3,570人の遺族へアンケートを実施し、旧耐震基準の建物に被害が極端に集中していた実態が浮き彫りになりました。
参考)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-1-3.html

旧耐震基準の建物は震度5程度にしか耐えられないと言われており、震度7を記録した阪神淡路大震災では構造的な弱点が露呈しました。特に、2階建て木造住宅では屋根瓦と2階部分の重みで1階の柱が折れて家屋が潰れるケースが多く見られ、地震発生時刻(午前5時46分)がまだ就寝中であったことも関係して、特に1階で寝ていた方が下敷きとなるケースが多数発生しました。
参考)https://f-mikata.jp/history_44/

国の防災機関による調査でも、木造建物で1階が倒壊した建物の91%、全壊建物の93%が旧耐震基準であったことが確認されています。また、比較的古い住宅では1階・2階ともに潰れるケースが多く、築年数による木材の老朽化や建築法の根本的な古さが原因とされています。
参考)https://www.taishin-jsda.jp/column09.html

建築物の被害に関する詳細な教訓情報資料(内閣府防災情報ページ)

阪神淡路大震災における都市直下型地震の破壊力

阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震は、典型的な都市直下型地震でした。この地震の原因は、活断層のずれによる「活断層型地震」であったことがわかっています。大阪府北西部から兵庫県の淡路島にかけて存在する「六甲・淡路島断層帯」の中にある「野島断層」がずれ、南東側が南西方向に約1~2m横ずれを起こし、さらに0.5~1.2m隆起しました。
参考)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/earthquake/index.html

都市直下型地震の最大の特徴は、震源が浅く(おおむね深さ20km以内)、都市の直下で発生するため、警報や避難の猶予がほとんどないことです。兵庫県南部地震の震源の深さは16kmで、マグニチュード7.3、最大震度7という強力な地震が人口密集地(約350万人)である大都市の直下で発生しました。
参考)https://bosai-times.anpikakunin.com/direct-earthquake/

震源が浅いため、エネルギーが減衰しないまま地表に伝わり、揺れは非常に大きくなります。木造建物の被害は、断層からの距離が6~7km程度以内の範囲で大きく、10kmを超えると被害は非常に少なくなることが確認されています。破壊した断層付近で非常に大きな揺れを生じ、神戸市を中心とした阪神地域および淡路島北部で甚大な被害を受けました。​
人口密集地での直下型地震は、高速道路の倒壊や木造住宅の全壊が相次ぎ、都市機能が麻痺します。火災やライフラインの停止も重なり、限られた範囲に集中して被害をもたらす点が、海溝型地震とは異なる都市直下型地震の恐ろしさです。
参考)https://www.tokiwa-system.com/column/column-372/

阪神淡路大震災の同時多発火災と延焼拡大の要因

阪神淡路大震災では、計285件(一部資料では約290件)の火災が同時多発的に発生しました。地震火災の第一波は主にガス漏れに起因する同時多発的火災であり、第二波として地震発生以降散発的に発生した火災は、損壊していた家屋などで電力供給の再開とともに発生した電気的火災でした。
参考)https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2017/03/h002.pdf

出火原因の約半数は不明ですが、判明している139件のうちでは「電気による発熱体」が85件と最も多く、「ガス油類を燃料とする道具」が24件とそれに続いています。これは現代都市型の地震時出火の新たな傾向として認識されています。
参考)https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2017/03/h003.pdf

延焼が拡大した原因として、複数の要因が指摘されています:
参考)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-1-4.html

  • 老朽木造建物の密集:古い木造家屋が密集していた地域で延焼が広がりました

    参考)https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/senmon/shutochokkajishinsenmon/7/pdf/shiryou1.pdf

  • 炎上火災の同時多発:複数箇所で同時に火災が発生し、消防の対応が追いつきませんでした​
  • 断水と消防水利不足:広範囲で断水が発生し、消火活動に必要な水が確保できませんでした​
  • 消防の駆けつけ障害:建物倒壊により道路が寸断され、消防車両が現場に到達できませんでした​
  • 可燃物量の多さ:密集した木造家屋に多くの可燃物が存在していました​

特に神戸市長田区などでは、火災によって約7,500棟の家屋が焼失し、焼死者が全体の約12.2%を占めました。しかし、この火災の多くも家の倒壊が原因で火事が起こったり、延焼しやすくなったりしたことが判明しています。
参考)https://www.ncn-se.co.jp/se/column/257

阪神淡路大震災における軟弱地盤と液状化現象の影響

阪神淡路大震災では、軟弱地盤液状化現象による被害も深刻でした。液状化現象とは、水をたくさん含んだ砂層が地震動で揺らされることによって水や砂が噴射し、地盤が不等に沈む現象です。これに伴って道路はドロドロになり、地盤が建物に対する支持力を失い建物が傾きます。
参考)https://jocr.jp/raditopi/2023/01/15/478307/

神戸市、芦屋市、西宮市の埋立地・低地で多くの液状化被害が発生しました。国土交通省によると、埋立地の護岸に近い地区では液状化により「側方流動」という現象が発生し、護岸が海側に最大5m以上も前傾・移動して神戸港に壊滅的な被害をもたらしたとされています。
参考)https://www.daichi-risk.com/column/34715/

大阪市域における被害はほとんどが液状化によるものであり、西宮市の百合野や仁川では斜面崩壊による住宅の被害が見られました。液状化現象が起こると「地盤の沈下」「地中のタンクやマンホールの浮き上がり」「建築物の傾き・転倒」「地中にある配管の破損」などの被害が発生します。​
阪神地区の埋立地においても、シルトや粘土などの細粒分を多量に含む神戸層群によって埋め立てされた地盤には液状化が生じなかった一方、細粒分が液状化強度に強く影響することが改めて確認されました。大阪湾一帯の海底に存在する超軟弱粘性土地盤が護岸等構造物の動的挙動に大きな影響を与え、海底の軟弱粘性土が護岸建設のためにマサ土に置換されたものの、そのマサ土が液状化を生じて護岸の大移動の一因となりました。
参考)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/data/detail/1-1-1.html

データによると、阪神淡路大震災の被害のほとんどが新しい地質時代に形成された軟質な沖積層に集中して発生したことがわかっています。
参考)https://kankyohozen-coop.jp/soil2.html

地震動と地質・地盤に関する教訓情報資料(内閣府防災情報ページ)

阪神淡路大震災の建物構造的欠陥と施工不良の実態

阪神淡路大震災では、建物の構造的な問題や施工不良も被害拡大の一因となりました。築年数だけでなく、建物の構造設計や施工の質が倒壊を左右したケースが多数報告されています。​
壁の量と配置バランスの問題が特に深刻でした。築わずか2ヶ月という新しい住宅でも1階が完全に潰れた事例があり、原因は「壁の量」不足だったと言われています。1階に18畳分の空間があり、間仕切り壁が比較的少ないデザインの住宅で、屋根を柱とともに支えるはずの壁が少なかったため、住宅にかかる力が分散できず1階が潰れてしまいました。​
昭和56年以前の建物に被害が多かったのは、単に老朽化だけではなく、「耐力壁」が足りていなかったという要素が大きかったとされています。日本では「在来住宅」という柱と梁で支える形の建築法がありますが、この構造は横に揺れるような衝撃に弱いため、横からの衝撃を面で抵抗する「耐力壁」を多く設置する必要があります。​
デザインを優先しすぎた建物も問題となりました。地震に耐える上で壁の配置バランスは非常に重要ですが、十分な壁量があっても配置がアンバランスであれば地震に耐える力は一部分にしか届きません。1階に車庫を設けたり、日当たりの良い空間をつくるために壁の配置が無理にずらされていた家は、その部分を中心に倒壊が起きていました。​
施工不良に関する問題も指摘されています。手抜き工事や欠陥工事による施工不良も指摘されていますが、これらについては十分な統計データが得られていません。鉄骨造建築物では、ペンシルビル等の柱の脚部被害が目立ち、欠陥溶接が被害を拡大させたとの指摘もあります。​
倒壊の最大の原因として、住宅の持続的な補修や新陳代謝が行なわれていないことが指摘されています。古い構法で建てられた在来構法の建物に被害が発生しており、蟻害、腐食など老朽による劣化が被害を拡大させました。​
阪神淡路大震災で倒壊した家の特徴と要因(日本制震ダンパー工業会)